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記憶のきみ
【青春 恋愛小説】

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記憶のきみ7-2

放課後、六人は大学の個室を借りて集まっていた。
『……いくらミスコンの予選と同じ時間にあるからって二週間で演奏は無茶だろ』
瞬はギターを担ぎ上げながらぼやいた。
「……ミスコン」
灰慈は泣きそうな顔でベースを撫でている。
「でも、優勝したら金一封だって」
青空はドラムのスティックをくるくる回してみせる。さすが適応力ナンバーワンである。
「………ぼやかない、ぼやかない。うちも鬱なんだから」
葵がめずらしくローテンションで座っている。
「………」
悦乃は楽譜本をパラパラとめくっていた。
この機材の数々は由貴の友達に借りたものだ。何でもその子は親が楽器店を営んでいるらしい。
なんとまあ好都合なのか。
「……由貴ちん、曲はどうするの?」
「とりあえず、女の子がボーカルのバンドを片っ端から探すしかないわね」
「……じゃあ、この曲なんかどう?」
悦乃は先ほどからパラパラめくっていた楽譜本の中から一曲を選び出した。
「……お、いいじゃんこの曲」
「俺も好きやで」
「えっちゃんやるじゃん♪」
「よし!この曲で決まりね!各自、練習!」
「練習て…由貴ちゃん、俺ベースなんか弾けないんやけど」
「……俺もドラムなんてさわったこともないよ」
『……アコギなら少しやったことあるけど、エレキは音が出る仕組みさえわからない』
男性陣はグダグダだった。
「……じゃあこのDVD見て」
由貴は予め用意していたDVDを三人に渡した。
「……初心者のためのドラム」
「……これであなたもベーシスト」
『……エレキギター入門編』
三人は、それぞれ怪しげなDVDとにらめっこしているのだった。
「………由貴ちん、うちとえっちゃんはどうするの?」
「なにも聞いてないけど」
由貴は忘れていたらしく、少し考える素振りを見せた。
「……葵はあたしとボーカルね」
「えー…」
「悦乃は……」
「………」
「タンバリン」
「へっ?」
その場が戦慄した。
「な…なんでえっちゃんがタンバリン?」
「……やっぱり悦乃に歌わせるとね」
由貴は苦笑いする。
「……う」
「……あ」
先月、六人でカラオケに行ったときのこと。

「青空くん上手ーい♪」
「いやぁ」
男性陣と由貴、葵はなかなかの美声を披露した。
「……じゃあ次、悦乃ちゃんの番♪」
そして悦乃にマイクが渡された。
「い…いきます!」
流行りのメロディーが流れ始め、悦乃が大きく息を吸った瞬間…………




「……あれは酷かったわ」
「そ…そういえばそうだったね」
葵も賛同した。
「悦乃は小さくて可愛いからマスコット役ね!」
「……はぁい」
悦乃は納得がいかないような顔で楽譜を見つめていた。


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