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記憶のきみ
【青春 恋愛小説】

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記憶のきみ7-1

『はは………なんで俺らがここに立ってんだ?』
「………あっはっは」
「………手が震えてヤバいよ」

目の前には大勢の観客が、今か今かと待っている。
上からは明るすぎる照明が体を火照らせる。

そう、俺たちは今、バンドとして学祭ライブに参加しているのだった。




事の始まりは二週間前に遡る。

「なんか最近、大学内が騒がしいと思ったら、もうすぐ学祭があるんだね」
「せやなー、どこのサークルも客寄せ大変なんやろうな」
『………』
三人は、食堂の窓から外の様子を眺めていた。
外では沢山の学生が板にペンキを塗ったり、打ち合わせをしていたりと忙しそうに動いていた。
「ま、学祭はミスコンで決まりやな」
「………灰慈はそんなことばっかり言うから、すぐ軽いって思われるんだよ」
「全くだわ」
青空が灰慈を白い目で見ながらそう呟くと、賛同の声が聞こえた。
『……由貴』
三人の座るテーブルの前には、由貴、葵、悦乃が立っていた。
「三人もここでお昼?」
青空は何事もなかったかのように由貴に話しかけた。
「うん!みんなはもう食べちゃったんだ」
葵が笑顔で言った。
「……由貴ちゃん、あのこと…言わなくていいの?」
「……あのこと?」
青空は近くのテーブルを自分たちのテーブルにくっつけながら聞いた。
「そ…そうそう!」
由貴が言おうとした瞬間、葵が手を上げて言った。
「この由貴ちん、なんとミスコンの出場が決定しましたー♪」
『はぁ?』
「え?」
「あっはっは」
三人は三様のリアクションをとる。
「もう葵!そんな言い方しないの!」
由貴は顔を赤くしながら葵をポカポカ叩いた。
「………でもなんで?」
青空がアハハと苦笑いしながら聞く。
「勝手に決まってたのよ!いつの間にか!」
由貴は手に持っている二枚の紙のうち、一枚を三人に見せた。
「なになに…エントリーナンバー七番、通称クールアンドビューティー、法律家の卵、佐藤由貴ちゃん………なんやこれ」
「随分ストレートだね、これ」
『………』
「しかも、水着で出場なんだって」
悦乃も苦笑いしながら言うと、さらに空気が重くなった。
「ええやん!俺は由貴ちゃんの水着姿見たぃ……ぐはっ」
由貴の右アッパーが灰慈の顎を直撃した。
「……そこで対策を考えたの」
由貴はニッコリと笑いながら言った。
「……た…対策?」
数秒ほどぐったりしていた灰慈が顎をさすりながら言った。
「これよ!」
由貴はもう一枚の紙を三人に渡した。
「………某大バンドコンテスト……なんやこれ」
「よくぞ聞いてくれた!あたしたち六人でこのバンドコンに出場するのよ!」
「えぇ?」
「………」
『……ったく』
「由貴ちゃん、四人で出るって言ってなかった?」
「言ってた」
由貴が自慢気に笑う中、五人はポカーンとしていた。


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