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Cross Destiny
【ファンタジー その他小説】

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Cross Destiny
〜神竜の牙〜B
-10

〈八章 戸惑い〉

進軍してきたヒーティアの大軍を退け、とりあえずアルス達はジェラルド城に戻ることにした。
行きとは打って変わって馬車に乗り、ゆったりと帰還する。
「それにしてもあの魔導士はお前らの知り合いなのか?」
ウィンの台詞やウィンとフォルツのやりとりを思い出したヴェイルが尋ねた。
「ん?ああ。」
上の空で答えるフォルツにヴェイルが少しムッとして頬をつねる。
「いてててて!なんだよお?」
「なーに考え事してんだ?」
「いや、別に。」
「んであの魔導士はなんだったんだ?」
ヴェイルは再びフォルツに尋ね直す。
「3年くらい前、俺とアルスがヒーティアを訪れた時に、魔物に襲われてた兄妹を助けたんだ。」
フォルツは考え事を止め仕方なさそうに説明する。
「その一人があの魔導士ってわけか。」
「ああ、仲のいい兄妹でさ、親が戦争で死んで兄妹だけで生きてきたらしい。」
「そういえば、あいつ助けられた時のフォルツに憧れて呪文を教わってたっけな。」
「アルスは憧れられなかったのか?」
にやけながらヴェイルは嫌味を言う。
「フォルツが張り切って魔物を全部倒したからな。」
しかしアルスはすまし顔で流す。

「一ヶ月くらいウィンの家に厄介になってたからなあ、旅に出る時ウィンにもルンにも泣かれたっけ。」
昔を懐かしみ感傷に浸るフォルツ。
「それにしても両親を奪った戦争をあれほど憎んでいたウィンが、何故ヒーティア軍なんかに協力しているんだ?」
「・・・・・・ルンが死んだんだってさ。」
「え?」
「あいつの口から聞いたんだ。ルンがジェラルドのせいで死んだからジェラルドを滅ぼすって。」
「!!」
「ルンがジェラルドのせいで死んだかどうかはわからないけど、今のあいつはジェラルドに復讐をしようとしている。」
「・・・・・そうだったのか」
アルスは静かに悟る。
「・・・・んでかな?」
ぼそっとつぶやくフォルツ。
「え?」
アルスはとりあえず聞き返した。
「なんでこうやってどっかで誰かが傷つくのかな?」
「・・・・・フォルツ?」
「魔物に皆殺しにされたホーリーの村の人達も、レイラも、そしてルンもウィンも。」
フォルツは今まで出会った数多くの、苦しみを抱く人達を思いだし、普段見せない顔で語った。
ヴェイルはそんなフォルツを見て少し戸惑ったが。
アルスだけはそんな優しさを持つフォルツが本当のフォルツだということを知っていた。
「だからそんな人達をこれ以上増やさないためにもアレスターを倒さなくちゃな。」
ヴェイルは力強く拳を握る
「ああそうだな。」

この時は誰も気付かなかった。
フォルツのその優しさが後に悲劇を生むことになることを。
そう、親友のアルスでさえも。
ただ今は、各々の思いを胸に導かれるがまま道を進むのみだった。

自分の信じるべき道をただ

そして馬車はジェラルド城へと走っていく。

「そうか、ご苦労だったなおめーら。」
ジェラルド城の王座の間で戦果を報告するアルス達。
「済まなかったフィオ。
不利とはいえ、今は少しでも兵力を温存させなくちゃならなかった、そのせいでお前に苦労させちまった。」

デェルフェムートは、少ない兵力で戦い見事勝利を納めたフィオに敬意を称した。


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