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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『STRIKE!!』(全9話)-279

「ちょっと、飲みすぎた」
 長見一家を乗せた車を見送って、暖簾をしまう赤木夫妻に暇を告げて、亮と晶は肩を並べて家路をたどっていた。
「あたしも、かな」
 いつのまにか晶は、しがみつくようにしっかりと腕をからませていて、その柔らかさが亮に照れを与える。しかし、同時に伝わってくる心地よい暖かさに、いつしか亮はその心をすっかり委ねていた。
「みんな、それぞれに道を歩いてるんだよな」
「そうね…」
 大学時代に、野球を通じて切磋琢磨していたかけがえのない仲間たち。卒業と同時にその道程は枝分かれをしてしまったが、確かに存在していた絆は今でも、想い出の中に彩りを与えてくれる。
「不思議だよね」
「ん?」
「あたしと亮が、出逢えたことって、一般的な確率で言えば、絶対に当たりそうもないぐらい低い数字になるでしょ? それなのに、こうやって、ずっと一緒にいられるんだもん」
「そうだな…」
 二人が野球をしていなければ、甲子園で対峙していなければ、風が晶の帽子を飛ばさなければ、同じ大学に行っていなければ……。どれもこれもが、偶然に見えてもおかしくないことだが、しかし、どれかひとつの事象が欠けていれば、こうやって寄り添う二人は存在しなかった。
「だから、ね……あたし、“運命”って信じちゃうんだ」
「………」
「亮のことはもちろんだけど、栄輔もエレナも、監督もそうだし、キャプテンもそう。みんながいて、みんなに出会えたから、今のあたしたちがいるって、そう思うよ」
 腕に摺り寄せてくる、紅い頬。酒気も混ざっているであろうが、それ以上の幸福で満たされた彼女の心を映す色でもある。
「だから、大事にしていきたい。あなたに出会ったこと、みんなに出会ったこと、そのきっかけになった野球を……」
「晶」
「それを、ね、あたしは子どもたちに伝えていきたい。方法は野球に限らないけど、いろんな人と輪になってできた絆は、形に収まらないくらい大事なものになるってことを…」
「俺も、そうだ」
 晶の言葉は、そのまま亮が胸に抱き続けている本懐だ。だから彼は、“絆”を最も必要とされている教師の道を選んだのだ。
「まだまだヒヨッコだし、できることって少ないかもしれない。それでも俺は晶が側にいてくれるなら、どんなことでも“幸せ”にする自信がある」
「亮……」
「単純だよな。でも、本当にそうなんだ」
 亮は穏やかな笑みを、晶に向けた。その清廉で、透き通るほどに純粋な亮の笑顔は、晶の心を充分に満足させた。
「一緒に、生きて行こう。これから……ずっと……」
「ええ……」
 そうして寄り添った影は、まるでひとつになったかのように、星空の下をゆっくりと歩いていく。
「一緒に、ずっと、ね……」
 つながった絆が、離れないように。
 晶は愛しい人の腕を、しっかりと抱きしめていた。



 道の先に何があるか誰にも知りえない。だが、次のステージは確実に用意されている。
 亮と晶が共に踏み出した新しい舞台。これからその舞台で使われるシナリオは、ふたりの手によってひとつずつ大事に紡がれていくことだろう。家族を増やし、絆を広げ、幸福の色を絶やすことなく……。
 だから今は、ここで筆を置くことにしよう。


 ―了―


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