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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『SWING UP!!』(第1話〜第6話)-1

第1話 「PROLOGE 〜序章〜」


『……

「桜子!」
「ハイッ!」
 セッターの柏木由美からボールを廻された桜子は、ステップを刻んで飛び上がる。もともとが180センチを越える長身の彼女だが、しなやかでバネのように柔らかい筋肉の持ち主でもあるから、その筋肉を生かした高い跳躍力でさらに高く舞い上がり、貼りついていた相手側のブロックを打ち砕く、強烈なスパイクを放った。

 ズドン!

 と、まだ高校二年生とは思えないほど、重く威力のあるスパイクがコートに決まる。
「ナイス! 桜子!」
 味方の陣営が、沸きに沸いていた。それを待っていたかのように、カメラのフラッシュが眩いばかりに包み込む。
「あともう少し! 踏ん張っていくよ!」
 キャプテンでもあるセッターの由美。サーブを打つ選手にボールを渡すと、凛々しい顔つきを崩そうともせずに、次のラリーを待つ。
 その由美が後ろ手に差し出したサインは、桜子のレフトオープン攻撃。競った試合をしている今、不動のエースアタッカーである桜子にボールを集めるのは定石であろう。そして、敵方もワンパターンになっている攻撃を当然読んでいて、桜子には既に三枚のブロックがマークしていた。

 ズドン!

 しかし桜子は、そんなブロックをものともしないでスパイクを叩き込んだ。マークをされていながらそれをいとも簡単に弾き返す日本人離れしたパワフルさは、高校生でありながら全日本のメンバーに選ばれて当然の実力でもある。
「………」
 チームメイトからのハイタッチを笑顔で交わしながら、しかし、桜子は、左足首に纏わりついている激痛を顔に出さないよう苦心していた。
(もう少し、だから……)
 実は、インターハイが始まる以前から左足首の状態が思わしくない。中学生のとき、同じ部分を捻挫したことがあったのだが、その古傷がぶり返したにしては痛みの度合いがひどすぎる。
 ひょっとしたら、自分が思うよりも左足首は重症なのかもしれない。だが、桜子は、身に負っている期待の大きさと、チームメイトの信頼の厚さを裏切ることができず、ついに足首のことを言い出せないままここまできてしまった。
 インターハイ決勝。1−1のセットカウントのままもつれ込んだ第3セットは、すでに22点(バレーボールの1セット取得の得点数は25)を間近に控えた攻防の最中である。このセットさえ終われば、とりあえずは安寧を得ることが出来る。すぐに患部を冷やせば、この痛みも治まってくれるに違いない。
 根拠のないことで自分を慰めながら、サインどおりセッターから廻されたトスに照準を合わせ、桜子はジャンプした。
(あっ)
 その瞬間、左足首が内側から突っ張るような感覚に襲われた。そのために、ややトスとのタイミングを誤り、めずらしくもアウトラインを遥かに越えるミスアタックをしてしまう桜子。
 ……体勢を崩したまま、左足首で着陸した瞬間にそれは起こった。


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