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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『STRIKE!!』(全9話)-278

『自分は、土になりたい。土になって、いろんな夢を育てていきたい。プロ野球の選手は、いろんな夢の種をくれます。その種が芽を出し、綺麗な花を咲かせるためには、豊かな大地の存在が絶対に必要で、僕はその一部である土のかけらになりたいんです』
 後から亮に言わせると“これは、この文章を書いた人が脚色したんだ”と額に汗していたが、同義のことを口にしたのは間違いないだろう。ちなみに、その記事を書いた川村智子に言わせると、“一字一句、違えてはいない”とのことである。
「歯の浮くセリフを、よく言うぜ……と、思ったけどよ。俺もちょっと感動した」
「な、長見君……」
 斜に構えたところのある彼に言われると、さらに照れが増す。思い出す必要があるほど、以前の話だというのに…。
「ME TOO! アキラもあれで、キドさんのハンリョになるって、決めたらしいですよ」
「エ、エレナ! それは、秘密って……」
「もう時効で、よろしいじゃないですか」
「も、もう〜……」
 そんな亮の言葉に感動したのは、他ならぬ晶であった。その時点で彼女は、彼が自分を離すことがあっても、決して自分からは亮の側を離れない意を固めた。亮の優しさに救われ、絆をたくさんくれた彼に晶は本当に惹かれていたから、彼のためならば身を惜しまないという強烈な想いが芽生え、そして大きく育ったのだ。
 そんな晶を、亮もまた必要としていた。
 彼女の強さ、明るさ、そして、献身的な愛。どちらかというと“陰気”に陥りやすい自分を自覚していた亮だから、生まれ持った“陽気”を持っている晶は、まさに亮にとって“太陽”といえる存在だったのだから…。
 絆は離れる様子もなく深い場所で繋がり、亮が苦心の末に本願を果たして、城南中の教師として世に出たと同時に、二人は結ばれた。
 以後、綻びの気配さえ全く感じさせないで、亮と晶の二人三脚な日々は穏やかに過ぎている。亮が止むに止まれぬ事情で長く家を空けることがあったり、帰りが日をまたいだりすることがあったり、家庭に事情を抱え問題を起こしてしまった教え子を家に連れてくることがあったりしても、晶はそれらを丸ごと受け入れて、亮への献身を惜しまなかった。
 いつか長見が“晶は尽くすタイプ”と言っていたが、それは見事なまでに当てはまっていたといえる。
「あとは、LOVELY BABYだけですね」
「ぐっ」
 エレナの直球に、喉を鳴らす亮。見る見るうちに、晶の顔も紅くなる。
「BABYはとても、いいものですよ」
 そしていとおしげに、愛息・裕輔の頭をそのダイナマイトボディに抱き寄せるエレナ。苦しげに呼吸を求めるその様を、まるで自分を鏡で映しているかのような錯覚を長見は覚えた。
「お、おかあさん、苦しい……」
「Mm,ユウがBABYのときは、ここに吸い付くとカミナリが鳴るまで離れようとしなかったんですのに」
「ぼ、ぼく、もうBABYじゃないよぅ……む、むぎゅう……」
「………」
 晶が羨ましそうに、そんな母子の戯れを見ている。
「まったく、どっちがBABYだって……」
 長見家の大黒柱は、そんな妻と子に思わず頬を緩めていた。彼にとってこの二人は、かけがえのない存在だ。
「………」
 亮には、その長見の表情が、“父親”としての雰囲気に溢れ、さらに“大きさ”を感じさせた。やはり、新しい生命を世に送り出す尊い行為を経た人間は、以降に背負う責任の大きさと相俟って、大きな存在感を得るのだろう。
(そうだな)
 亮は、晶との間に早く子供が欲しいと痛切に思った。それはまた、晶も同様であった。





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