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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『STRIKE!!』(全9話)-233

 5番というのは、クリーンアップの中では地味そうに思えるが重要なポジションである。
 4番が勝負を避けられたりすれば必然的に塁上にランナーを置いた状態で打席に入ることになるわけであり、勝負強い打撃が常に期待される打順だからだ。
 例えば、エレナが加入してからの城二大の飛躍的な攻撃力の上昇がそれを物語っている。逆にいえば、5番の存在が薄かった星海大が、いまひとつ打撃の厚みに欠けてしまった理由にもなる。
 そして、管弦楽の後を打つ鈴木が、櫻陽大の5番打者である。
(あなどれない)
 亮は、管弦楽を仕留めた後だからこそ、自らの弛緩を恐れた。今は5番を打っているが、昨年までは不動の4番を務めていた打者なのだ。
「ストライク!」
 アウトコース低めにまずは直球を。ギリギリのコースを貫いたストレートに、しかし、鈴木は強振で引っ張りにかかってきた。典型的なパワーヒッターであり、そのスイングはかなり鋭い。しかも、インコースへの投球に臆することもなく踏み込んでくる思い切りのよさは、配球の組み立てを難しくさせるものであった。
(相変わらずだな)
 マスクの下で亮は、かるく息をつく。昨年対戦したときも、内角を恐れないその豪快なスイングで何本も痛打を浴びた。
 キン!
「ファウル!」
 ラインを遥かに反れながらも、強い打球が三塁線に飛んだ。フェンスに弾いた瞬間、高く跳ねた軟式ボールがそれを表している。
 三球目のアウトコースでも振り切れず、今度は一塁線に際どい打球を放たれた。
「………」
 意外に器用なところもある。半個ほど外したボール球をカットされたのだ。そのカットにかかった軽いスイングでも、強烈な打球というのがますます侮れない。
 カウントとしては、追い込んでいる。しかし、何処か余裕のない配球を、このとき亮はしてしまった。

 キィン!

「!」
 アウトコースに、ストレートを続けてしまったのだ。それを見越していたかのような、鈴木のバットスイングに、晶の直球は捕らえられ、痛烈な打球が三遊間を襲う。
「HA!」
 エレナが伸ばしたグラブは、届かず……
「くうぅっ」
 斉木の横っ飛びも虚しく、そのまま白球はレフト前に転がっていった。
「よっしゃ、見たかよ!」
 一塁ベース上で、鈴木が吼える。誰より先んじて近藤晶からヒットを奪ったという一事に、彼は興奮した。
「………」
 亮は舌を噛む。4番の管弦楽を抑えながら、心の隙を突かれたような安打を許し、試合の流れを少し相手側に傾けてしまったような自分のリードに。
(ごめんな、晶)
 気合を入れなおし、亮は構えを取った。
 一死一塁である。次打者の習志野は、既にバントの構えをしている。
 亮は、インコースに構えた。晶はそれに対し力強い頷きで答えると、セットポジションからモーションを始めた。
「!」
 目を見張るようなクイックモーション。緒戦の時とは明らかに違う晶の投球術に、櫻陽大のベンチ、特に、二ノ宮と千里は瞠目していた。
 こっ、と習志野がそのボールをバントした。それは三塁線に力なく、落ちる。亮はすぐさまその打球を素手で捕まえると、ためらいを見せることもなくセカンドに送球していた。
 矢のような一閃が亮の手から生まれ、そのままセカンドのカバーに入っていた斉木のグラブに突き刺さる。晶のクイックモーションに幻惑され、スタートが遅れてしまった走者の鈴木がスライディングで塁を奪い取ろうとしていたが、
「アウト!」
 余裕を持って封殺することができた。見事な連携である。
「亮! ナイスだよ!!」
 惚れ惚れするような相棒の強肩に、マウンドの晶は少しはしゃいでいた。





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