投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

『STRIKE!!』の最初へ 『STRIKE!!』 177 『STRIKE!!』 179 『STRIKE!!』の最後へ

『STRIKE!!』(全9話)-178

「醍醐京子」
「なに?」
 管弦楽は常にフルネームで自分を呼ぶ。もっと別の呼び方をして欲しいが、彼女の性格上なかなか自分からは言い出せない。
「君は、食べないのか?」
「……後で、食べるから」
「そうか」
 それ以上は何も詮索をせず、食事を続ける管弦楽。彼は律儀にも、“後で食べる”という京子の言葉を念頭に、それぞれの料理についてひとりぶんの分量を残して、二杯目の茶碗を空にしたところで箸を置いた。
「ごちそうさまでした」
 合掌して言う。最後まで、滑稽なほど行儀が良い。
「もういいの?」
「あとは君の分だ。僕はこれで充分」
 意外に小食なのね、と呟くように言うと、京子は適度に残っている料理の皿にそれぞれラッピングを始めた。
「?」
 そのまま冷蔵庫に運んでいく。“後で食べる”という言葉にはそぐわない、彼女の行動にさしもの管弦楽も戸惑いを顔に出した。
 テーブルの上はすっかり片付けられ、それを布巾で拭った後、京子は再び管弦楽の隣に腰を下ろす。
「………」
「………」
 エプロン姿のまま、横目でちらちらとうかがってくる京子。ますます管弦楽は不審を募らせる。
「醍醐京子」
 とにかく、この部屋に来た本分を果たそう。管弦楽は、その話題を持っていこうとして、隣に座っている京子と対面になるように、位置を変えた。
「あの話、なのだが……?」
 言うなり、京子が俯いてしまった。勝気に睨みつけてくるようないつもの態度はそこにはない。
 考えてみれば、軟式野球部に入って以降、彼女の自分に対する絡み方は、妙に“丸い”ような気もする。がみがみと噛みついてきた頃よりも、その言葉尻がなんとなく柔らかくなったうえ、視線が合うと慌てたようにそっぽを向いたりするのだ。かといって、その反らした視線が完全に自分から離れたということはなく、しばらくすると、また自分の方に戻っている。
 妙な、と常々思ってはいたが、管弦楽は詮索しなかった。
「………」
 そこにあるのは沈黙。俯いたままの京子と、正座のまま背筋が伸びている状態の管弦楽。
 傍から見れば、厳格な兄に説教されている妹という図式が当てはまりそうだ。
「………」
 ふいに、ふるふると京子の肩が震え出した。始めは見間違いかと思った微弱な動きが、少しずつ大きなものに変化していく。
「だ……」

 だんっ!

 管弦楽が名を呼ぼうとしたとき、その持ち主がフローリングを激しく叩いて顔をあげた。
「鈍感!」
「お」
“いつもの京子だ” と、思った次の瞬間、彼は部屋の天井を見ていた。
(?)
 何が起こったか一瞬わからなかった。
「管弦楽……」
 その天井を背景に、自分を見下ろす影。紛れもなくそれは、この部屋の主・醍醐京子である。
 肩口まである彼女の髪は、料理のためか後ろで結わえており、下を向いても零れてこない。
「あんた、本気でわかってないの?」
 彼女の両腕がすぐ顔の脇にある。胴回りを、妙に柔らかいものが抑えているが、それはおそらく彼女の太股であろう。つまり、彼女は自分を床に押し倒し、さらに胴に跨った状態で拘束しているということになるのだろうか。
「やっぱり、わかってない……」
「なにをか?」
 この状況に及んで、彼はいまだに冷静である。
「あたいもヤキが廻ったと思う……なんで、こんなヤツ……」
「………」
 独り言のように京子は言葉を繰り出す。管弦楽としては、とにかくそれを聞くしかない。
「なんで……こんな、ヤツに……」
 搾り出すように京子。混雑している想いはしかし、確かなものとなって唇から零れ落ちた。
「好き……」
 零れたのは言葉だけではない。美しく鋭利なその瞳から、滴が溢れて、管弦楽の頬に落ちてきた。
「好き、なの……あたい、あんたが好き……」
「だ、醍醐京子……」
 思いがけない告白を受け、さすがに動揺を隠せない管弦楽。
「言っちゃったから……もうだめ……だめだよ……」
「な、なにがだ?」
 京子はそのまま、顔を管弦楽の間近にまで寄せた。
「止まんないよ、あたい……もう……」
「な―――」
 管弦楽の言葉は奪われた。奪ったのは京子だ。そのまま覆い被さるように、京子は管弦楽の口を塞いでいた。
 纏めたとはいえ、自由になっている京子の前髪がはらりとこぼれて顔を撫でてくる。それ以上に、柔らかい感触が口の上を躍っている。
「………」
 何もかも初めての現象が身体に降りかかってきて、管弦楽は木偶(でく)になっていた。
「ん……管弦楽……んん……」
 京子のキスは情熱的だ。管弦楽の唇を全体的になぶるだけでなく、上唇と下唇をそれぞれ別々にあまがみし、また深々とその唇を押し付けている。
「………んふっ」
 一通りの愛撫を終えたのか、唇を離して顔をあげる京子。その顔は真っ赤に火照り、その瞳は妖艶な輝きを帯びている。
「………」
「あんた、こんなこと、初めてでしょ……」
「そ、そうだ」
 両頬をつかまれて、鼻先に顔を寄せられて、管弦楽は濃密な女の香りに酔わされていた。
「ねえ」
 瞳の妖艶な輝きは、しかし、何処か不安に揺れている。
「あたいのこと、どう思ってるの……?」
「………」
「ねえってば……」
 たちまち潤んでいく瞳。自分の気持ちを伝えて、そのまま管弦楽のファーストキスを奪いとったのはいいが、肝心の彼の心内を置き去りにしているから、彼女はどうしてもそれが不安なのだろう。その先へ進むためにはやはり、想いの融和が絶対に必要だから…。
「僕は、その、野球しかない男だからな」
「そんなの、知ってるわよ……」
「京子、訊いていいか?」
「あ……」
 名前で呼んでくれた。たったそれだけなのに、少しだけ不安が薄まった気がする。
「好き、というのは、どういう感情だろう?」
「……わかんないの?」
「あまり、考えたこともなかったからな。……君が、僕にどんな想いを抱いているのか、訊かせて欲しい。好き、という感情は何処から出ているのか」
「……いいよ」
 ちゅ、と管弦楽の唇に軽く触れてから、京子は言葉を紡ぐ。
「あんたを見てると、なんか胸が熱くなる。傍若無人で尊大不遜で、暑苦しいって、最初は思ってたのに……いま、あたい、あんたの全部がすごい好き」
「………」
「あたいだって、こんな気持ち、理屈でわかってるわけじゃないよ。でも、あんたがそばにいてくれると、すごい胸がどきどきする。あんたが野球のことでも何でも、話しかけてくれるだけで、励ましてくれるだけで、もうあたい、泣きそうになるぐらい胸が熱くなる……」
 それを照明するかのように、今も京子は半分泣いていた。
「それは、つまり、僕の存在そのものが、君に何らかの熱反応を引き起こしていると」
「ま、まあそうなるのかな……」
 京子は曖昧に答えるしかできない。そういう気持ちは理屈ではないから、細かく検証しようとしてもはっきりとはわかりえないからだ。
「それならば、僕は京子が“好き”ということになる」
「えっ」
 管弦楽が、何かを思い起こすように、遠くを見る目つきをした。
「なんというか、君がマウンドで投げる姿を見ると、僕は胸に熱いものが込み上げる。あの試合……享和大学との試合で君が見せた笑顔は、僕にとてつもない熱反応を起こした。あれ以来、そういうことがよく起こるのだ」
「………」
「もうひとつ不思議なことがある。君と津幡さんとサインの打ち合わせで寄り合っているのを見ていると、なにか、こう、胸がちくちくするのだ」
「……あ、あはっ」
「ん? どうした?」
 京子は、胸の不安が全て吹き飛んでいた。
「嬉しいよ、管弦楽……」
 三度、唇を塞いでしまう。難しいことを並べながら、取りあえず気持ちを伝えてくれた唇に褒美を与えるように、優しく穏やかな愛情を注いで…。
「結構、ヤキモチ妬きなんだね、あんた……」
「あ、ああ。あれが、嫉妬か……」
 京子の愛戯が止まらない。唇だけでなく、頬にも瞼にも額に柔らかいものが振り撒かれて、管弦楽としてはくすぐったいが、何故か心地よい。
「それなら、言っておく」
「ん……」
 なおも顔中へのキスをやめない京子。管弦楽は、その頬をつかまえると、少しだけ京子の顔を浮かせた。
「好きだ」
「ほんと?」
「うむ、間違いない。僕は京子のことが好きだ」
「ん、んふふふ……」

 ちゅ、ちゅ、ちゅ……

 京子の口づけは更に激しいものとなり、管弦楽の顔という顔に降り注ぐ。
「あたいも好きよ……あんたが、好き♪」
 変則的なものとはいえ、互いの気持ちは通じたのだ。京子としては、もう、己の熱情を押し留める理由は何もない。
「ね、管弦楽……」
「なんだ?」
「好きって、いってくれたから。ご褒美に、すごいことしてあげる……」
 そのままするすると身体を下ろしていく。やがて京子の頭は、管弦楽の腰のあたりで停止し、一度、その顔を起こして彼に艶めいた笑みを与えると、指でその中央部を撫でさすった。
「!」
 びりびりと痺れるような何かが、管弦楽の全身を走る。
「やっぱり、管弦楽も男の子だね……」
 中央部は既に、筍が地面から生える寸前のような隆起を見せていた。
「辛そうだから、出してあげる……」
 じじじ、とジッパーを下ろす。
「あ」
 管弦楽の下着は、ブリーフであった。それ故に、隆起した部分はしっかりとそれの形を浮かび上がらせており、京子としては更なる劣情を煽られる。
「ふふふ……」
「きょ、京子!?」
 さしもの管弦楽も、まさか股間をまさぐられるとは思わず、珍しく頓狂な声を挙げた。だが、それは京子の行動を押し留めるどころか、さらなる進行を導くだけである。
 ジッパーの開いた部分から指をもぐりこませ、ブリーフのゴム部分にひっかけると、それをそのまま擦り下ろした。中に収まっていた管弦楽の男の象徴が、その封印を解かれて京子の目の前で雄々しく芽を出した。
「わぁ……」
 想像していたものより、それは長く太かった。若木のような佇まいで、性的に全く熟れていないその様に、京子は瞠目する。鮮やかなピンク色の亀頭が目にまぶしい。
(かわいい……)
 この若木を、これから自分がどんどん淫らに蒸していくのだ。京子はそれを思うだけで、背筋がぞくぞくした。
「くっ……」
 管弦楽が息を漏らす。京子がその若木を右手で優しく掴んだからだ。
(ま、まだ半端なの? これで?)
 なんとなく、幹に柔らかさが残っている。どうやらこの若木は、さらにその幹が太く固くなるらしい。
「すごいね……」
 だとしたら管弦楽のイチモツはなかなか立派である。
「ふふふ」
 親指の腹で、幹を擦った。
「うぬっ」
 管弦楽の腰が微かに跳ねたので、彼にも官能のうねりが存在することを京子は知って安心する。わが意を得たりとばかりに、京子は親指の擦りを交えたまま、手のひら全体でその幹を上下にしごきあげた。
「う、うわっ」
「感じる? ふふふ……感じるんだ……」
 京子は優位に立っていることがたまらない。いつも尊大なこの男から、泡を食ったような言葉を吐かせていることが、さらなる愉悦を内側からほとばしらせて、それだけで太股の奥が熱くなってきた。
「まだまだ、序の口なのよ……」
 京子は親指の腹を亀頭に持っていく。鮮やかな色のそれを、今度は擦り挙げた。
「っ」
 息を飲む管弦楽。慣れていないどころの話ではないのかもしれない。
(オナニーも、してないのかしら……)
 だとすればあまりにも性的に未熟である。しかし、この凄まじき潜在能力を有するイチモツを見れば、京子としては放っておけない。
 これからこの若木を成長させて、それでたっぷりと自分を愛してもらわなければならないのだから。
「あ……」
 硬直具合が少し増えた。ぴくぴくと桃色の亀頭が張り詰めて、その鈴口から透明な液体を溢れさせてくる。
「管弦楽、濡れてきたよ……」
 ほとんど独り言のような呟きを残して、京子はその鈴口に舌をつけた。
「のわっ」
 腰が浮く。しかし、それを京子は遮るように、太股を押さえつけて動きを封じた。

 ちろ、ちろ、ちろ…

 と、舌先で隅々まで愛する。非常にその部分は清潔で、京子は全く嫌悪を感じることもなく舌を這わせることが出来た。
「綺麗だね……」
 今度は舌の腹を使って、亀頭の裏を舐め挙げた。味を感じたのは、やはりその先端から滴るガウパー氏命名の先走りのためだろう。
「ふふ……あむ……」
 京子は大きく口を開けると、そのまま亀頭の部分を口に含んだ。
「お、おおぅ!」
 突然、ぬめった感触が敏感な部分の皮膚に覆い被さり、その中でうねうねと蠢く柔らかな物体が刺激してくる。その経験したことのないさざめきが、腰から湧き出すように身体を走り、管弦楽はそれを受け流すことも出来ずひたすらうろたえっ放しである。
「ちゅっ……んっ……んちゅ、んちゅっ………」
 その狼狽を知ってか知らずか、京子は亀頭の先を吸い込むようにして更に管弦楽のものを愛する。
 口の中でびくびくと痙攣する管弦楽の若木の芽。その震える様が口内粘膜に直に伝わってくる。
「んふ……ふふ……」
 京子は、性的にも朴念仁の彼が、それでも自分の口戯で確実に感じていることを幸せに思った。
(もう、あたいも……)
 たまらない。京子は口で先端を咥え、右手で竿を握り締めながら、空いている左手を自らの股間に沈み込ませた。スカートの中に潜んでいるショーツに指を触れると、そこは既に熱いうるみによって筋状に濡れている。
「く……ふ、うふっ……」
「な、む、むぅ……」
 亀頭の先端に、生温い息が降りかかった。それは京子の吐息だったのだろうが、妙に甘ったるいものを感じた。
「んっ……んふっ……ちゅふっ……」
 なぜなら京子は、口と右手で管弦楽を愛撫する一方で、太股の奥にもぐりこませた左手の指で、自分を慰め始めたからだ。
 ショーツの上からというのに、柔らかい筋の中央がじっとりと汗ばんでおり、添えた指で擦りあげると、愉悦と同時にますます熱いぬるみを吐き出して、その部分をさらに濡らしてしまう。
「んぷっ……ふ、ふぅんっ……」
 喉の奥から官能が迸った。自らがまさぐっている筋の中に指を埋め込んだのだ。そのために弾けるような劣情が身体を駆け巡って、それが出入り口を塞がれている喉で炸裂した。
「きょ、京子……ぬあっ」
 その余勢をまともに亀頭に浴びて、管弦楽は情けない声を出す。いつもの不遜さは、影を潜め、なにやら自分の身体で起こっている現象に翻弄されているふうである。
「ぅぷ、はぁ……あはぁ……あう……」
 不意に亀頭から口を離し、京子が悶えた。自らが弄ぶ部分からの愉悦が更に大きくなり、それを何とかしたいという気持ちに脳内の指令が切り替わったのだ。
「管弦楽……」
 京子は妖艶な笑みを浮かべたまま、膝立ちになる。そして、スカートの中に両手を入れると、ショーツを膝元まで下ろし、次いで尻餅をつく状態になってから、最後までそれを引き抜いた。
「あたい、もう……欲しくて、たまんないの……」
 そのまま再び膝立ちとなると、そのまま管弦楽の腰の上にまで股間の中央を持っていく。
「………」
 管弦楽の若木を両手で支えると、その先端を露が溢れる入り口に押し当てた。
「いいね……入れちゃうから、ね……」
「きょ、な、う、うぉぉぉぉっ!」

 ずぶ、ずぶずぶずぶ……。 

「はっ、あ、ああぁぁ………」
 固くそそり立つ若木を中に収めると、京子はその太さに自分の胎内の粘膜が押し広げられる感覚に背筋を震わせた。
「あ、ああんんっ……か、管弦楽……」
 その熱さを奥深くまで迎え入れて、京子は頤をそらせてその刺激を愉しんでいた。
「ど、どう……?」
「く、くぅ……な、なんとぉ……」
「あったかくて……やわらかいでしょ? ……これが、女のコの中なんだよ………」
「む、むむ……」
 緩やかに腰を前後して、中の固さを粘膜に擦りつけ、管弦楽に性の知識を快楽という形で植えつける。自分の熟れた泉に白無地の布を浸し、それを自分の色に染めるが如く、京子はやわらかく包んだ童貞の肉茎を粘膜で愛撫した。
「はぁ……あ、あはぁ……」
 もちろん、それによって自分も満たされるので、痺れるような熱情に震えてしまう。いろんな意味で自分の心を掻き乱した胸の下にいる存在を、それでも京子はもっと愛してあげたいと思った。
「くっ、きょ、京子っ」
 不意に管弦楽が喉からやや高い息を漏らした。
「どうしたの………」
 それに対し上の空で応える京子。緩やかに前後し、回転させる動きをそのままに、京子はその陰茎を巧みに胎内で躍らせている。
「う、ううっ」
「あっ………」

 ぶぴゅっ、びるびるびる…

「あ、あふ……くっ……あ、あつい……」
 中に収めていた亀頭の先端が妙に張り詰めたと思うと、京子の中に熱く質量のあるものが飛び出してきた。
「管弦楽……出ちゃったんだ……」
 自分の粘膜の刺激に耐えられず、管弦楽が射精してしまったと知って、京子は嬉しかった。
「あ、すごくいっぱい……溢れちゃう……」
 液体というにはあまりに物質感のあるそれが、京子の敏感な粘膜をたちまち満たして、接合している場所から漏れ溢れた。
「………」
 眉を捩じらせ、己の身体に起こっている現象に四苦八苦しているふうな管弦楽。しかし、かすかに官能に揺れるそのまなざしが、京子をますます昂ぶらせた。
「いいんだよ……あたい、きょう大丈夫だから………もっと、もっと出して……」
 中に出された粘質の高いものを、それを放出した淫棒を使って掻きまわすように京子は腰を動かす。たちまちにして潤みを増した接合部が、緩やかな動きにも関わらず、淫靡な音を耳に届けた。
「ぬっ、ぬぅぅぅ……」
 びゅっ、びゅっ、と奥を打ってくる熱い樹液。最初の射精はまだそのなごりを若木の中に残しているらしい。
「あつい……いっぱい……いっぱいだよ……」
 べとべとになった陰唇と陰棒を、擦りたててさらなる快楽を引き出す。管弦楽の中から放出されたモノが胎内に飛び散って、自分の分泌液と絡まったその滑りは最高だ。
「あ、いい……きもちいい……」
 激しく犯されていないのに、どうしてこんなにも感じてしまうんだろうか。きっとそれは、胎内に迎え入れた若木の持ち主を、本当に愛しく思っているからだ。
(なんて……カワイイの……)
 初めての愉悦に戸惑いながら、それでも快楽に歪む管弦楽の切なそうな顔が、京子にはたまらなくいとおしい。自負の塊のような普段の彼の姿からは想像もつかない“弱さ”に、京子は胸がときめいた。
(あたいは、どうだったろう……)
 自分の“初めて”は高校時代だが、その相手はバイト先の先輩だった。告白され、つきあうようになり、三ヶ月ぐらい過ぎた後、なんとなくそんなムードになったときにそのまま処女を捧げたのだが、それに対しては別段に感慨もなかった印象がある。その“先輩”のことは好きなつもりでいたのに、感動とか、感激とかそういうのは不思議となかった。
 あまりにもスムーズすぎる破瓜を迎えたというのもあったのかもしれない。その男は、かなり性について通暁していたらしく、初めてにも関わらず京子はセックスで感じたのだから。
 その後も、その“先輩”から性に関して色々教わった。だが、京子が性的に熟れてゆくに従って、二人の仲は冷えていった。もともとの趣味があわなかったというのもある。どちらかというとインドア派だったその男に、アウトドア嗜好の京子はいつしか好意を失っていった。
 破局した後しばらくしてから、京子は同級の男子に交際を申し込まれ関係をもった。だが、それもすぐに終わりを迎えている。これは完全に、セックスの肌があわなかったからだ。あまりに一方的で、身勝手だったその男子のセックスに京子は辟易とした。
 やはり、男女関係のなかにおいて、肉体関係が心身ともに充実するということは重要なファクターである。
「んっ……ど、どうしたのっ……あ、あ、あっ……」
 考えを別の方に奪われていたとき、ふいに腰が持ち上がった。持ち上がれば重力に従って沈む。そして、敏感な部分を貫かれている京子は、その沈むときの衝撃をまともにその箇所で受け止めることになるのだ。
「あ、あぁんっ!」
 激しい愉悦が身体を走った。
「う、動いてくれたの……ん、んっ……」
 跨っている管弦楽の腰が、遠慮がちに上下しているのだ。
「む、むぅ……」
 まるでまな板の上にのっているように、官能による揺れ以外には微動だにしなかった管弦楽が、明らかに自己の意思を発動させて、自分を突き上げている。
「くっ……ん、んくっ……ん、い、いよ……そんな感じ……ん、んんっ」

 ぐぷっ、ぬぷっ、じゅぷぷっ…

「は、あぁっ……あんっ……んっ……」
 中に放出され、溜まっている白濁の粘液が、そのピストン運動を受けて淫らな音を増幅させていた。さらにその泡立ちが弾けることで、敏感になっている京子の膣内膜を刺激し、昂ぶりがじわじわと腰に昇ってきた。
「これで、いいのか?」
「あ、あっ……うん……いいよ……管弦楽………んっ、んっ…か、管弦楽ぅ……」
 抑揚のない上下運動ではある。だが、自分を高めようとしてくれるその健気な動きが京子には愛しくて、その名前を呼んで気持ちの良さを伝えた。
「か、管弦楽は……」
「?」
「気持ち、いい……? ん、んっ……」
 京子はその上下運動に併せ自らの腰を回転するように蠢かす事で、彼にこういう動きもあることを教える。そのうえで、健気に動く中で快楽を得ているのかどうか気になった京子はそれを問うていた。
「あ、ああ……こういうのは、初めてだ……」
「ふふ……チェリー、卒業だね……」
 顔を寄せて、記念のキスを贈った。彼の童貞を、しっかりした形で食せたことに、京子は自負を強めた。

 ぐぷり…

「あ、ああうぅぅ!!」
 しかしそんな余裕は、不意に深く中を抉られたことで何処かに飛んだ。単純な動きに終始していた股下の管弦楽だったのだが、急にその腰を大きく突き上げて、京子を深々と貫いてきたのだ。
「ひっ……ど、どうし……あっ、あぅ、ああぁぁぁぁ!!!」
 固く太く長い管弦楽の若木が、京子の中で雄々しく存在を主張する。先に放たれた樹液を交えて、京子の内粘膜を荒々しいともいえる動きで犯し始めた。
「す、すごいよ……感じるッ、感じちゃうッ!」
「………」
「あっ、あっ、か、管弦楽ッ、管弦楽ッ!」
(そうか……やはり、深いほうがいいのか……)
 彼なりに分析していたようだ。
 先ほど、夢精のときと全く同じ迸りが先端から溢れたとき、京子の身体は大きくわなないた。おそらく勢いのある放出物が奥まで弾けて、それが快楽美を引き起こしたのだろうと、痺れるような射精感に酔いながら彼は考えていた。
 上下運動を始めたとき、突き上げたときの方が京子の呼吸は甘く乱れた。そして、京子の沈むリズムと自分が突くリズムが同調し、さら深いところにモノが収まると、彼女の甘い声が一層高く響いたのだ。
 それで管弦楽は、交わっている処の奥深くに、京子の最も悦ぶ地点があるのだろうという結論に至ったのだ。
「あっ、ふかいっ………かたいしっ、ん、んあぁっ!!」
 主導権を握り続けていたのに、京子は次第に突かれる悦びに身を浸し、それに没頭し始めた。すなわち、管弦楽の動きを主体に自分の性感を高め、それで昇りつめようという意識に変わってきたのである。

 ぐぷっ、ごぷっ、ずぷっ、ずぷっ……

「あっ! お、おと、すごい……ぐちゃぐちゃしてるのっ! あたいの、なかで……ぐちゃぐちゃいってる!!」
 胎内で躍る管弦楽の若木と樹液。それが摩擦によって熱を帯び、泡立ち、自らの淫蜜と混合して卑猥な音をたてる。京子はそれをもっと堪能したくて、管弦楽の動きにあわせるように自らも大きく腰を上下した。
「くっ! うっ!! あ、ああぁぁぁぁ!!!」
 緩やかな曲線で昇っていたベクトルは、次第に二次関数のグラフの如き曲線を描き始めた。
「うっ、きょ、京子」
 それは管弦楽も同様だ。自慰も満足に知らなかった元チェリーは、それ故に大量の樹液をその若木の中に備蓄している。最初の放出など、まだまだ序の口である。
「ま、また……出そう、なのね………い、いいよ、出して……あ、あたいも……イク、からっ!」

 ぐちゅぐちゅぐちゅぐちゅ……

 と、大きな動きと併せながら小刻みに腰を揺らし、摩擦の回数を増やして高みを目指す京子。
「あっ……イ、イキそう……ん、んっ――――!」
 ぶるっ、とその全身が戦慄(わなな)いた。
「ぬ、ぬぅっ!」
 その戦慄きはもちろん、京子の内粘膜において更に激しく管弦楽を刺激する。そして、彼はその刺激を上手に受け流せるほどの性巧者ではない。
「あっ―――」
 京子が、胎内にあるモノの膨張を感じた瞬間に、それは起こった。
「!」

 どくっ、びゅくっ、びるびるびるびる!!

「あはぅっ!! はぁっ……あっ……あああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ―――――――――――………っっっ!!!」
 二発目の炸裂弾を深い場所で受けた京子は、グラフの最高到達点さえ簡単に更新したその性の昂ぶりに、大きく背中を反らして声高に咆哮したのであった。



 ―――――キィン!!
「うわっ……」
 シートバッティングで、管弦楽の打球を追いながら、櫻陽大のクリーンアップの一角を担う鈴木は嘆息を漏らした。
 ―――――キィン!!
「おわっ……」
 管弦楽のバットから繰り出される白球は、高々と空を舞い上がり、隼リーグの開設と同時に大学が設けてくれた専用グラウンドの網を遥かに越えて、その後ろにある林の中へと次々に飛び込んでいった。
 滞空時間の長い打球というのは管弦楽の特徴であるが、今日はとみに飛距離が伸びている。
 ―――――キィン!!
「………」
 鈴木はもう、言葉もため息も出せなくなっていた。
 自身、このリーグ戦では5本の本塁打を放ち、長打力にはそれなりの自負を持っている。だが、この1年坊には到底及ばないと、その打球を見るや痛烈に感じてしまう。
(これじゃあ、4番争いの相手にもならねえ……)
 昨年まで預かっていたその座をこの1年生に奪われ、それを発奮材料にして昨季以上の打撃成績を残している鈴木だが、それさえも簡単に上回り、更に今日に至ってはますます絶好調の管弦楽を見て、消沈してしまった。
「はは、すごいな管弦楽は」
「二ノ宮……」
 先にシート打撃を終えていた二ノ宮が、そんな同輩に、軽妙に話しかける。
「腰が上手く廻ってる。あいつこの頃、腰が重そうだったんでちょっと心配してたんだが、どうやら杞憂だったらしい」
「ああ……4番が遠くなる……」
「おいおい、もう諦めたのか? 打点は互角だろうに」
「敬遠のおこぼれを貰ってるからな……それも、この前の試合で差ぁつけられたしな……」
「らしくないぞ、鈴木。お前の勝負強さがあるから、管弦楽で勝負を避けられても、俺たちは勝てているんだ」
「そ、そうか」
「そうだよ。4番だけが野球じゃないぜ」
「そ、そうだな。うん、そうだ」
 少し鈴木に元気が戻った。空いたゲージに嬉々として入ると、管弦楽ほどではないが、シャープな打球を左右に打ち分けて、好調ぶりをアピールしていた。
「ふははははははは!! 今日は腰が良く廻る!! 絶好調だ!!」
 所定の練習球を終えて、管弦楽がゲージを出た。
「管弦楽くん」
「? なんでしょうか?」
 目の前に千里が。管弦楽は慌てて直立の体勢を取る。入部間もない頃、自分の打撃理論を完璧に論破されて以降、彼は千里に絶対服従である。
「絶好調ね」
「あ、ありがとうございます」
 普段は、滅多にお声すらかかることのない千里の微笑みに、管弦楽は彼らしくもなく恐縮している。
「今日の練習はこれでいいわ。はい、ご褒美」
 そういって、籠を渡される。その籠には、背中に背負うことのできるように肩回りにかけるためのベルトがついていた。
「いっぱい林に打ち込んだみたいから、頑張って探してきてね♪」
「………」
「返事は?」
「イ、イエッサー!」
 …何処の所属だ君は。
「管弦楽幸次郎、高峰マネージャーの言いつけに従い、球拾いに行ってまいります!!」
 そのまま駆け足で、管弦楽はグラウンドを離れてった。その背に、二ノ宮以下、打撃練習に励む面々の苦笑を貼り付けて。
「あ、幸次郎……」
 ブルペンで投球練習を行っていた京子は、背中に籠を背負ってグラウンドを後にする管弦楽を見つけ、つい目で追いかけてしまった。
「練習中に、よそ見しちゃダメだ!」
 すぐに捕手の津幡から注意が飛び、彼女は苦笑いを浮かべたあと、集中して投球を再開した。
 それから二十球ほど投じたところ、津幡が笑顔で、
「……今日はこれぐらいにしようか。いい球だったよ」
 と、練習の終了を告げた。
 櫻陽大学は基本的に隔日で練習日を設けているのだが、大一番を控えた現在、とりあえず毎日活動している。しかし、あまりに根を詰めると皆がパンクしてしまうので、この日は自主練習という形を取り、それぞれの分担に従って軽めの練習を行っていた。
「千里さん」
 津幡の管轄で動いていた京子は、終了を告げられると、すぐに千里のところに向かった。彼女がなにか管弦楽と話をしていて、彼はその後に籠を背負ってグラウンドを出ていったから、千里に何かを言われたのは間違いないと考えたからだ。
「京子ちゃん、どうしたの?」
 同じ女ということもあり、千里は京子に対して優しい。
「いえ、こう……管弦楽君、どうしたんです?」
 思わず名前が出そうになって、京子は慌てて言い直した。しかし、その一瞬の出来事を見逃す千里ではない。
「ふーん。なるほど……」
「せ、千里さん……」
“まずい”と京子は冷や汗が出る。百戦錬磨の彼女も、その上を行く存在である千里には全く敵わない。
「管弦楽くんの好調の影に、京子ちゃんあり、か……」
「………」
「どうりで彼、腰が廻るわけだ」
「!?」
 ぼっ、と京子の顔が紅い火を噴いた。千里は、全てを見通しているとわかったからだ。
「あ、あの……」
「避妊は忘れちゃダメよ。それと、試合二日前は自粛するように」
「………」
「返事は?」
「オ、押忍ッ」
 …君は、野球部員だぞ京子さん。
「管弦楽くんなら、裏の林。あ、そうだ……」
 千里は管弦楽に渡したのと同じ籠を、京子の前に差し出した。
「よかったら、京子ちゃんも探してきてくれる?」
「え……」
「返事は?」
「Sir!」
 ………。
 先に、千里は京子に優しいとは言ったが、それは“甘い”というのと同義ではないということもわかっていただけたと思う。



「そうか……今日はやけに腰が軽いと思ったが、そういう副産物もあったか」
 その日の夜である。
 蒸すような時間を過ごした後、京子の身体を引き締まった胸に引き寄せて、管弦楽は絶好調だった今日の打撃練習を反芻していた。
「まさに一石二鳥だな。これこそ天佑なり」
「ん……」
 めくるめく快楽の高みを胎内で弾けさせた京子は、夢現で管弦楽の言葉を聞いている。
 童貞卒業からわずか二日目だというのに、管弦楽の性的な技量は飛躍的に高まっており、不覚にも京子は彼が一回目の放出を迎えるその前に、二度の絶頂に身体を震わせていた。
(スキンを被せるまでは、あたいのペースだったのに……)
 千里の忠告を守り、今日は避妊をしっかりした。
 管弦楽はそのゴムの存在を知ってはいたが、使い方までは知らなかったようで、悪戦苦闘しているところを京子が手ほどきし、自らの手でそれを被せてあげた。
 その時は、彼のイチモツも含めて主導権をまるまる握っていたのだが、互いに愛撫をはじめ、挿入に至ったとき、管弦楽は昨日とは全く別人のような巧者ぶりを見せた。
 今日はまず正常位で愛しあったのだが、彼の腰のリズムは昨日のように単調なものではなく、いわゆる三浅一深の法則を遵守し、しかも時にはねじるような動きをつけて深々と中を抉ってきた。そのうえ、突きながら耳や乳首を噛まれたりしたので、もともと敏感な体質の京子はそれだけで甘い声をあげ、たまらず身体中の愉悦を歌にして大気に響かせてしまっていた。
 1度目を昇りつめたとき、管弦楽はスピードを緩め呼吸が落ち着くのを待ってくれた。その落ち着きがある程度のところまで来ると、今度は昨日のように騎乗位の体勢を取り、下からまるで海老の跳ねるが如く腰を猛然と打ち上げてきた。
 その激しさにたまらず、“お×んこ、おかしくなりそう!”などと、淫猥な言葉を吐き散らしてしまった。そして、瞬く間に二度目の絶頂を越え、その最中に管弦楽が、被せていたスキンに自らの欲望を解き放ったのである。
「……ねえ」
「どうした?」
 胸に頬を摺り寄せて、京子は管弦楽に甘えた。まったく、三日前からは想像もつかない姿だと、自分でも呆れてしまう。
 だが、“好きなものは好き”なのである。今まで付き合った男の中で、はっきりいって相当に毛色が違う管弦楽に、京子は初めて“愛”を感じていた。
「……訊いても、いい?」
「いいぞ」
「高校のとき、幸次郎はどうしてたの?」
「………」
 管弦楽の表情に、陰が差した。それはある程度予想もできたことだが、京子はどうしても高校時代の彼がどんな野球人生を送っていたのか確認しておきたかった。
 本当は、中学の頃からその存在を意識していた。名前も特徴的だったし、何より、部活のあるたびに頭を越えていくその打球が強いインパクトとなって、彼のことを京子の胸に刻み込んでいたのだ。
 だが、直接の面識となると、よく覚えていない。ソフトボール部と野球部とで、練習試合を模した合同練習は何度かあったから、その時にひょっとしたら会話をしていたかもしれないが、京子は記憶が定かではなかった。
「僕が推薦で進学した神栄学園は、確かに強豪ではあったが……」
 少し間を置いて、
「体制の悪弊が、いまだに生きているところだった」
「………」
「シゴキと化したノック。足軽隊と名づけられた御用係。修正と称するいわれなき暴力……。僕は推薦組だったから、すぐに標的にされてね。まあ、大概のことなら耐える自信はあったのだが……」
 悔しそうに唇をかみ締めてから、管弦楽は続けていた。
「体が先に壊れてしまったのだよ。膝をいためて、歩くことさえできなくなった」
「え……」
 今の軽快なフィールディングからは想像もつかない事実である。
「野球の才能を見込まれての推薦だったから、僕はすぐに退学し、別の高校へ移った。転校先でも、膝のリハビリで僕は学園生活のほとんどを費やしていたから……」
 野球どころではなかった、と付け加える管弦楽。
「幸いにして膝は完治したのだが、硬球にほとんど触れられなかった。僕は軟式野球のことはよく知らなかったから、野球はもう無理だろうな、と勝手に思い込んでいた。ところが、天は僕を見捨てなかった。あまり考えずに選んだこの櫻陽大学にはしっかりした軟式野球部があり、本格的なリーグ戦にも参加している。野球には、いろんな形があるんだということを知り、本当に嬉しくて、僕はすぐに門を叩いたよ」
 しかも徹底した実力主義を貫く方針だったため、紅白戦でその打力を遺憾なく発揮した管弦楽は、すぐにレギュラーメンバーに名を連ねた。3年ぶりに野球が出来る喜びが、彼の背中に翼でも生やしたか、普段の練習の中でもさらに強打を重ね、気がつけば入部わずか1ヶ月にして、4番に指名されるまでに認められたのだ。
「野球の神は本当にいるのだと、僕は心から天に感謝したよ」
「幸次郎……」
 知らなかった。いつもの尊大な態度からは想像もつかない彼の過去。
「ごめん。野次馬根性で、聞くことじゃなかったね……」
「そんなことはない」
「あっ」
 強く抱きしめられた。今日の始まりも自分から誘ったものだったから、彼が自らの意思で触れあいを求めてきたのは初めてかもしれない。
「京子、僕は君を知っていた」
「え?」
「中学のとき、ソフト部に活きのいい投手がいるな、と思って見ていたからな」
「………」
「“醍醐”という名字はそうあるものではない。だから、ひょっとしたらと思って勧誘したのだが……」
「は、はは……断っちゃったんだよね、あたい」
「うむ」
 あの頃はチームプレイのある試合よりも、賭け野球のほうがギリギリの勝負を味わえると思っていたからだ。
「その時はとても残念な気がした。もしかしたらその頃から、僕は京子が好きだったのかもしれないな」
「! ……あ、あんっ」
 ぎゅう、と更に強く胸に抱かれる。いつにないその積極さに、京子は胸に湧き上がるときめきを抑えることが出来なかった。
「幸次郎……」
「高校のときに味わった不遇の結果が今の状況というのなら、来世になってもその不遇を、僕は喜んで受け入れるだろう」
「ふふっ、あんたらしい……」
 相変わらず気障な言い回しだが、想いが繋がっている今ならそれが微笑ましく感じられてしまうから不思議だ。
「次の試合で、今年は最後になる」
 ふいに、管弦楽の顔が凛々しくなる。どうやら、リーグ戦の方に意識を移したらしい。
「君も知っている通り、近藤晶のいる城南第二大学は、我々にとっては最大の難敵だ」
「そうね」
 なにしろ“荒”として賭け野球の世界を席巻してきた、今では伝説になった投手だ。
「だが城二大にとっても、我々は相当に難敵だろう」
「すごい自信じゃない」
「苦戦した前期の時と違い、今回は京子がいるからな。まさに、千人力だ!」
「も、もう………」
 おそらく彼は本気で言っている。そう言ってくれるのは嬉しいが、正直照れてしまう。
「今こそ共に頑張ろうではないか。僕はいま猛烈に燃えている!」
「ふふ、そうね……でも……」
 精悍な顔が愛しくなって、京子はその頬にキスを贈っていた。
「?」
「まず今夜……もう1回、燃えてみない?」
「……いいだろう! いざっ!」
「きゃっ」
体を入れかえられ、逞しい管弦楽の肉体に組み伏せられた格好になる。
「こ、幸次郎……」
 自ら望んだこととはいえ、そのあまりの性急さに京子は戸惑った。
「京子! 愛しているぞ!」
(ほ、ほんとに、野暮ったいひと……で、でも……あ、あっ……)
 しかし、燃え上がる彼の愛撫を全身に受けると、京子はすぐに官能の虜となり、熱い吐息を漏らして何度も愛しい人の名を呼び続けたのであった。




『STRIKE!!』の最初へ 『STRIKE!!』 177 『STRIKE!!』 179 『STRIKE!!』の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前