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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『STRIKE!!』(全9話)-177

 後期日程も残すところあと1試合。しかもそれは、総合優勝をかけた大一番である。
 その試合は2週間後だ。球場の貸借に関する都合上、思ったより間が空くことになるが、それは入部して間もないため、充分なサインプレーを覚えていない櫻陽大の醍醐京子にとって好都合であった。
 事態は、好転しているといえるかもしれない。
 快勝に告ぐ快勝を重ね、チーム状態が上潮のライバル・城南第二大学だが、冷静に見ればベンチメンバーを含めての総合力は櫻陽大のほうが圧倒的に上回っている。更に醍醐京子という戦力を得て、唯一の弱点と言える投手力にさえ厚みができた。
 そんな醍醐京子の加入が刺激になったのか、何となく低調気味だった打撃陣も、このところ振りが鋭くなっている。
 前期の初戦に比べ、城二大のエース・近藤晶が、飛躍的に成長しているということは彼女が次々に記録する空恐ろしい数字によって思い知らされている。しかし、自分たちもそれに負けることなく春先から向上しているのだ。
 ガチンコ一発勝負。
 そんな表現がぴたりとはまる一戦は、もうすぐだ。



「醍醐京子」
 そんな大一番に向けて、遅くまで練習に明け暮れていた管弦楽はいま、目の前に置かれたテーブルに居並ぶ豪華な料理を前に、なぜか正座で鎮座していた。
 なにしろ、自分でもこの状況がよくわかっていない。
「醍醐京子」
 もう一度彼は、この部屋の主の名前を呼んだ。
「なによ」
 エプロン姿の京子がそれに応えながら、またひとつ皿を運んでくる。それを管弦楽の前に並べると、ようやく自分もそのすぐ隣に腰をおろした。
「説明して欲しいのだが」
「?」
「この前の勝負……僕に、そのことについて話があるのではなかったのか?」
 何しろ結果的に敗れている管弦楽だ。
 そのため学生にとっては大きい金額の負債を京子に対して抱えることになってしまい、さしもの管弦楽も、その支払いについてどうしたものかと頭を痛めていたのだが、肝心の京子が一向に督促をしてこないので、それを不審に思い問い質したのだ。
 自ら“義と信の漢”をうたっている彼としては、うやむやにして終わらせたくない。たとえそれが、己が身を切ることであっても。
 ところが、やはり京子は何も言ってこない。
 不審が頂点を極めようとしたある日、ようやくその件について話を切り出された。
『せっかくだから、あたいの部屋にきなよ』
 と、京子がいうのでそのまま管弦楽は彼女の部屋にやってきたのだが…。
「はい」
 手渡された茶碗には、山盛りの白御飯。管弦楽は、何も言わずそれを受け取る。
「はい」
 割り箸も、差し出された。
「………」

 ぱき、しゃっ、しゃっ…

「いただきます」
 合掌をした後、管弦楽は背筋を正した状態で、箸の先の部分に白米をわずかにのせながら、それを口に運んで、じっくりとかみ締めるように咀嚼した。
「………」
 ずず、と味噌汁をすすり、皿に盛られた肉野菜炒めに箸をつける。その所作、なかなか躾が行き届いているが、京子は普段の管弦楽の言動と佇まいから思い当たるところもあった。
「おかわりは?」
「いただきます」
 空になった茶碗を両手で差し出す管弦楽からそれを受け取り、京子は嬉しそうに二杯目を盛る。やはり、山のように。
「………」
 再び行儀よく箸を動かす管弦楽。その様子を、京子は隣で頬杖をついて、じぃ、と眺めていた。


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