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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『STRIKE!!』(全9話)-128

 ぽこ…

 8番打者の長谷川がアウトになった。これで9回の表は攻撃終了。
 3−2と再逆転に成功した城二大は、星海大の最後の攻撃を迎えることになる。
「いけるんだな?」
 グラブを持ちベンチを立って、もう一度、彼女に聞く長見。
 エレナは泣きそうな顔ではあったが、力強く頷いていた。



「主将! 笹本さん! 小柳さん! 何とか……何とか、オレまで廻してくれ! 絶対に、絶対に取り返して見せるから!!」
 ベンチに帰るなり渚は、必死の形相で9回裏の打席に立つ3人に懇願した。このうち、誰かひとりでも出塁すれば、3番の渚に廻る。そして、その自分もなんとか塁に出れば、最も頼りになる4番・悟に繋ぐことができる。7回、一時は逆転したその舞台を演出した二人だ。
 美作も、笹本も、小柳も……何も言わずに頷いた。今日の試合、絶対に負けるわけにはいかないから。
「安心しろ。石にかじりついてでも、なんとかする」
 まずは9番の美作が、打席に向かった。今日のこれまでの成績は、2打数2三振。晶の速球にまったく手が出せないでいる。
 この打席も……信念と、執念をもって臨んだこの打席も、彼は追い込まれてから、ファウルを二球放つ粘りを見せたが、食い込むような内角の速球に、虚しく空振り三振に倒れた。
「………」
 悲痛な面持ちで帰ってきた主将を、どうして責められようか。渚は、“まだ一死、まだ一死”と声をかけ、奮起を促す。それに慰められたように、美作は声を振り絞って、1番の笹本に声援を送った。
「なんとか、転がしてやる……」
 3打数2三振の笹本だが、第2打席では晶の速球をバットにあてている。平凡な内野フライだったので自慢の脚力を披露できなかったが、転がすことができれば、その俊足で一塁を駆け抜ける自信はある。
 初球にセーフティバントを試みた。しかし、手元でグンと伸びる晶の速球に押され、三塁側ファウルゾーンへの小フライとなってしまった。
「く……」
 直樹がそれを追う。際どい距離を残していたが、飛びつくようにして差し出した彼のグラブに、ボールは吸い込まれていた。
 これで二死。いよいよ、追い詰められた。それでも渚は、自分に打席が廻ってくることを信じてウェイティングサークルで待つ。素振りを何度も繰り返し、晶の速球を弾き返すビジョンを思い起こしながら…。
 小柳が打席に立った。彼もまた、これまで2三振を取られている。それでも相手バッテリーは、容赦なく内角を鋭く抉ってくるようなストレートで攻めたててきた。
 今このバッテリーに、慢心というものは微塵も感じられない。7回の不覚が相当効いたのだろう。
(オレまで……なんとか、オレまで……)
 渚の必死な願いと祈り。それは…届かなかった。
「ストライク!!! バッターアウト!!!」
 追い込まれて、それでも何とかしようと必死に繰り出した小柳のバットが、空を切っていたのだ。
「ゲームセット!!!」
 その瞬間、前期・最終戦となる城二大対星海大の1点を争う緊迫した試合は、3−2のスコアを残し、城南第二大学の勝利で終わった。





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