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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『STRIKE!!』(全9話)-127

 ゴツンッ!

「おぉっ!!」
 全ての視線が、空を見る。アッパースイングによって捕らえられた打球が、高々と青空に舞い上がっていたからだ。
 それは、レフトのポール際にぐんぐんと伸びていく。しかし、体を開いて打ったこともあり、どんどんと左の方へ…ファウルゾーンへも切れていく。
「はいれ!」
「きれろ!」
 城二大のベンチと、星海大のベンチの願いが交錯し、互いに望む結果を声にして挙げた瞬間……。
「あ」
 こん、と…白球が、黄色いポールに当たって跳ねた。
 それを確かめてから、塁審の腕がぐるりと回転した。ホームランを伝える合図だ。
「うおぉぉぉ!!!」
 城二大のベンチは、狂喜乱舞。
「……………」
 星海大のベンチは、茫然自失。
 グラウンドをはさんで、あまりに対照的な想いが交錯する中、エレナは塁を廻る。
(………)
 少し、遅めのランニングとなっているのは、本塁打の余韻に浸っているとかそういうのではなくて、今になって、バットで打たれた臀部がじんじんと痛みだしたからだ。
 亮がホームイン。そしてエレナも、尻を庇いながらゆっくりと還ってきた。
 スコアボード…9回の表に“2”の数字。エレナの、逆転2点本塁打。相手4番打者のお株を奪うような劇的アーチ。
 ベンチに戻ってきたエレナを、皆が歓声と喜色を交えて待っていた。
「ナイスや! ナイスや!! ナイスやぁ!!!」
 赤木がとことん吼えて、エレナとハイタッチを交わす。その余勢をかい、プロ野球選手がよくするように、右手でエレナの臀部を軽く叩いた。
「O,OUCH!!」
 途端に、エレナの顔が苦痛に歪んだ。海老のように背筋がそって、そのままの状態で尻に両手をあててぶるぶる震えている。見ると、今にも泣きそうなぐらい目が充血しているではないか。
 その痛ましいまでのエレナの様子に、ベンチを包んでいた歓声がかすかにやんだ。
「え、ワイ……そんなに」
 目いっぱい、叩いとらんのに。右手を思わず凝視する赤木。
「あー。赤木、セクハラ」
「泣かしたな、赤木」
「え、え、え、え……ちょ、ちょいまち……」
「あ〜か〜ぎ〜!!!」
 瞬間、ネクストバッターであるはずの原田が、憤怒の形相でバットを上段に構え、唐竹割のごとく赤木の頭に振り下ろしていた……が、それは、後ろから上島によって羽交い絞めにされたことで未遂に終わった。―――くわばら、くわばら。


「エレナ、座らねえのか?」
 長見は、ベンチの脇に立ったままのエレナに聞く。エレナは、首を振るだけで何も応えない。しきりに、臀部を撫でさすっている。痛くて、たまらないらしい。
 歯を食いしばってその痛みに耐えているから、喋ることもしないエレナ。
「………」
 その原因が、同意の上とはいえ自分にあるだけに、少し罪悪感が沸く長見であった。
「エレナ、ありがとうな」
 罪滅ぼし、というわけではないが、長見は謝辞を述べる。チームの信頼に応えてくれたこと。チームの危機を救ってくれたこと。全てをその肩に担って、それでも必死に跳ね返してくれたこと。長見は、それらがたまらなく嬉しかった。エレナの強さと大きさが、本当に眩しく思えた。
 最愛のひとに“ありがとう”と言われ、エレナは微笑む。しかし、相変わらず言葉が出てこない。なにか、必死になって、苦痛に抗っているように映る。……実際、そうなのだが。
(なあ……ケツ、大丈夫か?)
 小さな声での長見の問いに、エレナが弱々しく首を振った。
(どうする? 事情話して、代わってもらうか?)
 残る9回裏が終了すれば、何が起こっても試合は完全に終わる。だから、おそらくエレナに打席の巡る確立がほとんどなくなったいま、ベンチに下がっても問題はないように思った。
(………)
 だが、これにもエレナは首を振った。最後まで、グラウンドに立つ気でいるらしい。



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