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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『STRIKE!!』(全9話)-123

 7回を終了して、1−2。しかも、晶がまさかの逆転2点本塁打を喫したということが、城二大の面々にとてつもないショックを与えた。
「………」
 ベンチのムードは消沈している。あの赤木でさえも、声をなくし、8回表の先頭打者・長見の打席を見つめているだけだった。
 その長見は、三球三振でアウトに取られてしまった。
「“日没”か?」
「全部ッス」
 直樹の問いに頷く長見。1番の役割をまっとうできず、心底悔しそうに、荒々しくベンチに座り込む。
「………」
 いつもなら、エレナの陽気な声が迎えてくれるのに、彼女はやはり元気がないままだ。
(ちっ)
 そんな彼女に甘えている自分を見つけて、ますます腹立たしい。挽回しようにも、おそらく自分の打席に廻る可能性も低い。負の感情は、袋小路をさまようばかりだった。
「ストライク!!! バッターアウト!!」
 2番の斉木も成すすべなく、三振に倒れた。“日没ボール”の変化についていけず、試みたバントもかすることはなく凡退してしまったのだ。
 直樹が、打席に入る。とにかく出塁し、打点能力の高い亮とエレナに廻さなければならない。
 初球が来た。それは、浮き上がってくる“日の出ボール”。
「っ」
 振りかかっていた直樹はバットを止めた。彼の頭の中には、“日没ボール”しか入っていなかったようだ。
「ストライク!」
 ストライクゾーンをかすめたようで、審判の手が高々と挙がる。
 二球目。先ほどと同じストレートが内角に。
「ストライク!!」
 浮きも沈みもしない普通のストレート。なのに、直樹は手が出なかった。
 三球目。やはり、似たような直球が投じられた。頭の中で整理のついていない直樹はとにかくそれでも振る。
 途中でストレートが失速し、逃げていく。直樹のバットは必死に喰らいつこうとするが…、
「ストライク!!! バッターアウト!!!」
 振ったバットは虚しく空を切るだけだった。
 三者連続三球三振。上位打線による攻撃だったにも関わらず、チャンスの足がかりさえできないまま8回表が終了してしまった。
 追い詰められた雰囲気は、ますます城二大の空気を重くしていた。



 8回の裏。下位打線となる星海大の攻撃は、晶の前に手も足も出ず、わずか9球で終了(三者連続三球三振)。
 ラストイニング、9回の攻防が始まる。この回で1点も取れなければ、城二大は敗北。勝ち点を得ることができないばかりか、総合優勝への道のりさえ険しいものとなる。
 それを知っているベンチの中は、これまでにない緊張感とかすかな絶望感に包まれていた。そしてそれは、同じような状況で劣勢になっていた櫻陽大との試合にはなかったものだ。
 やはり、成績がまだ見えてこない初戦と、ある程度の動向がはっきりしてくる前期最終戦との違いであろうか。
「長見君」
 ベンチに戻りかけた長見を呼び止めたのは、亮だ。
「木戸、なんだ?」
 次の先頭打者は亮である。プロテクターとレガースを少しだけゆっくりと外しながら、亮は話を続けた。
「エレナの調子を戻しておいてくれ」
「なんだって?」
 意味がよくわからない。
「頼んだ」
「頼んだって……おい……?」
 ベンチの中にさがる亮を追いかけようとしたところで、ちょいちょいと袖を引っ張られる。見ると、エレナがそこにいた。相変わらず、顔色は冴えない。
「あ、どうした?」
“調子を戻しておいてくれ” …亮の言葉が頭を廻る。
「ちょっと、いいですか?」
「でも、おまえ、次のバッター……」
「監督さんとキャプテンさんとキドさんには、お時間をもらいましたので……」
「時間って……」
「いいですか?」
 すがるような青い瞳。
「わ、わかった……」
 長見は頷くより他はなかった。





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