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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『STRIKE!!』(全9話)-124

 取りあえず、ベンチ裏に。あまり時間はないだろうから、手短にしなければ。なにしろ、いま打席にいる亮の次の打者は、目の前にいるエレナなのだから。
 メットを被り、バットを手にしている彼女を前に、しかし、いうべき言葉を見つけられない自分を不甲斐なく思う。
「エイスケ、ごめんなさい」
 あうあうと言葉を捜していた長見に、エレナが頭をさげた。
「………」
「わたし、甘えていました。PERSOMAL EMOTIONに揺れて、大事な試合に臨んでいる皆さんにご迷惑をかけてしまいました」
「個人的な感情……」
 ひょっとして、3日間、放っておかれたことに拗ねていたのか。
「それが、幼稚でわがままなことだって、心ではわかっているつもりだったんですけど……」
 せめぎあう複雑な感情に呑まれ、ぐちゃぐちゃになっていた。そういうことらしい。
「……あー」
 長見は、一言。
「打て」
 とだけ、言葉を与えた。
“エレナのせいじゃない”“俺が悪いんだ”とか“仕方ねえよ”など、いろいろ言いたいことは頭を巡ったが、なぜか口から出たのはその一言だった。
「WHAT?」
「木戸はきっと、塁に出る。それをエレナが還すんだ。それで俺たちを勝たせてくれ」
「………」
「エレナ、頼りにしている。……信じている。だから、打ってくれ」
「………」
 エレナの瞳に光が宿った。その顔に、微笑が戻る。どうやら、元気が湧き出してきたらしい。
 ふいに、す、とバットを差し出してきた。長見は自然にそれを受け取る。その真意を知らないままに。
「気合をください」
「?」
 エレナがくるりと後ろを向くと、壁に両手をついてそのダイナマイトヒップを軽く持ち上げた。
「な、な、なにやってんの?」
 状況が状況だというのに。いきなり目に飛び込んできた豊かな出っ張りに、頭が混乱する。
「ください、気合を。そのバットで」
 エレナが繰り返した。
「キアイ? バットデ? ドウヤッテ?」
 長見がバットに視線を落とす。次いで、張り出たヒップにも。
 しばしの間。そして、長見の演算機が回答をはじき出した。
「ケ、ケツバットか!?」
 このバットで、エレナのぷりぷりしたお尻を打つ。いわゆる“ケツバット”。
「お、お、お、おい、正気か!?」
「? 日本では、気合を入れるためのTRADITIONAL CEREMONYだと聞いてますが?」
「トラ……」
 いつから伝統儀式になったのか。
 といより、これは悪しき伝統に近い。よい子は真似しちゃいけないと注意書きをされるぐらいの。長見は、そんなことを矢継ぎ早に並べ立てたのだが、
「HURRY UP!」
 エレナは後にひかない。どうあっても、この方法で気合が欲しいらしい。
「………」
 時間がない。長見は、バットを構えた。とにかく、やるしかないらしい。
「い、いくぞ……」
 ごく、となぜか喉を鳴らし、長見は軽くバットを繰り出した。


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