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impertinent teachar&student
【学園物 恋愛小説】

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impertinent teachar&student−5-1

彼女と出会ったのは、5年前の夏だった。


『あなた、熱心ねぇ』
その声にビックリして顔を上げる。
目の前には、ここの職員が立っていた。

ここは大学の図書館。
俺はレポートや勉強する為に、ほぼ毎日ここに来ていた。
5、6人ほどいる職員の中でも1番若いその女性−相葉美雪が声をかけてきた。
『いや…そんなことないっすよ』
再び、視線をテキストに戻す。
『そんなことあるって!君、いつも来てるじゃない?5月ぐらいからいるよねぇ』
『まぁ…』
『そっかぁ〜頑張ってね』
そう言って、彼女は持っていた本を、所定の位置に戻し始めた。

それからというもの、俺が行ったら彼女は必ずいた。
たまに休みでいないときもあったが、平日なら会えた。
挨拶するのは勿論、短い会話さえするようになっていた。
いつしか、俺は勉強だけでなく彼女を目的に図書館に行くようになった。
毎日交わされる会話は、最初こそ小さな情報だったが、次第にいろんなことを知るようになった。
彼女は、相葉美雪という名であること。
俺より5歳年上であること。
彼氏はいないということ。
弁護士を目指しているということ。
一人暮しであるということ。
そんな身の回りの話さえするようになっていた。

そして、ある秋の日のことだった。




『やだぁ…雨降ってきちゃった』
そう呟いたのは、相葉さんだった。
『あ、ほんとだ…』
昼までは、綺麗な秋晴れの空だったのに、今はそんなことを微塵にも感じさせない暗い空。
図書館には、見渡す限り、利用者は俺しかいなかった。
『どうしよ…傘持ってない…』
ぼそっと、俺の近くで呟く。
『傘…貸しましょうか?』
『あ、いいよ!ここにあるのを借りるから!』
そう言って、いつも彼女がいる定位置のカウンターに戻っていた。
それを視線で追う。戻ったことを確認した俺は、再びテキストに視線を戻した。
そうこうしてる内に、雨足は強くなるばかりだった。
しばらくすると、彼女は俺に近づいて来た。
『ねぇ…やっぱり、傘貸してくれないかなぁ』
申し訳なさそうに頼む。
『いいですよ。確か鞄の中に…』
俺はいつも使っているポーターの鞄の中を探す。
『…もしかして、ないの?』
『…はい』
情けない。この日に限って、傘を忘れてしまった。
すると、彼女は笑い出した。
『いや…ごめんね。君みたいにしっかりしてそうな子が、そんな事するもんだから…つい。気を悪くしたなら、ごめんなさいね』
『いえ…気にしてませんよ』
正直、笑われることには抵抗があった。
だけど、彼女の笑いは何故か俺を、ほっとさせるものもあった。
『じゃ…うちに来ます?』
気付いたらそんなことを言っていた。
彼女は少し驚いたような表情で俺を見る。
『いや、その…俺ん家、すぐそこなんですよ。で、うちに帰ったら車で送りますよ。』
慌てて、早口で言う。
『じゃ…お願いしちゃおうかな』
彼女は、すんなりOKしてくれた。
彼女が帰る準備をしてる間、俺は家の中の状態を思い出していた。
大丈夫。掃除は、今日の朝してきたし、ご飯も買ってある。
そうこうして考えてる内に彼女は、やって来た。
『ごめん!お世話になる上に、待たせちゃって』
申し訳なさそうに謝る。
さっきは俺が座っていたから、気付かなかったが、俺の隣に立った彼女は、意外と小柄であった。
視線は俺を見上げる形になっていた。
『いいですよ。ただここから走って頂きますが』
『うん。頑張る。』
そうして、俺達は急いで家に向かうことにした。


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