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紅館の花達
【ファンタジー 官能小説】

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紅館〜白い騎士〜-6

それからの毎日は実に楽しい毎日だった。
私は朝昼晩の食事の時に姫に会い、話をした。
姫は、来世にならなければ貴方とこんな風にお話しを出来るとは思ってませんでした、と話し、私のしょうもない話で良く笑ってくだされた。
だが、私には一つ気掛かりがあった。
姫は私と会っている時は笑顔なのだが、一人の時は悲しげで、時には辛そうな表情をしていたのだ。
そのたび私が大丈夫ですか?と聞いても、すぐ笑顔に戻り大丈夫とだけ言っていた。
やはり地下なのが駄目だろうか?と思っていたが、ある朝、私は理由を知った。

その日の朝、私は紅様に呼ばれて白竜館に行った。
だが、紅様の部屋にはアルネしか居なかった。
『アルネ殿、紅様はどこにいらっしゃるか知りませんか?』
起きたばかりだったようで、眠たそうに目を擦りながらアルネは、たぶん地下、とだけ言っていた。
そういえば、お妃様が居る地下に行くのは初めてだな…
階段を降りてみるとお妃様の部屋から話声が聞こえた。
やはりここに居るようだ。
『紅様、ご用で…』
『紅様、クリスの病状はどうですか?』
私の声はお妃様の声でかき消された。
(今なんと…? 姫がご病気?)
私はそのまま黙って部屋に近付き、聞耳を立てた。
『…良くないね…
日に日に弱っていく。』
『…まさかクリスが…どこの誰とも知れない輩に…犯されたなんて…』
(!?)
『あぁ…看守が姫を…
だが、そいつの始末はつけた。 鉄の処女に抱かれたよ。
だが、強姦されたことで姫の心は深く傷付いて心を病んでしまった…あの病は私でも治せない…治せるのは愛ある交わりで忌々しい記憶を消しさることくらい…
それが出来なければ、姫はやがて衰弱して、死んでしまう…』
『クリス…あぁ、大事な純潔を奪われて…不憫な…母が代わってやりたかった…』
(姫様が犯された?
姫様が…死ぬ?)
私の中で、何かが崩れた…
その後、どうやって自分の部屋に戻ったのかは知らない。ただ、私は今自分のベットに倒れこんでいる。
(…姫…)
ショックだった。
私は、姫を救えたと思っていた。
だが、実際姫は牢獄の中で傷付けられた…そして、今もなお傷は深く、姫を苦しめている。
(あの辛い表情には、あんな理由があったのか…)
コンコン…
ノックだ…仕方なく起き上がり、ドアを開く。
『ハイネルシス、遅いじゃないか。』
紅様だった。
『紅様…申し訳ありません…』
『ん、まぁ、良いよ。 馬車の用意をしてくれないかな?
ちょっと出かけるから。』
私はかしこまりましたとだけ言うと、馬小屋へ向かった。
だが、私は心ここにあらずといった感じで、自分で何をやったか覚えていない…
気付いたら、空は闇に覆われていた。
(暗闇…)
自分の今の心に似た、暗い空…
『! しまった! 姫に食事を運ばないと…』
いつもなら一時間ほど前に運ぶのだが、忘れていた。
急いで食堂に走っていき、食事を貰うとすぐに地下に降りていった。
『申し訳ありません姫!
お夕食です!』
姫の部屋に駆け込むと姫はムクリと起き上がった。
『あら…ありがとう、ハイネルシス。
大丈夫です、寝ていたので…』
ベットから机に移り、食事を食べ始める。
『………』
見た感じでは、とても病気とは思えない。
確かに顔色が良いとは言えないが…
『…ハイネルシス。』
『は、はい。 なんでしょうか…?』
姫はナイフとフォークを置いた。
『今日は食欲が無くて…もう結構です…下げてください…』
見ると、ほとんどが残っていた。
『姫…』
『…少し、寒いですね…』
姫は震えていた。
唇が少し青く、先程とは打ってかわって、とても弱々しくみえた。
『姫…』
少しでも暖かくしようと、私は自分が来ている上着を一枚脱ぎ、姫の肩にかけた。
『ハイネルシス…』
姫の手が、私の手を掴む。
『貴方の手…暖かい…』
そっと私の手を取り、自分の頬に当てた。
(冷たい…)
なんて冷たいのだろう…
ギュッ………
『は、ハイネルシス?』
私は…姫を抱き締めていた。
後ろから、そっと暖めるように。
『姫…』
姫は最初は戸惑っていたが、やがて私に寄りかかってきた。

愛のある交わりなら癒せる…

紅様の言葉が頭によぎる。
(…姫…)
今なら、言える。 ずっと打ち明けたかった気持ち…
『姫…私は…貴方をずっとお慕いしております…』
『ハイネルシス…』
姫は私の言葉を聞くと、抱擁から逃れた。
(…やはり、高望みだったか…)
私から離れて、呼吸を整えているようだ。
肩が上下し、やがて姫は振り返った。
『…私も貴方が好きです、ハイネルシス。』
そして、姫は私を抱き締めた。
『ひ、姫…』
ドレス越しに姫の胸が感じられ、顔が赤くなる。
『ハイネルシス…聞いて。
私は牢獄で看守に襲われました…
純潔を…奪われました…』
姫は私の胸の中でポツリと呟いた。
『………』
『汚れてしまいました…
でも、どうか、こんな私で良ければ…抱いて…ハイネルシス。
私を愛して…一度だけで良いから、愛する人に抱かれたいの…』
姫の涙が私の胸を濡らした…
肩を震わせて泣く姫を私はそっと抱き締める。
『…姫…』
そして、姫の顎に手をあてて上を向かせる。
『…愛しております…』


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