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紅館の花達
【ファンタジー 官能小説】

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紅館〜白い騎士〜-5

紅館の門で私と紅様は姫様達の到着を待った。
『もうそろそろ来るはずだけど………あぁ、あれだ。』
馬車が一台、通りを走ってきた。
紅館の前に止まった馬車かは一人の男が降りてきて、紅様と話しだした。
二三言話し、書類にサインを済ませると男は馬車の扉を開けた。
そして中からお妃様と姫様が降りてきた。
私は思わず跪く。
『……お妃様、姫様…』 
『ハイネルシス…顔を上げなさい…
紅様より聞きました。 貴方が私と姫のために働いてくれたと…』
『…お妃様と姫様のために働くことは、ハイネルシスにとっては当然のことにございます…』
姫様達を降ろした男は紅様に挨拶をした後、再び馬車に乗り去っていった。
『まぁ、三人供。 とりあえず中に入ろう。』
紅様に言われるまま、私達は紅館に入っていく。

『さて、残念だけどあまり良い待遇が出来ない…
早速だけど、ハイネルシス。 姫を部屋に案内してくれ。』
門を過ぎ、火竜館の前に来ると紅様が口を開いた。
『いえ、紅様のお陰で私も姫も不安から解放されました…
…それにしても、変わってませんわね…ここは…』
お妃様は火竜館を見上げてポツリと呟いた。
『まぁ…ね。 じゃ、ハイネルシス。 姫をよろしく。』
紅様はお妃様と二人で火竜館に入っていく…
『では、姫様、行きましょう…』
姫にそう声かけると、姫は歩き出す。
だが、何故か姫は無言のままだ。
水竜館に入り、階段を降りて地下に着いた。
『…まぁ………』
部屋を見た姫は初めて声を出した。
『…お気に召しましたでしょうか…?』
『えぇ…こんな…まるで普通の部屋、牢とは思えません…
これもハイネルシスが?』
机にあった花を手に取り匂いをかいだ。
『はい、白いお花がお好きだと思いまして。』
『…ありがとう、ハイネルシス。
私、嬉しかったです。 もう貴方に会えないと思って、牢の中ではただ神に祈る毎日でした。
そんな時、貴方が魔物討伐で功績を上げ私やお母様を牢獄から救いだしてくれました…
顔を上げて、ハイネルシス。』
顔を上げて、姫を見る。
(…おやつれになられた…)
牢獄は想像以上なのだろう。姫の顔は痩せていて、手も折れそうなくらい細かった。
だが…美しさだけは変わらなかった…
『…牢獄から解放されましたのは紅様のお力です。
私は少ししかお力になれませんでした…』
『いいえ、ハイネルシス。
大公爵殿も仰ってましたわ。 私でも死刑の人間を救うのは難しい。 彼が終身刑まで減刑したから出来たのだ。 と。
でも…』
姫は私に近付いて来た。
目には涙が浮かんでいる…
『でも…そのせいで、貴方が…大怪我を負ったと…
片目を失ったと…』
姫の涙は…私の傷を思ってのことだった。
姫は手を伸ばし、私の頬を撫でる。冷たく、ひえた手が頬に感じられた。
『…姫、元気を出してください。
私は姫が元気で居て下されば満足なのです、体がどうなろうと、構わないのです。』
冷たい姫の手を取り、両手で包む。暖めるように優しく。
『紅様より、貴方のお部屋番の仕事を貰えました。
何かありましたら申し付け下さい。 夕食の時にまた来ます。』
跪き、そっと姫の手の甲にキスをして、部屋を出た。

………食堂。
『………見て、ハイネルシスが…………』
『あの顔………何かあったのかしら………』
私は食堂で椅子に座りしばし放心していた。
(姫…またお会いできた…)
そんな幸せで胸が一杯だった私は姫に夕食を運ぶまでずーっとポケーっとしたままだった…

『美味しいですわ…』
夕食を差上げると、姫は美味しそうに召し上がった。
『久しぶりに美味しい食事を頂きました…
ハイネルシス、料理長さんにお礼を言っておいて下さい…』
『はい。 かしこまりました、姫。』
食器を片付けようと、姫に近付いたが、姫は何故か悲しそうな表情をしていた。
『どうか致しましたか? 姫?』
『ハイネルシス…私を姫と呼ぶのは止めて下さい。
もう王国はありません…私は姫では無いのですから、クリスと呼んで下さい。』
(な!? そ、それは…)
長い間、姫と呼んで仕えていたのを急に変えるのは難しかった…
『…えと…では、クリス様…で良いでしょうか?』
『…まだ様がついていますが、良いです。
と言うよりも、もういちいち私に許可を求める必要もありません、貴方の今の主人は大公爵殿です。』
確かにそうなのだが…やはり、私の中では姫様は姫様なのだ…


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