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紅館の花達
【ファンタジー 官能小説】

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紅館の花達-4

『あの・・・私の身分には不釣り合いなのでは・・・』
馬小屋が精々と聞いていた私には、この部屋は衝撃だった。
『嫌なら、もっと格を下げた部屋を用意するけど、この部屋は嫌? シャナ?』
ゾクリとした感覚が全身に走る。紅様は耳元で囁いているのだ。
『い、嫌じゃ・・・ないです。』
多分私の頬は赤みが差しているだろう。血が、カーッと駆け上がってくる気がした。
『じゃあ、ここで良いね。 夕食は7時だから、その時間になったら火竜館の一階に来るように。』
そう言い残して、紅様は部屋を出ていった。
『・・・はふ〜』
緊張が解けて、ベットに倒れこむ・・・

ウェザがシャナの部屋を出ると、アルネが待っていた。どこか、咎めるような表情で。
『・・・溺愛ですね、大公爵様?』
そう言われたウェザは何も言わずに歩き出す。
『今まであなたのお側で数々の奴隷として買った女性を見てきましたが、初めてですね。 一日目にしてキスをなさるとは。』
溜め息を吐いた後にウェザが口を開く。
『駄目か? 買った奴隷に主人がキスをするのが?』
まったくの無表情でさらに歩き続ける。
『キスは駄目と言うわけではありません。 ですが、嘘はいけません。 紅様。』
アルネは小走りにウェザを追い越し、そして振り返り、ウェザを見つめる。
『やはり、似ているからですか? あれから100年、予言通りですね。』
・・・ウェザの表情は変わらない。何も言わず、何も伝えずにアルネを置いて先に歩いていく。
『あの子は何も知らないのですよ。 あなたが自分の延長線の先ばかり見ていることに、いずれ気が付きます。』
ウェザの猫耳がピクリと反応した。
『・・・私の愛を受けて良いのは、ただ一人、だ。 100年前にも言っただろう。』

その言葉を聞いたアルネは怒りながら叫ぶ。
『あなたはあなたのためだけに、あの子を犠牲になさるのですか!?』
ウェザは動じなかった。ただ一言。『100年前の通りだ。』とだけ言うと、去って行った。

6時30分、紅様に言われた夕食の時間の30分前になったので、私は行く準備を始めた。
そもそも、今の私は紅様の羽尾っていた赤いローブ一枚で、その下には何も着ていないのだ。
部屋にあるクローゼットを開き、中を見るとそこには綺麗な服やドレスが。主に白い色のが多い。
その中から、白いワンピースを取り出し、着てみる。
『・・・ピッタリ。』
サイズは完璧に合っていた。バストからヒップまでキツ過ぎず、かといって妙にダボつかない感じ。
『まるでキチンと採寸されたみたい・・・』
自分では、そんな覚えはなかった。だが、もしかしたら商人に捕まった時に測られ、それが買手に伝わっていたのかも知れない。
(でも、変だわ。 この服はなんだか古い感じがする。 最近作られた服じゃないような・・・)
だが、考えてもきりがない。シャナはとりあえず部屋を出て、火竜館に向かった。
(食事のあとにでも紅様に聞いてみましょう。)

火竜館は全体的に家具が赤色で統一されていた、その一階に、100人は楽に収納出来る食堂があった。
今は、メイド達が食事に使う皿やナイフなどを並べていた。
(まだちょっと早かったかしら。)
メイド達の邪魔をしないように、廊下をブラブラと歩いて行く。

しばらく辺りを見回っていると、廊下に石膏像を発見した。
白い石膏で出来た女性の像。 私の目は石膏像を凝視した。
『・・・私?』
その石膏像は私に良く似ていた。ただ一つ、髪が長いことを除いて。
やはりこの館、どこか変。私に似た像、私にピッタリの服。偶然なのだろうか?少し怖くなってきた。
『シャナさん、どうかしたかしら?』
声をかけられ振り向くと、アルネが歩いてきた。
『アルネさん・・・ちょっとこの像を見ていたのです。』
アルネは私に似た像を見たが、別にどうということもない、とした表情をしていた。
『この像は紅様が昔作った物よ。 何体も作っていたから、いろんな姿があるわ。 あなたが今着ている服も、昔誰かが着ていたやつよ。 ここでは服を使い回すことがたまにあるから。』
私が抱いていた疑問に全て回答が返ってきた。そしてアルネは、そろそろ夕食の準備が出来たから食堂に行きなさい、と私に教えてくれた。
『わかりました。 では、食堂に行ってます。』
私はアルネに一礼してから、元来た道を戻っていった。
『・・・。』
シャナが去った後、アルネは改めて石膏像を見ていた。だがその眼差しは先程とは違い、敬愛と、哀しみが混じっている。
そして、片膝を付き、深くと頭を下げ、数秒祈るかのように目を瞑り、沈黙する。
やがて目を開け、立ち上がり食堂へと歩いて行く。その時はもう先程のような哀しい表情は無くなっていた。


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