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紅館の花達
【ファンタジー 官能小説】

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紅館の花達-3

『言い忘れたな、私の名はウェザ。 正式にはウェザ=リスタンス=ウィズフライト。 呼び方はウェザ様かご主人様か、あるいは紅様と呼んでくれ。』
そう言いながら、紅様は私の左手の甲に自分の手を重ねる。
『これから君の手に魔法の刻印をする。 だが、この刻印の効力は君を襲おうとする奴を焼き殺すというものだ。 君にはただの刺青と同じ・・・』
紅様の手が離れた時には、手の甲に赤い紋章が現れていた。綺麗な花の紋章だった。
『さて、私の館に帰ろう。』
紅様は来る時と同じように私を抱きかかえ、控室を出た。
(間違いないわ・・・この人が紅館の主人なんだわ・・・)

外ではアルネが馬車の前で待っていた。ただ馬車と言っても、私が乗せられてきた荷馬車とは違い。よくお城の舞踏会に使うような上品な馬車だ。
紅様は馬車に乗り込み。私を抱きかかえたまま座る。私はちょうど紅様の膝の上に座っていることになる。
アルネも乗り込み、馬車が動きだす。紅様はまた私の髪を撫で始める。
『もう大丈夫だ。』
優しい微笑み。さらに、微笑みと同じくらい優しい手付きと衣服越しに伝わる温かさで、いつの間にか私は紅様の胸の中で泣いていた。


数分間の沈黙の後で紅様が口を開いた。
『とりあえず屋敷に到着する前に簡単に説明しておこう。 まず、屋敷は4つに分かれている。 入り口正面にある赤い色の屋根の屋敷がある、名を火竜館、主に来客などの接待に使う館。 入り口入って右にあるのは青い屋根の水竜館、メイド達、女の使用人の住む館だ。 今は50人ほど居る。 ここまで、わかった?』
私は屋敷の名前を復唱してから頷いた。
『入り口入って左は黒竜館、屋根は黒色で、男の使用人が使う。 今は最低限の人数しかいない。 10人くらいだ。』
10人・・・その数を聞いて、私は疑問が浮かんだ。そして、それは表情にも出ていたようで、紅様が首を傾げている。
『何か疑問でも?』
そう聞かれて、私は素直に答えた。
『男の方が少ないんですね・・・』
私の言葉で、今度は紅様が疑問を持ったようだ。
『別に、普通ではないか? そんなに人数要らないだろう。』
『いえ、紅様は男色の方と聞いていたので・・・』
私の言葉で紅様が固まる。ちらりと横を見ると、アルネが声を殺して笑っていた。
『ん・・・ん〜、一体誰がそんな嘘を?』
紅様、頬に汗が流れてる。実際、男色だと聞いたわけではないが、女性に興味が無いなら男性に。 なのだろうと勝手に考えていたのだ。
『いえ、女は愛さないって聞いたので・・・』
ガク〜と、紅様の力が抜けたのがわかった。
『んな、私だって女を愛すし、抱くことだってある。 ただ、そんなことを公にしないだけだ。』
紅様が、はぁ、と溜め息を吐いた。それから、急に真面目な表情に戻り、一言。
『なんなら、シャナで証明しようか?』
私がその言葉の意味を理解する前に、紅様の唇が私の唇に重なる。
『ん! んぅ!』
突然のことに、私は一瞬思考が停止してしまった。
だが、紅様の唇は二、三度軽くキスをしただけで離れる。
『わかった?』
『は、はい、はいわかりました!』
早口になりながら、答える。
(キ、キスって・・・こういうものなの・・・)
キスなんて、初めてだった。された瞬間にゾクゾクとした感覚が背筋を撫でて・・・少し心地よかった。
『・・・本当はもっとしたいけどね。 自分で付けた刻印が邪魔するから出来ない。』
あ、そうだった。私の手の甲にある紋章。私が嫌がれば、紅様も対象になるのだ。
『・・・でも、今のはそれほど嫌じゃなかったみたいだな。 発動しなかったということは♪』
紅様は嬉しそうに微笑む。

『で、でも、驚きました。 キスなんて初めてで・・・』
ちょっと戸惑う私の目を、じっと見つめてくる紅様。
『ごめん、ちょっと調子に乗ってた・・・』
紅様は優しく髪を撫でてくれた。
(確かに、嫌じゃなかったなぁ・・・)

しばらくして、馬車が止まった。屋敷に到着したのだ。
馬車を降りた私達は、そのまままっすぐ用意された私の部屋へ向かった。
そして、現在に至ったのだ。


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