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Cross Destiny
【ファンタジー その他小説】

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Cross Destiny
〜神竜の牙〜@
-21

驚愕する二人を余所にその少女は不敵な笑みを浮かべた。
そしてもう一匹のトロルがそれを見て怒り狂い、その少女に襲い掛かる。
するとその瞬間 トロルに閃光が走った。
少女の背後から現れた一人の青年の槍がトロルの心臓を瞬時に貫く。
「グオオオ」
トロルは仰向けに倒れ込み絶命した。
一人の少女と青年がトロル二匹を瞬殺した。その間僅か10秒。

アルスとフォルツは複雑な心境だった。あの堅い皮膚と筋肉に僅かながら苦戦したことを思いだしたからだ。
自分が通じなかった突き攻撃でトロルを倒した青年に
自分が通じなかった炎呪文でトロルを倒した少女に
アルスとフォルツは言い表せないような嫉妬心を抱いた。
そして同時にその二人組の実力を認めざるをえなかった。

青年がトロルの心臓から槍を抜き、血を払った。するとアルスとフォルツ、ルナの元に歩いてきた。
その青年は上半身だけ軽めの銀色の鎧を付け、その上から布をまとっていた。
そして鋭い眼光が印象的だった。
「ほう、貴様達も魔物に挑もうとしていたのか?」
その青年がアルス達に話し掛けた。
「あんた達に先を越されたけどな」
アルスが答える。
「すみません、でしゃばった真似をして」
炎の上位呪文を放った少女もこちらに向かってきた。
その少女はルナと同じくらいの歳のようだ。そして片手に星石の玉を持っていた。
【星石とは魔力の封じ込められた石でそれを身に付けていると呪文を使った時に威力を増幅させる効果がある、フォルツは杖の先に取り付けて使用している。
時々大地から発掘されるその石は 魔導士の武器とも言える石である。】
「君、見掛けによらず強力な呪文を扱うんだね?下位呪文とは言え俺の炎呪文は効かなかったよ」
フォルツがその少女に話し掛けた。
「それはあなたの呪文が弱すぎるだけですよ」
その少女はにっこりとしながら言った。
「な・ん・だ・と?このアマーーー。」
呪文が弱いと言われフォルツが激怒する。どうやら自分の呪文を馬鹿にされるのがフォルツの怒りのスイッチのようだ。
「落ち着けフォルツ」
アルスがフォルツをなだめる。
フォルツは腕を組んで後ろを向いてしまった。
「アシェル そのくらいにしておけ」
「レーヴェス・・・・何を?」
どうやら少女の名はアシェル
青年の名はレーヴェスのようだ。
「自分でも気付かずに相手を怒らせるのは悪い癖だ。」
レーヴェスがアシェルに説教をするとアシェルはシュンとする。
「おい、悪かったな」
レーヴェスは、フォルツが後ろを向いているのでアルスに謝罪した。
「いや気にしていない」
アルスは返した。
「気にしてるよ」
フォルツがボソっとつぶやく。
「あ、そっちの可愛い子も君達の仲間なの?」
アシェルはアルスとフォルツの後ろにいるルナを見て尋ねる。
「ああ、こいつはルナ。俺はアルス、このふくれてるやつがフォルツだ。」

ルナは軽くお辞儀をした
フォルツは相変わらず後ろを向いたままだ。
「アルスとフォルツ?」アシェルは名前について尋ねようとしたが。
「ああ!名前のツッコミはいらない!!」
とフォルツが振り返ってまで止めに入ったのでアシェルはそれ以上は聞かなかった。

その時
「わあああ」
と言う歓喜の声と共に町のはずれの方に非難していた町民達が一斉に押し寄せた。
「あんたらよく倒してくれたな」
町長が嬉しそうにアルス達に言った。
「俺達は何もしていない。やったのはこの二人だ」
アルスは親指でレーヴェスとアシェルをさす。
「いやあ、君達も戦おうとしてくれだんだろ?感謝するよ」
町長はアルスの肩を叩く。


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