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あたしにとってのふたり
【幼馴染 恋愛小説】

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あかね11才の決意-1

恋をすることが、こんなに苦しいなんて知らなかった。


好きな人がいつできたのかは覚えていない。 物心ついた時には、もうその人が好きだった。
あかねは、その人のことを「お兄ちゃん」と呼んでいる。物心つく前からずっと一緒にいたからそう呼び始めたんだと思う。その名残で、今もその呼び方は変わらない。

お兄ちゃんは小学校に入った時から、学校が終わるとウチに遊びに来るようになった。
家の事情があるから‥らしいんだけど、毎日のようにお兄ちゃんと遊べることが楽しかった。
あかねも小学校に入ると、登下校の時も一緒にいれるようになって、嬉しくて仕方なくてよく笑っていたのを覚えてる。

その頃のお兄ちゃんとお姉ちゃんは、よくいう「ケンカするほど仲が良い」ってやつで、しょっちゅう言い争いや取っ組み合いをしていた。
負けるのはいつもお姉ちゃんで、泣き虫のお姉ちゃんはよく泣いた。
今もそうなんだけど、あかねはお姉ちゃんが泣くとつられて泣いてしまう。
するとお兄ちゃんは、決まって申し訳なさそうな顔をしながらカチコチに固まって「あぅ‥‥あぅ‥‥」と変な声を洩らす。
そんな弱点に気付いたお姉ちゃんとあかねは、何度も共謀して嘘泣きした。
よく覚えてないんだけど一度だけ、それで逆にお兄ちゃんを泣かしたことがある。
あかねは、それがなんだか悲しくて泣いてしまった。お兄ちゃんが泣いているのを見て喜んでいたお姉ちゃんも、泣き虫の血が騒いだのかつられて泣き出してしまう。
何事かと飛んできたお母さんも、三人みんな泣いているなんて状況は初めてで、かなり戸惑ったらしい。


あの頃の思い出は、どれも自然と笑みがこぼれてきそうなものばかり。

感情をそのまま表せたあの頃‥‥
お兄ちゃんと結婚する、て何度も何度も口にできたあの頃‥‥


『お兄ちゃん、大好き。ぜったい結婚しようね』

あかねは機会を探しては、よくそんなことを言った。

『うん。俺、あかねと結婚できたら幸せだなぁ。』
『えへへ。』

『あかねも物好きだね。よくこんなやつと結婚するなんて言えるよ。あたしは絶対に無理。』

お姉ちゃんはこういう話にはあまり無関心で、たまにこうやってお兄ちゃんに突っかかっていった。

『む、‥‥こっちこそ、お前なんてお断りだよ』
『あかね、いい?こんなやつと結婚しちゃったら、“じんせーぼーにふる" よ?』
『なんだって?』
『なによ』

『や〜め〜て〜よ〜〜!ケンカしちゃ嫌だよ〜〜!』
自分のせいでふたりをケンカさせてしまった。そう思ったら涙が出てきた。

『ごっごめん、あかね!もうケンカやめるから!な?』
『うん、うん! もうしないから!』

『‥‥ほんとぅ?』

『ほんと、ほんと。だから‥‥な? 泣かないで?』
お兄ちゃんがあかねの頭を撫でる。
その時、一瞬、お姉ちゃんの顔が曇った気がした。
あの頃のあかねはそれがどういう意味なのか見当もつかなかったけど、今思えばその時にはもう、お姉ちゃんの心の変化は始まっていたのかもしれない。


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