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いつか、目の前に
【コメディ 恋愛小説】

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いつか、目の前に…… (疑惑)-1

「えー。俺が一年間お前等の担任をするはめになった。 中山空人だ」
黒板にでかでかと自身の名前を走り書きにする。
「ちなみに、俺は礼儀知らずが大嫌いだ。 よって、俺の事を『空ちゃん』だとか呼んだら女子だろうが男子だろうが容赦はしない」
空人の言葉は少しざわついた教室に響いた。
だが、ざわついているのは男子だけで。
女子は一様にポワァーンと空人を見ている。
確かに、エラく男前である。
ジャニーズ系ではなく、どちらかと言えばホスト系。
「ちなみに、担当教科は物理だ。 貴様等にも分かるように教えてやるつもりだが、付いてこれない落ち零れは容赦なく置き去りにする。分かったな。 では、何か質問のある奴?」
一斉に挙がる手、手、手。
「先生は独身ですか?」
「歳はいくつですか?」
「趣味は? 好物は?」
質問の乱射。
しかも、どれもガ学業に全く関係のない質問ばかりだ。
じょじょにエスカレートする女子。
じょじょに拳に力が入る空人。
「五月蠅い!! そんな質問には答えん!!」
教卓をバシンと殴り。怒りをあらわにする空人。
え〜、と言うブーイングを浴びせる女子。
そんな騒がしいさなか、俺はミナモの様子をそれとなく見た。
騒ぎには全く参加せず、ただただ窓の外を見ている。
だが、俺はその様子が少しおかしい事に気付いた。
普通、ぼんやり眺めるなら人間の目線というのは水平よりもやや斜め上を見るものだが、彼女は窓から地面の方をやや覗き込み加減に見ているのである。
確か、窓の下には幼等部の校舎があるはずだ。
私立愛聖大学には付属の、高等部、中等部、初等部、幼等部があり。 俺の通う高等部の敷地の中に幼等部の校舎があり、中等部と初等部は大通りを挟んで対面に位置している。
と、学校の説明はそのくらいにして。
それにしても、なんで幼等部なんて見てるんだろう?
「 がわ 北川」
急に声をかけられびっくりしながら声の主なの方を見た。
「お前、何をぼーっとしてるんだ!」
教卓からいつの間にやら俺の席の横に移動していた空人は少しにやりと笑った。
そして、俺にしか聞こえないようなに言った。
「俺は礼儀知らずが大嫌いだ。 ついでに女の子を見てぼーっとしている奴も嫌いだ」
そして、今度はみんなにあえて聞こえるように言った。
「北川! 今日、お前日直やれ。 ぼーっとしていた罰だ」
それだけ言うと、教卓へと戻って行った。
『うわ、嫌な先生が担任になったもんだな。 しかも、目を付けられてるし……』
せっかく、朝からハッピーな気分になれたと言うのに。 全く、ついてないなぁ。


その日、学校は昼まで。 とうぜんだ、始業式だし。
これから一週間ぐらいは授業らしい授業はないはずだ。
みんなが帰って行くさなか、俺は一人せっせと掃除に励んでいたりする。 日直だからな。
「北川大変そうだな」
「あの先生もひどいよね、北っちはそんなにぼーっとしてたかな?」
「してた。 窓際の女の子を見てた」
っと、東山 西口 南原が掃除を手伝う気もないくせに俺と一緒に居残って好き勝手なことを言ってやがったりもする。
「なに! それは本当か南原!」
「無論」
「どういうことかな? 北っち」
「あのな、手伝う気がないなら帰れよな」
西口は人差し指を立ててチッチッチと振って見せた。
「話をそらそうとしても無駄だよ。 さあ、吐け! 吐くんだ北っち!」
あまりひた隠しにすると逆に誤解され兼ねないのでここは少しだけ事実を混じらせて答えたほうがいい。
そう、俺のこいつらとの長い、あまりにも長すぎる友好関係から学んだ知恵が言っていた。
「いや、別にただきれいな人だなと思って」
「それだけ?」
東山が疑いの眼でこちらを見る。
絶対にこいつらだけに実は朝、『仲良くてね』って言われた事は言いたくない。
「そんだけだって。 よし! 掃除終わり。 ほれ、さっさと出ろ戸締まりができないだろうが」
無理やり教室から追い出して戸締まりをし。俺は鍵を返すために事務室へと単身走って行った。


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