投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

アッチでコッチでどっちのめぐみクン
【ファンタジー 官能小説】

アッチでコッチでどっちのめぐみクンの最初へ アッチでコッチでどっちのめぐみクン 33 アッチでコッチでどっちのめぐみクン 35 アッチでコッチでどっちのめぐみクンの最後へ

アッチでコッチでどっちのめぐみクン-34

……………

「……勘弁してくれ。もう歩けねぇ……」
 サイファは石ころが無数に転がる大地の真ん中で、へなへなと座りこんだ。
「またかよ!? さっきから何回休憩を取ってると思ってるんだ!」
 ディグが苛立ちながらサイファを怒鳴りつける。
「そんなこといっても、長年の牢屋暮しで運動不足なんだよ。お前らと一緒のペースじゃ歩けないよ」
「あのな、今、めぐみは王子のもとにいるんだぞ。あの馬鹿王子のもとにだ! 一刻の猶予もならないんだ!」
「……それはわかってるけどよ。だからってさびついた体に長距離の移動はキツイんだよ」
「もういい! ここからは俺とルーシーだけで行く! お前はここにいろ!」
「ちょっと待てよ!? こんな所に置き去りにするつもりか!? こんななんかいそうな所によ!」
「安心しろ。巨大なモンスターはもうほとんど滅びたはずだ。今存在するものは、大きいものでもせいぜい人間の3倍ぐらいの大きさだろう」
「冗談じゃねえよ! 俺はこっちじゃ術なんか使えねぇんだぞ! それより小さいやつ相手でも充分死ねるよ!」
「だったら、出てこないように祈れ!」
「祈ったって出てくるもんは出てくるよっ!」

「……ディグ、休憩を取りましょう」
 ルーシーが怒鳴りあう二人の間に入る。
「何だよ、お前まで。めぐみが心配じゃないのか!?」
「めぐみは多分大丈夫よ。今回のことを指揮しているのは間違いなくジョーカルでしょうから」
「なぜジョーカルだと大丈夫なんだ?」
「彼なら、めぐみの持ってる力に気づくわ。きっとそれも利用しようと考えるはず」
「お、おい!? それじゃ、なおさらめぐみを早く助けないと危ないんじゃないか!?」
「だからしばらくは安全なのよ。めぐみの性格を考えれば王子に襲わせたりとかはさせないはず。じっくりと時間をかけて懐柔しようとするんじゃないかしら」
「……なるほど、ただでさえ動揺しているはずのめぐみに何かしたら、壊れてしまいかねないか……」
「ええ、あの子はこっちに来て女の子に戻ってるはずだから、今頃は相当精神的にまいってると思うわ」
「やはり……教えとくべきだったかな……」
 ディグが深くため息をつく。
「めぐみまでこっちに連れてこられるなんて思わなかったんだもの。仕方ないわ」
「でも、そもそも葵ちゃんという彼女までできてしまう前に言っておくべきだったのかもしれない……お前は本当は女の子で、いつか戻ってしまう日がくるんだって……」
「……言っても信じてもらえなかったでしょうけど……」
「……それは……そうだな」
「とにかく、今日のところは、ここまでにしましょう。疲れてるのはサイファさんだけじゃないわ。私達もよ」
「俺はまだ疲れてなんか……」
「自分で気づいてないだけよ。めぐみのことで頭がいっぱいだから。たとえ今日中に城に戻れたとしてもジョーカルとやりあうだけの力は残ってないわ」
「む……やむをえないか……」
「でしょう? 今日はもう休んで疲れを取りましょう」
「……その前に、だ」
「え?」
 ディグがルーシーを引き寄せて力強く抱きしめる。
「ちょ、ちょっと! ディグ!?」
「久しぶりに元の姿に戻れたんだ。もう少しぐらいなら疲れたって構わないだろう」
「で、でも……ほら」
 ルーシーがサイファの方を振り返る。ディグはサイファもいたことを思い出してルーシーの体を離す。
「なんでお前がここにいるんだよ」
 ディグが不機嫌そうに言いがかりをつける。
「なんでじゃないだろうがよ」
「……ちぇっ」
 ディグが舌打ちをする。
「俺のことなら気にしなくてもいいぞ」
「……気になるわよ」
 サイファの申し出を、ルーシーが断る。
「何だったら、少しの間、離れた場所に行ってるからよ」
「あなた、あの水晶球持ってきてたじゃない。屋外ならどこにいたって同じでしょ? それで覗きをするのが趣味らしいし」
「……ちぇっ」
 今度はサイファが舌打ちをした。


アッチでコッチでどっちのめぐみクンの最初へ アッチでコッチでどっちのめぐみクン 33 アッチでコッチでどっちのめぐみクン 35 アッチでコッチでどっちのめぐみクンの最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前