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アッチでコッチでどっちのめぐみクン
【ファンタジー 官能小説】

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アッチでコッチでどっちのめぐみクン-64

……………

「失礼します」
 その頃、アリーランド最高の剣士と名高いスコット・マイルホークは、王子の命を受けてめぐみと葵が泊まっている部屋へとやって来ていた。
 まだ二十七歳でありながら将軍の座に昇りつめ、国内だけでなく、近隣の国にもその剣術の冴えを広く知られる彼は、その端正な顔立ちと一本気な性格で国内の女性に多大な人気を誇っている。
 
「はぁい、何ですかぁ?」
 扉を開けて、中に入ってきたマイルホークに、壁に寄り掛かって座っていた葵が近づいていく。
「メグミ様の御両親が先ほど城へ戻られましたので、メグミ様方を呼んでくるようにと王子に言われて参りました」
「え? ホントに? めぐみクンのご両親、やっと戻ってきたんだ! ……あの少しの間、廊下で待ってて下さい」
「……わかりました。なるべく早くお願いいたします」
 そう言ってマイルホークは軽く頭を下げてから、扉の外へと出ていった。

 葵は、マイルホークが部屋の外へ出ると、慌てて階段を上っていき、ベッドで寝ているめぐみの元へ駆け寄る。
「めぐみクン! 起きて!」
「……? ……んに?」
 前日からほとんど寝てなかっためぐみは、術法の練習に一息つけると、用意されていたパジャマに着替えてベッドの上で眠りこけていたのだが、葵に大きく体を揺すぶられて、うっすらと目を開ける。
「……葵ちゃん? ……?」
「めぐみクン! ちゃんと起きてっ! めぐみクンのお父さんとお母さん、戻ってきたって!」
 瞼こそ半分開いているものの、依然眠りの中にいるめぐみを、葵はさらに大きく体を揺すぶって起こそうとする。
「……お父さん……お母さん? ……?」
「そう! 戻ってきたの! だから早く起きて!」
「……んに? ……!! えっ!?」
 寝呆けた頭のピントが突然合って、ベッドの上でめぐみが跳ね起きる。
「本当!? お父さん達、戻ってきたんだ!?」
「そう、それで人が呼びにきてるから、急いで身支度を整えなきゃ!」
「う、うん! ……えっ?」
 葵が、めぐみが寝る前に着ていたドレスとロングのかつらを、ベッドから降りためぐみの目の前に突き付ける。

「……ここには、これしかないわよね」
「……そうだけど……かつらもつけるの?」
「もちろん。化粧も直さないとね。めぐみクンのご両親、きっと見違えるわよ〜」
「……泣くんじゃないかな……」
「ご両親が戻ってきたということは、この世界に滞在するのも、めぐみクンが女の子になってるのも、あとちょっとの間ってことじゃない。見納めにもう一回ビシッと決めましょうよ」
「……見納めって……それは葵ちゃんの都合……」
「気にしない、気にしない。さぁ、急ぐわよ!」

 元の世界に帰れる時が近づいて上機嫌の葵が、めぐみの身支度をてきぱきと手伝う。
 しかし、めぐみの方は、再び女性らしい格好をさせられることで、元の世界がかえって遠ざかっていくような気分を味わっていた。


 第18話 おわり


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