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アッチでコッチでどっちのめぐみクン
【ファンタジー 官能小説】

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アッチでコッチでどっちのめぐみクン-33

第10話 『夜にたたずむ者たち』


 哲太は眠れぬ夜を過ごしていた。
 さっきまで何か得体のしれぬ力に衝き動かされたかのように、フローレンスと名乗った女性を抱いていたことが、今になって後ろめたい気持ちを生んでいた。

 ……めぐみのことが好きで、他の女なんか全く目に入らない、なんてことを言ってたのになぁ……
 哲太は自分がめぐみにとっては恋愛対象ではないことを知りながら、罪悪感が涌いてくるのを止められなかった。
 ……こんな気分じゃ、とてもまともにめぐみの顔を見られねえよ……
 哲太はベッドの上で、ゴロゴロと寝返りをうつ。
 ……でも、据膳食わぬは男の恥、だとかいう言葉もあるしな。俺の行動は男としては恥じることはないのかも……
 哲太は誰かに責められているというわけでもないのに、自分自身に言い訳をするように、何とかさっきまでの自分を正当化できる考え方を絞り出そうとしていた。

 ふと、すでに火がつけられたロウソクの明かりが哲太の目に入る。部屋のあちこちにあるロウソクに火が入って、部屋が真っ暗になるのを防いでいた。
 ……そういや、俺達いつ帰るんだろ? もう外は真っ暗だけど……
 哲太は星空が広がる窓の外の風景をベッドの上から仰ぎ見る。
 ……ま、帰る時がきたら誰か呼びに来るだろうし、一日外泊したところで、心配するような親じゃねえけどな……
 哲太は、あっさりと元いた世界のことを考えるのをやめると、もう一度ゴロンと寝返りをうった。

 ……その頃、山森家では……

「ただいま〜」
 玄関に響く声を聞きつけて、哲太の母が出てくる。
「ひ!? あ、す、すいません。哲太のお友達ですか?」
「何言ってるのよ? 私が哲太じゃないの」
 哲太の母の前で靴を脱ぎながら、大男は高い声でそう答えた。
「あ、あの、どう見ても、あなたはうちの哲太ではないと思うんですが……」
 哲太の母が目の前の巨漢に脅えながらも否定してくる。
「ちょっとぉ、私の声を忘れたの?」
 しかし、その大男の声は哲太の声に比べてかなり高い。
「う、うちの息子はそんな声じゃありませんが……」
 哲太の母が確信を持って否定する。
 
 この時、大男は悟った。
 哲太が招かれたという城内の一室を、哲太の声を覚えるために扉の外から立ち聞きした時、中からは男の声と女の声がそれぞれ一人分ずつ聞こえてきた。
 大男は勘に任せて女の方の声で喋っていたのだが、それは間違いで、哲太というのはきっと男の方だったのだ。
 大男はそれを悟ると、すかさず声を作り直す。

「冗談だよ。ちょっとふざけただけだよ。ほら、いつもの俺の声だろ」
「!? て、哲太!? いや、声はそっくり……だけど」
「声だけかい?」
 大男が哲太の母に聞き返す。もちろん実際のところ、声以外はまるっきり別人なのだが。
「え? ええ……特に外見が、全然……」
「ああそうか、これね。ちょっとイメチェンでもしてみようと思ってさ」
「イ、イメチェンって……か、変わりすぎじゃないの? は、早く元に戻した方が、い、いいわよ」
「ええ〜っ!? でも今このカッコ流行ってるんだぜ。もうしばらくこのままでいさせてよ、な!」
 そう言いながら哲太の母に向かって大男の巨体がずずいとにじり寄る。
 哲太の母はびくっと体を震わせてじりじり後退する。
「わ、わかったわ! す、好きなようにしなさい!」
「サンキュー。ま、めぐみや葵がやめたら俺もこのカッコやめるからさ、それまでは俺もこのカッコでいるよ」
「……恵って、藤沢君達もそんな姿になってるの……」

 哲太の母は不可解な若者の流行にめまいを感じた。


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