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お見合い、それから戸惑い
【純愛 恋愛小説】

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戸惑い、そして想う-1

 卒業後に新しく始まった結婚生活は、私が思っていたより甘くもなく、幸せでもなかった。彼が忙しい人だとは知っていたけど、私の知っている彼より、実はもっと忙しいという事を結婚して初めて知ったのだ。
 彼は一週間の半分を広範囲の取引先を回る事に費やし、その時はほとんどが泊りであった。残りの半分も帰宅時間はいつも9時過ぎで、帰ってからもまだ仕事をしている。つまり家にはほとんど居らず、いても自室で仕事をする。そんな私達の日々が始まった。


 彼は新しく生活を始めるにあたり、新築の家を建てようと言ってくれたが、「夢のマイホーム」なんて考えの無かった私にはあまり興味がなく、適度に便利の良いマンションの一室を借りようと頼んだ。結婚してからの方が一人で過ごす時間が増えた私は、時間をもて余し、念入りな部屋の掃除が毎日の日課となった。キッチンやバスルームやトイレ、彼の仕事部屋や私達の寝室。一部屋づつ丹念に掃除する。そして近くのスーパーに買い物に行く。それだけ。夕食の用意もたいてい自分の分だけで足りる。


 寂しい?物足りない?…私にはよくわからない。ただそうやって毎日彼を待つ。こういうのが「結婚生活」ってものなんだろうと、いつも冷静で客観的に私自身を見ていた。


 そんな私を見て、ある日彼は一枚のクレジットカードをくれた。彼は、このカードを好きに使って良い、習い事でも買い物でも好きに使えば良いと言った。ありがとうと言って受け取ったが、そんなにありがたいとも思わなかった。だって私はお洒落にもブランド物にもさして興味は無いし、習い事をしなくても家の掃除で忙しかった。だからやっぱり家の掃除をして、スーパーで買い物をして、彼を待つことにした。


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