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紅館の花達
【ファンタジー 官能小説】

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紅館の花達〜金美花・返り咲き〜-2

単調な郵便物の仕分けの仕事が進んでいた。
中にはメイド宛に恋文が混じってもいるが、それもちゃんとメイド達に届くのだから驚いたものである。 紅様は恋愛に関してものすごく寛容と言えよう。
それにしても封筒の数が多い。
紅様宛が一番だが最近ではハイネルシス宛も多くて、一日に三通は届く。 紅様の付き添いで時々外に行った時に街娘達が一目惚れでもしたのだろう。
この封筒の山をクリスが知ったら………その時のハイネルシスの顔が見物である。
『………!!』
紅様宛の封筒の差出人をチェックしていると、キシン=キジン=キリン、キシンの名前があった。
急いで手紙の中から自分宛を探す。 キシンからの手紙は無いか?
『………無い!』
私宛の中にキシンの名前は無かった。
しかし、紅様には届いている。
キシンの字だろうか?
ヘタクソな字で紅様の名が書かれた封筒。
私はそれを開けて読みたい気持ちにかられた。
なんて書いてあるのか? もしや私について書いてないだろうか?
暫く考えた後で私は封筒を山に戻した。
封を切れば必ず紅様にわかってしまう。 私が手紙を読んだ事が。
それにキシンが手紙を書けるということは、もしかしたら帰ってきたのかもしれない。
ならば今夜辺りにもまた私の部屋を訪ねて来るかもしれないということだ。
私は急に心が弾んだ。
キシンが帰ってくる。 私の元に。
『………〜♪』
自然と鼻唄を歌いながら部屋を見回す。 そして箒を片手に部屋の掃除を始めた。



『〜♪』
私のウキウキは夕食までしっかり続いていた。
明らかに上機嫌な私を紅様やシャナさんが不思議そうにして理由を尋ねてきても訳を話さない私だったが、それでも二人は嬉しそうに笑っていてくれた。
たぶん、ここのところ毎日溜め息ばかりだった私を心配してくれていたのだろう。
『あ、そうだ。 アルネ、私は明後日の昼に出掛けるよ。』
『は〜い♪』
満面の笑顔で答えた私を紅様は笑いながら見ていた。
そんなヘンテコな夕食が終わって、夜を迎えた。

『………』
部屋で待つ私の心臓がドキドキとうるさく脈うっている。
薄灯りの中ベットに腰掛けてソワソワしている私。 服装はバスローブ、お風呂で体を綺麗にしたばかりだ。
窓は開けてある。 いつキシンが来ても良いように。
らしくないと自分でも感じていた。 こんなしおらしく男を待っているなんて。
(う〜〜………よく考えたら、バスローブで待ってるなんてやる気満々ではしたないかしら?
むしろ喜ぶかしら? あぅ〜……私ったら、キシンの好みがわからないわ。)
正直な話、昔はキシンなんて気にもしていなかった。 それが今こんな関係になるとキシンのことをよく知らないのがわかる。
キシンの屋敷の場所は知っているのにどんな生活をしているかも知らない。
そもそも、現在もキシンがそこに居るかどうかも………
ふと時計を見ると12時を差していた。
今夜は来ないのだろうか?
考えれば、ここに来るという確証なんて何も無い。


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