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紅館の花達
【ファンタジー 官能小説】

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紅館の花達〜金美花・返り咲き〜-1

『おはようございます、メイド長さん。』
『おはよう。』
朝、廊下ですれ違う度にメイド達から挨拶される。
自室から目的地の食堂までの間に五人から受けた。
なんだか、挨拶される度に自分がメイド長だと思い出す気がする。
『はぁ………』
本当に歳を取った感じだ。私も117歳。
もうちょっとで118になる。
今、悩み事がある。
『あの馬鹿キシン、いつまで待たせる気………?』
そう、あの夜。
初めてキシンに抱かれた夜からもう一ヶ月も経っているのに、未だにキシンは帰ってこない。 手紙一つも無い。
(やっぱりアイツ、遊びだったのかしら………?)
どうもキシンには真面目さが見えない。 きっと他にも女が居るのだろうと思う。
(それに、Hも絶対馴れてる………)
一ヶ月前の夜を思い出すが、頭を振って考えることを止めた。
(馬鹿らしいわ………なんで私はあんな奴を待ってるのかしら。)
溜め息を吐き、椅子に座るがふと寂しさが湧き出てきた。
(………もうちょっと待ってあげようかしら。)
また溜め息を吐いて、パンを掴み。
ジャムを塗ってそれを食べ始める。
(…………なんだか、寂しいわ。)
朝っぱらから溜め息を吐いている私の視界には、嫌な光景が一杯映っている。

『スーちゃん見て見て♪ スーちゃんに合わせたよ♪』
『合わせたって………何? その特盛サラダ?』
『スーちゃんに合わせて、サラダ♪』
『………量を合わせなさいよ、量を。』

『ハイネルシス、今朝は何を頂きましょうか?』
『私はクリームパンを頂きます。
クリスは何が良いですか?』
『では、貴方と一緒にします………♪』
『クリス………』

ゼロとスー、クリスとハイネルシス。
どちらも仲良く朝食を取っていて幸せそうだ。
(羨ましい………)
私もキシンと二人で………
私にだって夢くらいある。
朝は恋人の腕の中で目を覚まし、恋人のために朝食を作り、一緒に食べる。

ただ、私は料理が出来ないので実現には時間が必要だが。
一人黙々とパンを食べ終えて席を立つ。
まだウェザとシャナが起きてこないので、私が起こしに行くのだ。
昨夜も楽しんだみたいだから疲れているのだろう。
白竜館の階段を上がって行き、ウェザの部屋に入る。
案の定、二人はまだベットで眠っていた。
まずはカーテンを開けて朝日を入れる。
『紅様、シャナさん、朝ですよ。』
ウェザの肩をそっと揺らす。
シャナはウェザの腕枕で寝ているので、ウェザに連動してシャナも揺れるのだ。
しばらく揺すり続けるとウェザが唸り、目を擦りだした。
『紅様、おはようございます。
朝ですよ。』
ウェザは目を開けて私を見て、一度だけ頷いた。
そして自分の腕で眠っているシャナを優しく撫で始めた。
『もう少ししたら起きるよ。』
シャナの髪を撫でながら微笑んでいるウェザ。
撫でられて安心しているのか、さっきよりスヤスヤと眠っているシャナ。
………もう少しでは起きてこないだろう。
『早めに起きてくださいね。
私は仕事に入ります。』
紅館一、幸せな二人だから私は目眩がしてしまいそう。
とっとと自分の執務室に戻り仕事にかかることにした。
紅館に届く手紙の整理から私の仕事は始まる。
『あ〜………幸せって良いなぁ………』
恋人って、良いなぁ。
山のような封筒を分けながら私はまたキシンを思い出していた。
馴れないオシャレに気を使って毎晩一緒に話したあの日々。
初めて抱かれたあの夜。
紅様とは違う、少し激しいあの愛撫………
『………………はっ!』
ビクッして扉に目をやると蒼い目が此方を見つめていた。
『アルちゃん………妄想してる………?』
ニヤリと微笑んで頭を引っ込めたのは、メイドのゼロだ。
どうやら私は妄想しながらポカンとしていたようだ。
『不覚………だわ。』
バシバシと頬を叩いて仕事を再開する。
でも、心の中では………

キシン! とっとと帰って来なさ〜い!!

叫んでいた。


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