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紅館の花達
【ファンタジー 官能小説】

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紅館の花達〜金美花・返り咲き〜-11

『………』
睡眠は夢も見ずにあっと言う間に終ってしまった。
ふと頬に冷たい感触を感じたからだろう。 シャナさんが濡れタオルで拭いてくれているのだろうか?
今、何時だろう?
目を開けて時計を探すが、先に金色の髪が見えた。
『………馬鹿………』
沈痛な顔でキシンが私の頬を拭いてくれていた。
『………アルネ。』
『………何よ?』
沈痛なキシンの顔とは違い、私は寝起きなのも手伝ってか、この上なく不機嫌な顔をしていると思う。
『ごめん、アルクウェルと間違えて………』
『………似てるからね。』
『でも、やっぱ恋人のことを間違えるのは不味いよな………』
『結構ね。』
溜め息を吐いた後、体を起こしてキシンと向き合う。
『私と御祖母さん………ねぇ、私は御祖母さんの代わりなの?
キシンは御祖母さんが好きなんでしょう?』
『アルクウェルのことは、もう諦めたんだ。
………これ以上はアルクウェルが可哀想だから、嘘をつかせるのが辛いから。』
嘘?
私がよく分かっていないと知ると、キシンはさらに話を続けた。
『アルクウェルと俺はさ、兄妹だから………』
『きょっ、兄妹!?』
私が知らない驚愕の事実をキシンは頷いた。
兄妹ということは、つまり二人は結ばれない関係なのだ。
『母親が一緒なんだ。 だけど俺は知らなくて、アルクウェルを愛してしまった………』
御祖母さんはそれを知っていたのだろう。
結ばれないから………キシンを拒否したのだろう。
だとしたら御祖母さんの本当の気持ちはキシンを………
『だから、俺はアルクウェルを諦めたんだ………
嘘をつかせたくないから、ついている時のあいつの顔が悲しいから。』
好き合っているのに結ばれない。
そんな悲しい二人だったのか、キシンと御祖母さんは………
『………確かに、アルネを初めに見たときはアルクウェルに重ねた。 それほどに似ていたから………
特に、ウェザと結ばれない為に泣いていた時の顔が凄く似ていて、つい抱き締めてしまった。
俺を嫌い嫌いと泣きながら言っていたあいつに。』
シャナさんが来た、最初の夜のことだ………
『でもさ、夜に会って話してるうちにアルネ自身に引かれた、本当だぞ。
生き生きとしてて、可愛らしくて………』
『ねぇ、聞いてもいい?』
相手が頷いたのを見てから、私は色々と溜っていた気持ちを話した。
『あの、御祖母さんの魔写の板は?』
『90年前のまま、置いてあったんだ。 90年間、屋敷を開けていたから。』
『90年間どこ行っていたの?』
『軍の司令官として、アルクウェルを捜しに各地を転々としていたんだ。』
『………御祖母さんには、会えたの?』
『あぁ、そんで兄妹ってこと打ち明けられて、もう終りにしようってことになって………最後にキスをして別れた。
今度会うときは、その時は兄妹として話そうって。』
キシンはその時どんな気持ちだったのだろう。
ずっと想い続けた相手が妹だったなんて。
『兄妹だから、諦めたの?』
『………いや、アルクウェルが嫌がったから諦めたんだ。
兄妹の壁は越えられない、あいつはエルフの族長の立場だから俺とアルクウェルだけの問題じゃなかったからな。
俺が想い続けることがあいつの苦しみになるなら、諦めようって事にしたんだ。』
そっと、キシンの頬を撫でる。
『バカ………いつもは自分勝手なくせに………そういうとこだけ相手を考えるなんて。』
キシンの手が、私の手を包みこむ。
『あぁ、馬鹿だよな………
こんな馬鹿、嫌かな?』
キシンは馬鹿なついでに、卑怯だ。
『嫌だったら、とっくに追い出してるわよ。』
自分の唇をキシンの唇に重ねる。
熱いキシンの熱が唇から伝わってきた、とても暖かくて心地がよい。
『あ………』
キシンの両腕が私の背中に回されたところで一旦相手を止める。
『あの………シャワー浴びてからで良い?』
私の服は睡眠中汗をかいたらしく、このままするのは恥ずかしかった。
だが、そんな私をキシンは不思議そうに見ていた。


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