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紅館の花達
【ファンタジー 官能小説】

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紅館の花達〜金美花・返り咲き〜-10

暫くして泣きやんだ私をベットに寝かせて、シャナはそっと立ち上がった。
『さて、お粥ですね………あら?』
妙に部屋の外が騒がしい。
数人のメイド達の声と一人の男の声がする。
『アルネに会わせてくれ!』
『いけません! だ、誰か!? 誰か来て!』
キシンだ、ここまで押し入ってくるとは………
『アルネさん、会いますか?』
シャナの問いに首を横に振った。
『今は会いたくない………』
弱々しい私の答えに頷いて、シャナは部屋を出ていった。
『お静かに。』
扉の向こう、声だけが聴こえてくる。
『うっ、シャルナさん………いや、シャナさんか? アルネに会わせてくれ!』
『アルネさんは、今は会いたくないそうです。 お引き取り下さい。』
キッパリとした拒否の言葉が聴こえてきた。 いつものシャナからは思い付かないくらい。 冷たさが感じられる。
『だけど、会って話したいんだ!』
『本人が会いたくないと言っている以上、会わせるわけには参りません。 ハイネルシスさん、お引き取り頂いて下さい。』
ハイネルシス、騒ぎを聞いて飛んで来たのだろうか。
暫く沈黙が続いた後、キシンが諦めたように呟いた。
『………アルネ………』
『アルネさんだって完璧な人じゃありません、悲しみもする女の人です。
もっと優しくしてあげてください。 私が言えるのはこれだけです。』
少し体を起こして、扉の外のシャナに呼び掛けた。
『シャナさん………悪いけど、キシンには違う部屋で待って貰って………』
今は会いたくないけど………暫くしたら。
『わかりました。 ではキシンさんは火竜館の客室へ。
ハイネルシスさん、案内して下さい。』
シャナの言葉で数人の靴音が離れていった。
そして扉が開いてシャナが戻ってきて、ベットの側の椅子に座る。
『ごめんなさい………コロコロ変えたりして………』
『良いのですよ、アルネさん。
さぁ、ゆっくり休んで下さいね。』
再びシャナに笑顔が戻った。
そして、運ばれてきたお粥を食べた後で私は寝ることとなった。


『シャナさんもあんな風にしっかりと言えるのね………』
さっきの毅然とした態度と言葉がまだ耳に残っている。
優しくて、弱気な子だと思っていたのだが、意外な一面に気が付かされたのだ。
『………敵わないなぁ………シャナさんには………』
ヒンヤリとした氷の感触を額に感じながら、私は眠りについた。
次起きたらキシンと話さないといけないと思いながら………


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