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イブ 茨人形
【ファンタジー 官能小説】

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イブ 茨人形-15

体中の感覚が戻ってきている気がします。
体が気持ちのよさに大きくけいれんします。痛みの変換がそのままのこっていました。
思わず地面に倒れこむと身もだえました。折れたバラのトゲが地面に擦れ、肉に深く刺さっていきます。
「イブ、負けないで」へこたれ声です。
「お前は邪魔だ。そっちの女と一緒につぶしてやる」
レナは喉を掴んで持ち上げられました。
ところが、レナの腰が魔に触れそうになったとたん、魔が身を引き、離れました。
「汚らしいやつめ」
≪なに、レナって魔にも嫌われる女なの≫
その時、フールーの胸のあたりに穴があきます。その周りが赤く燃え上がりました。
「ナミ、殺さないで」レナが叫びます。
遠くから撃ち込まれた呪いです。レナのとは威力が違いました。
「レナ、よく耐えましたね」今度は上品な人の声だけがきこえました。
「アッチ、どうしてここにいるの」
「当たり前ですよ、あなたを見てなかったと思うのですか」
それは外門あたりからの攻撃でした。しかし、魔は穴の開いたまま平然としています。
自由になったレナが立ち上がり、私に抱きついてきました。
≪何をするの≫ 優しい抱擁が感じられます。そして不思議なことにフールーが一歩引きました。
レナが見上げ、「そうね、あたしじゃあんたに負けるだろうけど、詐欺師の魔に対して、他の魔はどうするかな」
「なんだと」
「魔は実体を持たない、その分、他との関係では言葉を重視する。契約はおまえたちの存在の証だ。人との間であっても、それをないがしろにするものが出たら、他の魔はどうする。人と戦うか、おまえを消すか。魔が契約を守らないことが知れたら私たちとの全面戦争となるぞ」
魔はしばらく考えています。
その鼻先へレナが呪いを撃ち込みました。
「これはへなちょこ弾だけど、もっと強い人も魔もいるぞ」
私でもわかります。レナは威勢はいいのですが、これが精いっぱいなのです。
悟られると殺されかねません。目撃者が消えれば問題は回避されます。
「これはすべて、言葉の解釈のずれだ。我とこの女との関係だ。おまえの入る問題ではない」
唐突にフールーが前のめりになりました。その腹が燃え上がります。また強力な呪いが撃ち込まれたのです。
「人は常に人と関係を持っている。イブは友達だ。友達は助け合う文化なの。解釈のずれだというなら正しなさい」
「すべての感覚は返した」
「それだけではバランスがとれない、意図的に解釈をずらして楽しむのはおまえたちの常套手段だが、契約違反はお前の命と引き換えでも足りない。せめてこの場もなかったように収めなさい」
「『この場』の範囲は」
「イブの体の傷。そして今後、イブに干渉しないこと」
「そっちのメイドもよ、傷を治して」口をはさみます。
「おまえと関係はない」
「私のためにああなったの。私たちはつながっているの。ツタにからめとられ傷ついている姿も同じでしょ」
「では、わが名は返してもらうぞ。これで守るものはいなくなる」
「私が守る」レナが言ってくれました。
そして魔が消えました。おそらく永遠に?


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