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テレス・キオネ
【ファンタジー 官能小説】

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テレス・キオネ-4

夜は冷えるが、煙は見えない。もう使うことのない椅子も机も壊して大きな火にした。
今はまだ、城や湖では警察や関係機関が動いている。だが、山を振り返る者はいないだろう。それから二日間、キオネをたのしんでは、体調を整えていった。
うまくすれば、こいつに私の子を産ませられる。
しかし、しばらくキはオネを抱くのもお預けだった。私も体調を万全にしておく必要があった。
次の日、備品をもう一度確認した。
「服を着ろ。行くぞ」
キオネは突っ立っている。「着せて」
「おまえ用の侍女はもういないんだ。脱ぐ方は手伝ってやる。着る方は自分でするんだな。もたついていたら裸でも雪の中に出すぞ」
≪わがまま娘め≫ 自分の支度をする。まだ動かないので、雪の中に放り出してやった。
それでもふくれっ面をして動かない。
「入れ」仕方なく着せてやった。山の中は城での格好というわけにはいかない。コルセットもやめさせ、毛皮をきせていく。
冬に山の中を通って国境を超えるような愚か者はいない。山に詳しい地元の猟師でもやろうとはしないだろう。
私は夏の内にルートを作っていた。運命の神はそれを受け取るグラスを用意した者に、たくさんの美酒をそそいでくれるのだ。
小さなそりに荷物を積んで、方角を確かめながら引っ張っていった。
やはり、キオネはすぐに歩けなくなった、仕方なくそりに乗せた。
暗くなる前に吹き溜まりに雪洞をほって中に入る。
火を焚けばそこそこ温まった。それに温かい食べ物だ。
夜は熱を逃がさないように二人で抱き合って寝た。
しかしキオネの肌は冷たく、体が震えて寝られなかった。
それで次の日からは離れて寝るようになった。
一日に進める距離はだんだん短くなっていく。しかし心配はしていなかった。ルートも距離もわかっている。
いつの時点でキオネをあきらめるかということだけが問題だった。
それは暖を取って、水を温めるための、携帯ガスボンベの数で決まる。
それも五日目に、火をつけたまま眠ってしまい、最後の一本を使い果たしてしまった。
≪あきらめよう、キオネを捨てよう≫ そう思いながらもソリにくくり付けて引っ張る。
その方が歩かせるより楽に、早く進めた。
予定より二日遅れて山を越えることができた。結局キオネもあきらめられなかった。
そこから街道に出た。そこで大きな馬そりに乗れたのは幸いだった。
町に入る手前で、御者に我々が乗ったことを忘れさせて、降りた。
なぜ町に入ってしまわないのかと、キオネは不審そうにこっちを見る。
街道をすこし離れ、町はずれの高い生け垣で囲われた家に入った。そのたたずまいが、私をひきつけたのだ。
「すいません」何度も声をかける。扉にはノッカーもついていない。
一階の窓も分厚い板でふさいであった。それは雪の侵入を防ぐため、というだけではないだろう。少し開いた隙間は光取りと、銃を撃つための狭間となるのだ。
ここは他人を寄せ付けない理想的な家だ。それは逆に、人に知られたくない人たちがいるということでもある。
それが魔女だと危ない。へたに入り込もうとすると、こちらがやられるかもしれないのだ。
留守かと思ったころ、中から声だけが聞こえてきた。「なんだね」
「道を尋ねたいんですが」
「帰んな」
「では水でいいです、一杯いただけませんか。連れがもう‥」
「だめだね」最後まで聞こうともしない。だが、魔女だという匂いも感じなかった。
キオネが玄関で倒れた。私はほっておいて家を離れるふりをして、陰へかくれる。
ほどなく家の者が様子を見に顔を出した。子どもの顔だ。
「カリス、のぞくんじゃない。奥へ行きなさい」しかり飛ばす声がして、すこししてから女が顔を出した。倒れたキオネを見て舌打ちをする。
様子を見に出て来た所を魔術で拘束した。


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