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テレス・キオネ
【ファンタジー 官能小説】

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テレス・キオネ-11

キオネは一向に喋ろうとしない。前回はあったのか、なかったのか。しかしそれは妊娠ではなく、湖から拾いあげてから、ずっとそうだったのかもしれない。
妊娠したとしても、その兆候はわずかしかない。
これには様子を見るしかなかった
母親はもう男を家に連れて来るようになっていた。気がよく、よく働きそうなだ。
これでいい。私も小娘達に専念できる。
私は最後に母親を抱きしめた。「幸せになりなさい」
それからカリスと一夜を共にする。これが本当の最後だ
身重な女を二人もつれて旅はできない。私にはキオネしか選択がなかった。
この土地では『妻と子を残し出て行った男』そう、うわさされるのだろう。
私の評判は下がるだろうが、もうここに来ることはない。
それでも二人には生きていて欲しかった。いつキオネに殺されるかと恐れながら生活を続けることはできない。

朝、
最後に手を握って別れたかった。
だが、触れると目を覚ますかもしれない。
目を覚まされたら、出て行く言い訳の言葉が出ない。
出て行く決心すら鈍るかもしれない。
きっとこれがキオネに魅入られた私の末路なのだろう。
キオネをつれて出た。
持ち物は着ている服と医療箱のみ、手持ちの金もほとんどない。
だがそれは最初に戻っただけだ。
しかし今度はソリではなく列車に乗ることができる。
ただ、キオネが、「私老けていく、醜くなっていく」つぶやくようになった。
「こいつが吸い取っていくのよ」わずかにせりだしてきたように見える腹を掻きむしる。
「やめなさい、産まれたら後でもっと美しくしてあげるから」
「本当ね? 約束よ」
みみずばれのできた腹をなでた。
「ねえ、答えがわかったわ。赤ん坊ね。こんなに若くて美しい血は他にないわ。私のために作ってくれたのね」目が輝いている。
それはクリスマスの夜にプレゼントを待ちわびる子どもの目だった。




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