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上野家のある週末
【SF 官能小説】

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新たなる訪問者-4

正輝がそれを驚いた表情で見ていると、

「クソ!」
「痛ぇ!」

などと悪態つきながらアルゥとグリィが動き出す。拘束器具が取れたおかげで意識と体の自由が戻ったのだ。正輝にはベガァ語の為何を言っているのか分からなかったが。目の前の恵を見て、

「クソ女め!」
「やりやがったな!」

とグリィが立ち上がるが、他にも人がいる事にようやく気が付きギレを見て、

「族長…」

と微かな声で言葉を絞り出すとガタガタ震えている。アルゥも立ち上がるも力無く俯いていてギレを見る事が出来ない。ギレは後ろの兵士達に僅かに顔を振ると、二人の兵士はアルゥとグリィの元に走り、手早く二人の両手を拘束具らしき物で固定した。

アルゥとグリィは無抵抗で受け入れている。グリィはずっと震えていて止まらない。その顔は真っ青になっていた。アルゥがギレを伏せ目がちに見て、

「この星で採掘しようと私がグリィを誘いました。」
「グリィは反対したのですが、私が…」

と訴え掛けるのを、

「黙れ!」

とギレが一喝した。その空気を切り裂く激しい一言に全員が固まる。アルゥは体を震わせ口を閉じる。ギレはアルゥを睨み付け、

「いつ、お前に話して良いと言った?」

と恵と話している時は穏やかで優しい声だったが、今のギレの声は突き刺さる様な冷淡な声だった。ギレは、

「あの者達のあなたへの乱暴な言葉を謝罪する。」

と恵に優しい口調に戻り謝る。ギレは、

「この者達は、何かあなた方に失礼な事をしたのでは?」

と聞くとアルゥとグリィがピクンと反応した。恵が二人を見ると二人は慌てて俯く。ギレが続けて、

「処分は我々に委ねるとの事だが、今ここでこの者達を処刑しても構わないが。」

と言うと二人の兵士達はアルゥとグリィの背後から首を両手で固定する様に挟み込む。いつでも首をへし折る様に見えた。こうやって見ると二人の兵士達はアルゥ達より頭一つ出ていて、肩幅も広い。兵士達の顔は冷静だが冷酷にも見える。アルゥとグリィはそれにも無抵抗で真っ青で強張った顔をしていた。グリィは泣き出しそうな表情に変わる。恵は、

(少しでも抵抗すれば殺されるのか、だから全くの無抵抗なのだろう。)
(部族長は絶対的権限の持ち主で生殺与奪は思いのままとか。)
(ベガァは敵にも情け容赦は無いが、味方も同様と聞く。)

と以前聞いた話を思い出していた。

「いいえ、我々の本星を通じて伝えた通り処刑の必要は有りません。」

と恵はギレを見て話した。ギレは頷き、

「あなたの寛大な申し出に感謝します。」

と謝意を伝える。恵とギレの会話を聞いていたアルゥとグリィはホッとしている様に見えた。恵は、

「彼らにはどんな処分が下るのですか?」

とギレに聞くと、

「私に一任されています。」
「部族の勢力範囲の惑星で、囚人として鉱石の採掘の強制労働に従事する事になるでしょう。」

と話した。アルゥとグリィはそれを聞いてガッカリした様にこうべを垂れた。ギレは恵と正輝を見て、

「では、これで。」
「お邪魔した。」

と話す。恵が、

「わざわざのお越しありがとうございました。」
「遠路、お気を付けて。」

と返すとギレは頷き踵を返し戻っていく。恵はギレが先頭に、その後兵士達がアルゥとグリィを連れて続き階段を登ると入り口に消えるまで見守る。入り口が消え微かな動力音の後、空を見上げていた恵は、

「彼らは去ったわ。」
「家に入りましょう。」

と正輝に言うと正輝が持っていた収容ユニットの白い箱を受け取る。正輝は、

「ブレスレットでディスプレイの膜を出して無いのに見えるの?」

と不思議そうに聞くと恵は玄関のドアを開け、

「頭のチップが可視化して見せてくれるの。」

と説明した。


 それからの数時間、恵は時おり連絡を受けている様に正輝には見えた。外は薄暗くなり夜になりつつ有った。正輝は恵の近くにいて時々状況を聞いていた。

ベガァの使節は、アルゥ達の船と採掘ユニットの回収を終え再びアルファの艦隊に囲まれ戻って行ったらしい。偵察艦隊の艦艇がこの太陽系の周りを探索してベガァや他の異星人がいない事を確認したと言う。

恵ははるばる応援に駆けつけてくれた戦闘部隊の艦隊のリーダーと偵察艦隊のリーダーに謝意を示した。戦闘艦隊のリーダーによれば今ベガァは体制派と反体制派で抗争を繰り広げているらしい。ギレのアゼ部族は体制派との事だ。

アルファとの協定を結んだ現指導部の支持者達とそれに反対したグループの対立だ。その抗争が今回の違法採掘に繋がっているのではとの指摘だった。内戦に備え物資調達の為ではと言う。

その事も有り偵察艦隊のリーダーは暫く地球周辺での駐留を申し出たが恵は丁寧に断った。ベガァの勢力圏から遠い事とベガァの内紛を受け、ベガァの勢力圏の周辺宙域にアルファの戦闘部隊の艦隊が囲む様に配置される事が決定したからだ。今後はベガァは勢力圏以外での鉱物の採掘は難しいだろうと予測された。

恵が正輝に事情を説明して、応援部隊も帰ったと告げると正輝は安堵の表情を浮かべ冷蔵庫から炭酸飲料のボトルを取ると2階の自分の部屋へと戻った。恵は夕食の支度を始めようとした時、

〈恵、言っておきたい事があるの。〉

とマザーの声が頭の中で聞こえた。続けて、

〈あなたと正輝の関係の事と言えば分かる?〉

と確認する様に話し掛けて来る。恵は顔を赤らめた。頭の中のチップは恵、そして正輝の全ての行動も記憶しマザーに転送される。二人の昨晩の出来事も。


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