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上野家のある週末
【SF 官能小説】

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反撃-1

グリィがアルゥを見て、

「コイツ等どうする?」

と真顔で聞く。アルゥが唸りつつ考え、

「そいつが問題だ。」

と答え、一旦間を置くと

「女のシップは収納ユニットに閉じ籠り、目下正常化に向け修復中だろう。」
「全く動く気配が無いからな、通信も含め。」

と話した。頭に埋め込まれたチップに自分達の宇宙船からの情報が入っていたのだ。グリィも頷きながら、

「暫くは送り込んだウイルスがアルファの船を動けなくするかな?」

と聞くとアルゥは首を振り、

「元々、アルファの制御ウイルスだ。」
「直に正常になる、もって二、三日だろう。」

と話すとグリィは顔をしかめ、

「そんなに早いのか。」

と落胆した様に言う。アルゥが、

「だが、この星で採取した資源を運搬船を呼び寄せ積込むには十分な時間だ。」
「この星を去るのを惜しいが、さっさと逃げよう。」
「アルファの応援が来ない内にな。」

と話すとグリィも頷き同意してテーブルの上の親子を見て、

「二人共殺すのか?」

と不安気な表情で聞く。アルゥは首を振り、

「いや、俺達が逃げる間動けなくする。」
「アルファ人を殺したら、その内仲間が来て徹底的に調べて俺達の痕跡を見つけるだろう。」
「生かして置いても、あの女は船が修復したらすぐに本星に連絡する筈だ。」

と肩をすくめ、

「どっちでも一緒なら生かしておくさ。」
「俺達が逃げ切れば連中は深追いしないかも知れん、だが仲間が殺されたならそうはいかん。」
「それに小僧は頑張ったし、女は良い反応を見せてくれた。」

と笑う。グリィはホッとした表情になり、

「ああ、そいつは良かった。」
「俺も小僧は気に入っていたし。」

と笑う。アルゥは小型武器グギの調整スイッチを操作しながら、

「女は最強のレベルで撃っても死なない筈だ。」
「小僧は最初に会った時に撃ったレベルで十分だろう。」
「二人が動けなくなったら、これで拘束しろ。」

と言うとズボンの太もも辺りにあるポケットから、細長い15cm程度の長さの蛇腹丈の金属製の物を複数グリィに渡す。それは、ベガァ人達が使う拘束用具で自動で伸びて強力に締め付け電磁波を発しながら抵抗する力を奪う物だ。

アルゥはグギを構えてテーブルに近づき恵に向けた。恵はぐったりとして目を閉じたままだ。正輝がアルゥの動きに気付き何をするのか察すると、

「止めろ!」

と叫ぶとテーブルから飛ぶ様にしてアルゥに体当たりする。素早い正輝の動きにアルゥは対応出来ずまともにタックルを受け床に頭を打ちつけて呻く。その為、アルゥはグギとウラのリモコンを離してしまう。グリィが血相を変え、

「何するんだ!」

と叫ぶと駆け寄りグギを拾い上げると自らもタックルの衝撃で床に四つん這いになり頭を振っている正輝に向ける。すると正輝のタックルのスピードが比較にならない程の速さで人影が正輝とグリィの間に立ち塞がり、その瞬間グリィが文字通り吹っ飛んだ。

グリィは二階への階段の壁まで飛ばされ激突して木製の壁を破壊して跳ね返った。恵が両手で掌底突きの体勢で立っていた。グリィは全く動かない、気絶した様だ。アルゥが、

「クソ!」
「油断した!」

と悪態をつきながらヨロヨロと立ち上がる。恵はその前に一瞬で立つと両手の掌底突きを肉眼では捉えられない程のスピードで繰り出しアルゥも吹き飛ぶ。アルゥは居間の壁に激突して壁に大きな穴を開けて跳ね返った。

正輝はそれを驚異の眼差しで目をパチパチさせながら見つめていた。到底人間業とは思えないスピードとパワーに度肝を抜かれた。プロレスラー並みの大男二人をあっという間に倒した事実を目の当たりにしても信じられなかった。

恵は片膝を付くとハァハァと肩で息をして、滝の様な汗を流していた。渾身の力を使った為疲労の極みだった。正輝が駆け寄り、

「母さん、平気?」

と心配そうに恵の様子を伺う。恵の顔は疲労の色が隠せ無い。正輝の身の危険に咄嗟に体が動いた。自分でも驚いたが身体の疲労は予想以上でもう歩くのも覚束ない。恵は笑みを何とか浮かべ、

「ええ、休めば元に戻るわ。」
「でもやるべき事がある。」

と答えると危なっかしくヨロヨロ歩き出す。正輝は恵を支えながら、

「休まなきゃ。」
「何処に行くの?」

と話し掛ける。恵は居間の隅の下の方を見つめ、

「ブレスレットを装着しないと…」

と呟く。正輝は、

「僕が取って来るよ。」

と言い、向かうとするのを恵は正輝の腕を掴んで止め、

「取り扱いを誤ると危険なの。」
「自分で取りに行くわ。」

と説明する。すると正輝は、

「だったら母さんをあそこまで運ぶよ。」

と言い恵をお姫様抱っこして歩き出した。恵は顔を赤らめ、

「ありがとう。」

と礼を言う。居間の隅でブレスレットを両腕に嵌ると恵の視線がアルゥの方に向いているので、正輝は再び恵を抱っこしてアルゥの元に向かう。アルゥはピクリとも動かない。正輝が、

「死んだのかな?」

と聞くと恵は正輝に床に降ろして貰いながら、

「生きているわ。」

と答える。生体反応が有る事を恵の頭の中の多目的チップが教えてくれていた。戦闘用スーツが衝撃をかなり吸収して和げた為深刻な事態を免れたのだろう。


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