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『とある普通の恋人達』
【女性向け 官能小説】

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『もっと、とある普通な恋人達;前編』-4

「あっく…、あっく…何でここにいるの…?」
明香は既に泣きだしそうな顔をしている。
「明香が珍しくメールもよこさないから、心配になって来たんだよ。」
ふぇぇぇ…と顔をくしゃくしゃにして明香は淳史に抱きついた。
「明香?!どうした???何だぁ???」
急に泣き出した明香に、淳史は慌てふためき、何よりも表参道駅という利用人数が国内でもかなり多数な駅での周りからの視線に、困り果てて頭をかいていた。


満員電車の座席で明香は淳史にぴたりと寄り添い、淳史の右手をぎゅっと握っていた。
「深尾って奴、マジでムカついた…。ぶん殴ってやりたい。」
明らかに怒りも頂点で、淳史は左手を拳にして血が出そうな程強く握り締めていた。
普段はさすが姉と妹がいるだけあるね…と、よく言われるくらい、穏やかで温和な淳史の、これほど怒りに満ちみちた表情は今だ見たことがなかった。

…バタン。ガチャ。

とにかく淳史はかなり怒っていたし、明香はショックからか、ずっと無口で塞いでいた為、今日はそのまま一人暮しの淳史のマンションに二人とも帰って来た。

「ぁあっく…あっく…ふぇええ…」
堪えていた涙が溢れ出した明香は、子供が母親に泣き付くように、淳史に抱きつき、泣きついた。
しゃくり上げながら泣く明香を、淳史はただ優しく抱きしめていた。

しばらく泣いた明香は泣き疲れたのか、淳史の膝に頭を乗せてコテンと寝てしまった。
「明香…?」
明香の反応はなかった。深い呼吸が感じとれた。どうやら本気で眠ってしまった様だ。

「やれやれ…。」
明香の顔に被さった髪を払い、優しく撫でる。泣いた目が薄い赤みを帯びて、腫れぼったい。明香は猫の様に丸くなっていた。
部屋には冷房がかかっていた。そのままではクーラーに弱い明香が風邪をひいてしまうし、仕方なく抱き上げてベッドに運んだ。

淳史はしばらく横にいて明香の手を握りながら寝顔を見つめていたが、夕食がまだだったので、その場を離れようとしたのだが、明香が淳史の手をはなさなかった。
「あ?明香起きてる?」
「ん……今起き…た」
シパシパする目をこじあけ、明香の視界に淳史がうつる。
明香はまた涙目になり、ジワ…とたまった涙が目尻から落ちた。
「ふぇぇぇ…」
両手を伸ばして淳史に抱きつく。
「明香……」
淳史は明香のあごを少し上げ、唇を重ねた。
チュッ チュッ チュ…
7回小さくキスをして、淳史は明香に言う。
「ほら。おまじない。ラッキーセブン。」

明香は淳史にぎゅっと抱きつき、淳史は明香が壊れないように優しく包み込んだ。
ふっと明香の脳裏に、さっき深尾に無理矢理キスをされ、胸を揉み荒らされた場面が浮かんだ。明香はきつく目を閉じて頭を横にふった。
それから俯いたまま淳史の手をとり、カットソーを少しめくりあげてブラ越しの自分の胸の膨らみに乗せ、その淳史の手の上に自分の手を乗せ、胸を鷲掴みにした。
「ぁ………んっ…」
淳史は明香の不可解な行動に困惑し、ただ明香の様子をうかがっていた。
「明香…大丈夫…?ショックだったんでしょ…?」
目をきつく閉じたまま明香は答えなかった。


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