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『とある普通の恋人達』
【女性向け 官能小説】

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『もっと、とある普通な恋人達;前編』-3

「深尾く…!!」
「ごめん。明香ちゃん…俺、明香ちゃんに彼がいる事知ってるよ。けど、それでも伝えたかったんだ。」

抱きしめられながら、耳元で囁かれる甘い徹の言葉に、体中が熱くなる。
「深尾くん…わ、私…」
明香がそう言うと、徹がその先を口づけで封じた。
「…!!んンッ…!」
徹は明香を壁に押さえ付け、腰を抱き、自分に引き寄せながら、執拗なまでに明香の唇を貪る。
押し返そうとする明香の抵抗も虚しく、徹の舌が明香の口内に侵入してきた。
それと同時に薄手な明香のカットソーの上から、徹の手が柔らかな明香の胸を揉みしだいた。
「ア…ぁッ…!イヤぁッ…!!」
ビクンと反応して、明香は、半分泣きそうな顔で目をギュッとつむり、全身を強張らせた。
「ィヤッ…長尾く…ん…やめて…。ンんッ!お…お願…い」
貪る様に明香に口づけをして、無心に胸の膨らみを犯し続けていた徹は、その涙声に気付き、
「ごめ…明香ちゃ…ん」
と、ハッとした様に明香から離れ、その場にがっくりと腰を落とした。

「俺、最低…な」
褐色の少年の様に美しい徹の頬をつたい、涙が流れた。
徹はそのまま壁に背を預け、肩を落として下に座り込んでしまった。

しばらく黙ったままの二人だったが、やがて徹が口を開いた。
「俺、前から明香ちゃんが好きだったんだ。ずっと、憧れてた。」
その時、明香の脳裏に淳史からのメールの言葉がよぎった。
『もしかして、その深尾さんて人、明香に気があったりしてな…』
淳史の顔が浮かび、途端に明香の目から大粒な涙がポタポタ流れ、明香は鼻をすすり始めた。
「ひっ…深尾…く…ん。ご…めん…。ひっく…私…深…尾くん…の気持…ち、ヒッ…ク、答えら…んない。」
「ごめん…明香ちゃん。泣かないで。」
徹は明香の頭を優しく優しく撫でながら、ハンカチを渡した。

しばらく明香の泣き声が聞こえていたが、数十分後、明香は落ち着いた様子で、ぼんやりマンションの広い敷地内の出来る限り遠くを見つめていた。

徹が力なさ気に立ち上がり、横にへたりこんで座っていた明香に手を差し出す。
「帰ろう…」
徹の手を借り、明香もよろよろ立ち上がる。

駅に向かう途中、徹が言った。
「明日からも、店に来てくれる?」
しばらく無言でいたが、明香はコクリと小さく頷いた。
「よかった…」
徹はふぅっと安堵の表情を浮かべた。

地下鉄表参道駅に着き、二人は軽く挨拶を交わして何事も無かったかの様に別れた。

明香がぼんやりホームに向かうエスカレーターに乗っていると、反対側のエスカレーターには淳史がいた。
淳史は、ぼんやりして俯いたままの明香を見つけ、自分に気付かずにすれ違っていく明香に声をかけた。
「明香っ!!」

はっとして声のするほうを見ると、そこにいる筈のない淳史がいた。
「下で待ってて!」
と、淳史の声がして、明香はエスカレーターを降りた場所で待つ。
すぐさま上りのエスカレーターから折り返して来た淳史が、明香の元へやってきた。


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