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『とある普通の恋人達』
【女性向け 官能小説】

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『もっと、とある普通な恋人達;前編』-2

一時間くらいアレコレ話して、電話を切った後すぐに、淳史が明香へメールをした。
『もしかして、その深尾さんて人、明香に気があったりしてな…』

…なに言ってんの。有り得ないよ〜!と心で一蹴して、明香は淳史へすぐにレスを返した。

翌日、明香はまたアジアンランチにむかい、昨日食べたエリンギをもう一度食べようと思っていた。
だが、メニューは日替わりの為、あのエリンギのメニューは無かった。

「ごめんねぇ…。けど今日のレッドカレーも美味しいよ。」
と、徹は他のメニューをすすめた。
「んー…じゃレッドカレーにするかな〜」
シュンとしながらもニコリと笑い、明香はあと残り二種類のメニューを選んだ。

アジアンランチのワゴンを後にした明香が、ふっとランチの入った袋の中を見ると、ランチボックスの上に淡いグリーンのメモが入っていた。
「何じゃこら?宣伝チラシかな?」
ガサガサと袋からメモを取り出し、開くと
『明香ちゃん
今日仕事が終わったら少し時間くれないかな?
大事な話があるんだ。
明香ちゃんの店の近くで待ってるから…』
と書いてあった。
骨董通りをポカーンとして歩きながら、明香は職場へ戻った。
「話って?何だろ?」

20時過ぎ…セレクトショップで販売士をしている淳史は、さくさくと閉店作業をしていた。
何故か今日は明香からは、
「今から昼休みだよ〜☆☆☆」
と、昼報告のメールがあった以降は何も連絡がなかった。
いつもなら、じゃんじゃん入って来るメールが、今日はそれきり来ないので、淳史は軽い胸騒ぎを覚えた。

『夕方休憩無かったの?もう俺は終わるから店出るよ〜。』
淳史は店を出るなり、すぐに明香にメールをしたが、レスは…こない。
まぁ、明香も同じ販売職なのだし、夕方から閉店にかけて店が混んでしまって、今日は忙しいのだろう…と思い、ふっと淳史は空を見上げた。
雲行きはあやしく、朝の天気予報では深夜過ぎに雨の予報が出ていた。

明香は店を20時半過ぎに出ていた。
すると徹はメモに書かれた通りに、店の近くで待っていた。

「ふ…深尾くん。」
明香はドキドキしながら徹のほうに歩いていく。
「ごめんね、仕事後に呼び出したりして。疲れてるよね…?」
ふるふると首をふり、明香は徹のほうを見上げた。
徹から少し汗をかいた冷たい缶ジュースを手渡され、明香はそれを飲みながら徹の様子をうかがう。
表参道から少しそれた場所までゆっくり歩き、芸能人も多数住んでいる大きな薄オレンジ色の外壁のマンションの駐車場の壁に寄り掛かりながら、徹は話し始めた。

「急に呼び出したりして本当ごめん。」
徹が俯き加減で呟く様に言う。
「ううん。全然平気。どしたの?」
少し沈黙があり、
「明香ちゃん。俺、明香ちゃんの事、凄い好きなんだ。」
貫くような強い眼差しで、真っ直ぐに明香の目を見つめながら、徹が言った。
先程落ち合ってから、徹はなかなか明香と目を合わせなかったが、この時の徹の視線の強さに、明香は驚きのあまり声すら出ない。
ただ、視線を反らす事すら出来ずに硬直していた。

時間にすると1分と満たないだろう時も、随分長く感じられた。
徹が明香を突然強く抱き寄せた。
驚いた明香は持っていた缶ジュースを下に落としてしまい、カラン…と音がして、その缶から残ったオレンジのジュースが流れた。


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