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『とある普通の恋人達』
【女性向け 官能小説】

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『もっと、とある普通な恋人達;前編』-1

九月も半ば過ぎだというのに、蝉がまだ元気に鳴いている。

「いらっしゃいま…」
顔をあげた徹が、顔見知りの来店に気付く。
「明香ちゃん。こんちわ!」
明香はお昼ご飯を買いに、アジアンランチへやってきた。
アジアンランチは東京都内に何店舗かある、ワゴン車を使用した、アジア料理のランチを販売している移動式店舗である。

「あ、深尾くん。こんちわーっ。」
まだまだ暑さの強い陽射しを背に、ニコリと挨拶を返す。
「なんか、明香ちゃんちょっと久々だねぇ。今日は何にしよっか?」

深尾 徹はアジアンランチ青山店のスタッフで、そのホリの深い褐色の少年のような甘いマスクには、女性客のファンが凄く多い。

「今日もぶっかけランチBOXで、うーん…チキンバターカレーと、レモングラス春雨と…」

…ぶっかけとは、アジアンランチ人気のランチBOXで、6種あるアジア的なおかずから3種を選び、敷き詰めたご飯に乗せるというものだ。
「うーん…どうしよっかな…」
と明香が悩んでいると、徹が言った。
「このオクラとエリンギのやつ、美味しいよ♪明香ちゃんキノコ系好きでしょ?」

きょとーんとした顔で明香が徹を見つめる。
「うん。けど何で知ってるの…???」
不思議そうに徹の顔を見つめる明香に、眉尻を下げて少し慌てたような、困ったような顔で、徹が答えた。
「だって明香ちゃんいつもキノコ系のものを選ぶから…。」
ああ、そうか…と納得して明香は、
「じゃあそれにする!」
と、躊躇いもなく答えた。

他愛のない会話を2、3交わしつつ、支払いを済ませ、明香はアジアンランチのワゴンを後にした。


仕事が終わり、帰宅後、明香はいつものように自分の部屋のソファーでスヌーピーの特大なぬいぐるみを抱き抱えながら、淳史とラブコールをしていた。
明香は、淳史と毎日毎日いつでも連絡をしたいが為に、ずーっとDoCo○の携帯だったが、先月淳史を巻き添えにv○daf○neに変えたのであった。
v○daf○neにはラブ定額というものがあり、明香⇔淳史の通話やメールは、し放題なのである。

そのお陰で明香は一日に何度も何度も、たくさん気兼ねなく淳史へメールや電話が出来る様になった。
「今家出たょ〜」
「今表参道駅に着いたょ〜」
「今からお昼だょ〜」
「今から夕方の休憩だょ〜」
「今から帰るからね〜」
「電車降りたょ〜」

お陰で淳史はうかうか携帯を手放せない。
明香は世界で1番といってもいいほど心配性で、淳史からレスがないと、不安をあらわす絵文字の付いたメールがすぐさま飛んで来るのだ。

「でねー、選んでくれたキノコのやつが超美味しかったの!あっくにも食べさせてあげたいなぁ〜。」
「ふーん。でもすげぇよなぁ…えらい数をさばくランチ販売で、客一人一人の好みを覚えてるなんてなぁ…」
「きゃははっ!あっくは顧客ノートとか書かないと、大事なお客様のことも覚えらんないもんねーっ。」
一日の出来事の簡単な報告をしつつ、笑い合う二人。
ちなみに「あっく」とは淳史の学生時代からのあだ名である。


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