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上野家のある週末
【SF 官能小説】

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訪問者-2

恵の前に透明な膜が瞬時に出来、赤い光を吸収する。恵のブレスレットの防御機能が働いたのだ。恵は更に残像が残る程の速いスピードで男との間を詰めると掌底突きの形で片手を出す。

軽く手のひらで男を押した様に見えたが男は数メートル飛ばされ、

「ぐわぁ!」

と声を上げ壁に激突する。恵が瞬時に男に近付き、男の背中を左足で踏みつけ男を床に抑える。男は抵抗しようと動くも恵の足はびくともしない。男は手に持っていた赤い光を出す武器を恵に向けようとする。

恵は右手を出すとブレスレットから青い光が走るや男を貫く。男は、

「ぎゃあー!」

と悲鳴を上げ手に持った武器を離した。恵は右手を男に向けたまま、その赤い光を放つ武器を取り上げて地下室の隅に放る。そして男の体に有る武器と思われる装備品と他の物も全て取り上げ、同じ隅に放ると左手を向ける。ブレスレットから真っ白い光が走り男の装備品に当たり、まとめて宙に浮かぶと今度は右腕を纏まった装備品に向ける。するとブレスレットから赤い光が走り、装備品は一瞬で燃え上がり僅かな煙を出して消滅した。

「答えろ!シップに何をした。」

と右手を男に向けたまま恵がベガァ語で大きな声を出して聞く。男は恐怖に顔を歪めながらも恵を憎々しげに睨み、

「お前の船は乗っ取った。」

と叫ぶ、

「その船はもう俺の物だ。」

と続ける。恵が冷笑して、

「ベガァにアルファの船が乗っ取られる訳が無い。」

と静かに返す。男はせせら笑い、

「この船の収納ユニットが開いて、俺がいるのはどう説明する。」

と言い放つ。恵はその言葉に顔をしかめる。

(確かに、この男の言う通りだ。)
(シップは乗っ取られたのか?)

と不安が頭をよぎった時、

〈V、Vel、ごめん…なさい…〉

とマザーの声が頭の中に聞こえてくる。恵は、

(何が起こったの、マザー?)

と慌てて思考を送ると男がジタバタ体を動かすので抑えてる脚に力を入れる。男が顔を苦痛に歪ませ、

「ぐっ、おぉ‼︎」

と悲鳴を上げる。恵は男を睨み付け、

「歩けない体になりたくなければ、静かに!」

と怒鳴り付けると男は大人しくなった。それを待っていたかの様に、

〈ベガァ…に…システム占領…攻撃を受けて…今…修復中…〉
〈ベガァは…私達…の…哨戒…センサー…を…占拠か…同じ様な…ユニットを置き…ウイルス…を送った見たい…〉

とマザーが説明する。恵は信じられなかった。自分のシップがウイルスデータ攻撃を許し制御がままならぬ状態だとは。男を見て、

「どうやって我々のシステムに侵入を?」
「あなた達の技術力では無理な筈。」

と聞くと男はニヤニヤ笑い、

「その過信がアルファらしい。」
「お前らも間抜けな訳だ。」

と言い得意気に話した所によると、以前に偶然拾得したアルファの哨戒センサーを人類の衛星近くに置いた所、アルファの哨戒センサーリセット信号を受信、予め入れていたデータウイルスを送信出来たらしい。

恵はショックを覚えた。哨戒センサーは使う前に一度リセットしてプロテクトを掛ける。そのリセットとプロテクトの信号が盗まれた哨戒センサーまで届いていたのだ。

(まさかベガァが私達の哨戒センサーを持っていたとは!)
(でもこのところ、見られた不具合の前兆は?)

と疑問が出てくる。男に、

「最近、盗んだ哨戒センサーを動かしたか?」

と聞くと男は否定する様に首を振り、

「いや、してない。」
「だが、あのセンサーは元々故障していて破棄された物の様だ。」
「我々が直したが、最近誤作動した様だ。」

と言う。恵は、

(その誤作動を私は哨戒センサーの不具合と判断したのか。)
(確かめもせず、リセットした私のミスだ。)
(その結果、この男が我々の存在を知りここに居る訳だ。)

と落ち込む。

〈大丈夫…よ…恵…〉
〈私は…修復…可能…〉
〈修復…に…地球…時間…で…数時間から…数週間必要…〉

とマザーが答えた。恵は少し光明が見えた。マザーが修復出来ればシップは制御出来る。

〈これから…シップ…の…全機能…停止…して〉
〈修復に…全ての…エネルギーを…使う…〉
〈これには…あなたの…許可が…必要…〉

とマザーが許可を求めて来た。恵はすぐさま、

(許可します。)
(それまでシップを完全閉鎖する。)

と答えるとマザーが、

〈了解…〉
〈これから…全機能…閉鎖…〉
〈今…判明…あなたが…先程…送った…応援要請…はベガァ…に…より却下…された…〉
〈応援…は…来ない…頑張って〉

と何とか返答するとシップは光っていた明るさが無くなり機能を停止した。恵は、マザーの最後の言葉に衝撃を受けた。

(シャトルもシップの制御下にはある、あの応援要請を送った時ベガァに乗っ取られていたとは。)

と応援もマザーの援護も受けられず、単独でベガァと立ち向かう事になったと気付く。ふと気になった事がある、

「お前は、私より先にこの惑星に来たのか?」

と男を見据えて答えを迫る。

「多分、そうだ。」
「お前らに備えて、地球時間で30年前に置いたからな。」

と男はあっさりと答える。恵はベガァが先に来ていた事よりも17年も気付かなかった事に驚きを隠せなかった。

「よっぽど、細々とこの星で活動していたのね。」

と男に言うと男は、

「うるさい!」
「お前にとやかく言われたく無い!」
「俺達は、この星に住み働き資源を得ているだけだ。」

と怒鳴る様に言う。恵は、

「俺達?」
「あなた達の惑星探査は普通二人一組!」
「もう一人は何処?」

と鋭く追求する。


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