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上野家のある週末
【SF 官能小説】

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訪問者-1

正輝は、母親が屋根裏部屋から降りて納屋に行くのを居間から見ていた。母親がたまに納屋に行くのは知っていて、自動車や芝刈り機を外に出すと予想通りだと納得の笑みを浮かべる。

毎回そうなのだ、一度聞いて見たがいずれ教えるとだけ母親は言うだけだった。これも我が家の秘密の様だからなと思いながら二階の自分の部屋に戻ってパソコンでゲームでもやるかと椅子に座る。

ゲームに熱中して気付いたら数時間経っていた。ゲームを止めベッドに寝転びあくびをしながら、

(パソコンでエロ動画でも見るか。)

と思った時、開けて置いた窓から音が聞こえた。足音の様だ。

(誰だろう?)
(今日は土曜日だ、電気やガスの業者の人じゃ無いだろうし。)

と気になる。元々家は、古い別荘を買い取った物で場所も町から離れている上、近くに人家は無かった。その為母親と二人暮らしのこの家に来客はほぼ無い。母親はこの辺りの出身では無いし、亡くなった正輝の父の保険金で生活を賄っているので母親は働いていないので出掛けるのは滅多に無く。たまに町に食料品の買い出しに出るだけだった。ふと、

(もしかして、浴室の扉直しに業者の人が来たのかな?)
(聞いていないけど。)

と正輝は心配した。母親のシャワーを覗けなくなると思ったのだ。窓に近寄り、外を見ると男がいた。

その男が気付いた様に正輝の方を振り向いたので慌てて窓から離れる。正輝はその男に普通で無い物を感じていた。男は全身黒づくめの服装の黒人で、2mを優に越す身長で筋骨逞しいプロレスラーの様な体型をしていた。

(こんな田舎に外国人、珍しい。)
(強盗とかじゃ無いなら良いけど…)

と正輝は怖気付いていた。母親には、普段から見慣れない人物が来たら応対しない様に言われていた。正輝は部屋を出て階下への階段に向かう。男が玄関に来て呼び鈴を押したらどうしようと正輝が悩んでいると、一階の窓から男が母家では無く納屋に向かうのが見えた。正輝は、

(母さんの知り合いかなぁ?)
(客が来るとは聞いてないけど。)

と思った。正輝にとって母親はミステリアスの存在だ。余り自分の事を話さないし、母親を知る人物にも逢った事が無いからだ。母親の恋人も見た事も無い、外出も買い物位でたまに納屋に籠るだけだった。

(俺が学校に行ってる間に出来た恋人かも知れないぞ。)
(でも、違った場合は?)

と正輝は男が招かれざる客の場合に備えて納屋に行こうと決心した。だが、

(そうそう事件なんて起こるもんじゃ無い、こんな辺鄙な片田舎じゃ。)

と楽観視してた。実際、この近辺で何か事件が有った事など無い。心配なのは母親の恋人だった場合だ、そうだったら自分は冷静でいられるかなと自信が無かった。



 恵はシャトルから自分の納屋を観察していた。納屋は数百メートル先にある。シャトルを最小限のエネルギーで稼働出来、音も出さない偵察モードにしていた。透明な迷彩モードで電柱近くから伺う。電気の流れがシャトルの微細なエネルギーをカモフラージュしてくれるだろうと期待して。

納屋に人影が見えた。シャトルのカメラで拡大映像を確認して体が強張る。黒づくめの服装、体型、身体に身につけている装備から間違い。

(ベガァ人だ!)

恵は、ベガァ人に悟られるのは承知の上で応援の為通信手段を使おうと即断する。シャトルの操作画面を軽く叩き、応援の旨のメッセージを送る。

(多分、ベガァ人は気付いただろう。)
(応援が来るまで時間稼ぎをすれば良い。)

と恵は意を決してシャトルを納屋の裏に近づけると、外に出た。マザーが、正輝が心配だった。スーツを透明の迷彩モードにすると恵は見えなり納屋の入り口へ慎重に近付く。

恵が納屋に入ると床の地下室への扉が全開に開いていた。恵は訝しむ、

(マザーが開けた?)
(何故?)

と不審に思った。地下室自体がアルファの収納ユニットで入り口を作動させる事が出来るのは、マザーと恵だけだ。恵は地下室へと飛び降りた。

恵の前にはシップを見ているベガァのMタイプがいた。恵が地下室の床に着地した音に慌てて振り向く。2mを超える長身で肩幅も広く、見た目は人類の白人タイプに見える。肩口まで金髪を伸ばしていた。そのハンサムなベガァ人は、恵を脚から顔まで舐める様に見て、

「うん?コスプレか?」
「どこから迷いこんだ、スーパー○ール。」

とコミックのヒロインの名を口にする。恵は意外に思った。

ベガァ人が、地球語のこの国の言語で話し掛けたからでは無い。ベガァもアルファの多目的チップに似た物を使い、即座にその星の言語を解析脳にインプットし流暢に話せるのはアルファと同じだからだ。

恵が意外に思った理由は、恵の格好がコミックのヒロインだと知っていたからだ。恵は、

(ベガァ人は、自分達に利益が有る物しか興味を示さない。)
(文化や娯楽などは無関心の筈だ。)

と疑問を持つ。恵は、

「あなたがこの入り口を開けたの?」

と同じく日本語で話す。男は面倒臭そうに、

「取り込み中だ。」
「ここから出て行きな、お嬢ちゃん。」
「後悔する前にな。」

と恵を睨む。恵は見つめ返し、

「私のシップに何かしたの?」

とベガァ語で返す。途端に男の顔が強張り、次に凶悪な人相に変化した。ベガァ人の特徴だ、顔が気持ちと連帯して変化するのだ。

「貴様、アルファか!」

と少し下がりながらベガァ語で叫ぶ。恵は前に歩き男の間を詰めると男は腰に差した短い金属製の物を掴んで恵に向けた。金属製の物体の先から赤い光が恵に走る。


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