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人気少年【制約】
【学園物 官能小説】

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人気少年【制約】-10

「真緒くんが春霞ちゃんになんか話あるらしいよん。ちょっと聞いてやって」
春霞はボクの後ろに立ち、ずいと手で押した。
麻理子との距離が縮まる。不意に麻理子と目が合った。
「……あの……」
何から言えばいいのか、有り余る言葉の塊が喉にぎゅうぎゅうに詰まり、声が出ない。
無意識にボクは助けを求めるように春霞の方を見た。ガムを膨らましている。
しかし、春霞は何を勘違いしたかこんな事を言い出す。
「あ、ゴメーン。あたしお邪魔だよねえ〜。んじゃ、後はお二人さんでどぞ〜」
春霞はガムを口の中に戻すと、小走りで敷地を出ていってしまった。
……麻理子と二人きりになってしまった。
ボクが目を麻理子へ向ければ、麻理子は目を逸す。麻理子が目をこちらに向けると、ボクも目を逸してしまう。
話が続かないどころか話が始まらない。気まずい沈黙が流れている。
もしかしたら永遠にこの沈黙が続くのでは。そう思いかけてたところへ、思わぬ助け舟が出た。
……雨だ。
先までは小粒とも呼べないくらい少量だった雨が、突然強く降り出したのだ。
雨がボクの髪を叩き付け出したが、ボクは思わぬ話出しの種に心踊った。ボクは咄嗟に言った。
「……あ、雨だね!」
「う、うん……」
「……」
「……」
「ボ、ボク帰ろうか……?」
ちょっと待て、違う違うこんな事言いたいんじゃない、何を言っているんだボクは!
麻理子が『そうだね』とでも言い出さない内に取り消さなきゃ。
「いや、今のは……」「真緒」
え?
麻理子の手が、ボクの腕を掴んだ。
「え……」
麻理子は、しっかりボクを見つめながら言った。

「ここいたら濡れちゃう。ウチ入っていいよ……」

ボクの胸が、燃え上がったかのようにいきなり熱くなる。
麻理子がボクの腕を引っ張る。ボクはそれに従った。

ボクは麻理子の家に入った。その内装は、家の外見からは想像出来ない程におしゃれで小綺麗だった。
視線を少し左に逸らせば縁取りが無駄に豪華な大鏡。右に逸らせば木で作られた靴箱の上に、よく分からないが値打ちはありそうな置物がズラリ。
それに驚く程静かで、まるで誰もいないようだ。いや、実際いないのか?
「靴脱いで、入っていいよ」
ボクはその麻理子の言葉に従い、靴を脱ぎ玄関先に足を踏み出す。
それと同時に、ボクは疑問を口にした。
「いま、この家誰もいないの?」
不思議とスムーズに言葉が出る。
「うん。お父さんとお母さんは、買い物とか近所さんに挨拶周りとかしてる。」
なるほど、あした引っ越すからかあ。
……と口をついて出かけたが、ボクは一旦喉に止どめた。
……しかし、ボクはそれを口に出した。少し驚かしてみたかったのだ。
「あした……引っ越すから?」
麻理子はその問いに少しだけ驚いたような顔を見せたけど、すぐ表情を戻し言った。
「うん、そういうコト」
「沖田さんは行かなかったの?」
ポンポン言葉が出てくる。
「うん。……色々家で考えてたくてね、駄々こねたの」
胸が痛む。
それって、ボクのことだよね……そう思った矢先だった。

「真緒のこと、考えてたんだ」

胸が、また熱くなった。


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