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こいびとは小学2年生
【ロリ 官能小説】

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メロンソフトと芝生と世界にひとつだけの笑顔-4


 衝動的にしのちゃんを抱きしめていた。こみ上げてきそうな嗚咽を必死で抑える。
 やっぱり俺、情けねえな。いい年して、しのちゃんよりも一回り以上年上なのに、しのちゃんを気遣う言葉ひとつ言えないで、逆にしのちゃんから慰められて。しのちゃん、泣き出すのを我慢して俺をせいいっぱい励ましてくれているのに、その俺はなんだ。
 俺の胸の中に抱きすくめられたしのちゃんの両手が、俺の背中をやさしく撫ぜる。情けないけれど、俺は「こいびと」のぬくもりに甘えていた。まわりにいるはずの他の家族連れやカップルの声も気配も届かない。柔らかな春めいた日差しの中で、芝生としのちゃんの匂いに包まれて、俺はいろんな感情が入り混じった涙を静かにこぼしていた。
 学校の、授業の前後に流れるようなチャイムがスピーカーから静かに流れた。しのちゃんが背中から両手を離し、俺の肩越しに駐車場のほうを見る。

「お兄ちゃん、十二時だよ。あたしおなかすいたー、ハンバーグ食べたい」

 にへー、と笑うしのちゃんの瞳はまだかすかに赤いけれど、涙は乾いている。この切り替えというか、幼女特有の無邪気さというか。けど、そんなしのちゃんに今は救われている。

「うん、じゃあさっきのサービスエリアにご飯食べに行こう。しのちゃんはハンバーグ、俺は唐揚げだな」

「あたしにもいっこちょうだい」

 いたずらっぽく笑うしのちゃんにつられて俺も笑顔になる。頬の涙の流れた跡がベリベリと軽くひきつるけれど、その表情がおかしかったのかしのちゃんがきゃははー、と笑い声を上げた。



 改札口を抜けると、駅前ロータリーの向かい側にあるコンビニのサイン看板にはもう灯りが点っていた。だいぶ暖かくなったとはいえ、さすがにまだ日は短い。

「お兄ちゃんのおうち、寄っていい?」

 歩道橋の下で、手をつないで歩くしのちゃんが俺を見上げて言った。大きくうなずくと、しのちゃんは左腕をまっすぐに上に伸ばしてピースしながら、わーい、と笑顔になった。
 玄関を入り、ふたり揃ってアウターを脱ぐと、しのちゃんが俺にぎゅっ、と抱きついてくる。その8歳の華奢でちっちゃな身体を、俺の身体全体で包み込むようにして抱きしめる。しのちゃんを抱きしめながらゆっくりとしゃがんで、しのちゃんの細い左肩に顔をうずめるようにする。しのちゃんのうなじの肌から、しのちゃんの小学2年生の幼い体臭が立ちのぼる。

「お兄ちゃん……」

 しのちゃんの温かな吐息が俺の首筋にかかる。さっき芝生の上で俺をやさしく、そして強く抱きしめてくれていたときとは違って、身体の力を抜いて、くたん、と、俺の身体に幼い身体をもたれかけるようにしているしのちゃん。抱き上げても、お姫様抱っこしても、裸でペッティングして俺の上半身に8歳の裸身をあずけてきても、これまで一回も「重い」と感じたことのない、しのちゃんの学童体型の身体。でも、その「重み」、その存在感や愛おしさは小学2年生女子の標準をやや下回る体重よりも、実感がもっともっと遥かに大きい。
 エアコンのスイッチは入れていない。でも、俺の全身は、しのちゃんのぬくもりを分けてもらってぽかぽかと温かく、身体中の毛細血管に穏やかに血流が流れ、自律神経が究極まで安定している。芝生の上でしのちゃんに涙を見せた気恥ずかしさも、しのちゃんを大人の立場から、「こいびと」の片方として気遣いすることができなかった情けなさも、そのしのちゃんによって癒やされていく。
 しのちゃんの右手が俺の背中から顔へと、ゆっくりと擦るように上がっていく。細い人差し指が、さっき涙が流れた頬を撫ぜる。

「お兄ちゃん、あたしお兄ちゃんがだいすき。ずっとずっと、お兄ちゃんの『こいびと』でいたい」

「俺もだよ。しのちゃんは、俺にとってただひとりの、世界でいちばん大切な『こいびと』だよ」

「うん。だから、ちょっと会えなくても、おうちが遠くなっても、あたしはだいじょうぶ。どこにいてもいっつもお兄ちゃんがそばにいてくれると思ってる。あたしのおうちでも、学校でも。だから、お兄ちゃんもそう思ってくれたら、さびしくないよ」

 しのちゃんの頬が俺の頬に重なる。ふわ、と、しのちゃんの息臭が湿った吐息と共に鼻腔をくすぐった。

「ありがとうしのちゃん。俺、ちょっとでも早く宮古島に行けるようにするから。それまで、ママと一緒に待っていて」

「うん!お兄ちゃんがみやこに来たら、あたしたちけっこんするんだもん!」


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