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銀の羊の数え歌
【純愛 恋愛小説】

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銀の羊の数え歌−15−-3

再び降りてきた沈黙が、居心地の悪さも手伝って永遠に感じだした頃、僕は頭の片隅で鳴り響く警告音を無視してついに顔をあげた。 「結局・・・」
意を決した僕の声は、少しうわずっていた。 「柊さんの、体はどうなって、いるんですか。検査結果は、どうだったんですか」
こっちを向いた畑野さんは、初めて僕に気が付いたようにゆっくりまばたきを繰り返すと、何度目かで判断不明の奇妙な表情を浮かべた。
「彼女の病気は、難しいわ」
と畑野さんは言った。
「心臓の血管が、しだいに細くなっていく、ちょっと珍しい病気なの」
「手術は?」
と僕はきいた。
彼女は、僕から目をそらして、首を振った。 そして、それが世界の終わりであるかのように感じた次の瞬間、彼女はついに言った。
「柊さん、もう、長くないわ」
音も、暑さも、まるで闇に隔離されたように僕から遠ざかった。頭の中の思考回路が、ショートしたように考えることをやめ、真っ暗になった。
暗黒よりも、さらに暗かった。
鉛のように、もしくは電池の切れたロボットみたいに、首から下が動かなかった。
でも、その片隅で、畑野さんの言葉の意味を確かに理解している自分がいた。
(柊さん……)
ギュッとまぶたをとじて、歯を食いしばる。
(……もう、長くないわ)
やり過ごすには、突き付けられた現実は、あまりに冷たかった。


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