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パンドラの箱
【ファンタジー 官能小説】

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パンドラの箱-12

「最低半年、身を隠せ。そうすればこのことはなかったことにしてやろう」それくらいのお仕置きは必要だろう。
≪その間に、悪魔ごっこなんか忘れて、新しい人生を歩んでくれればいいが≫
「おまえら裏切んなよ」
「自分から犯人ですよと、出て行くようなバカはいねぇよな」
「僕に連絡なんかしないでよ」
馬鹿どもは互いをけん制しながら走って行った。
この程度の惑わしなら子供たちのしてきたことに対して倫理的に問題にはならないだろう。
ウイッチはやりすぎると他のウイッチに恐れられて、よってたかって潰されることがある。
何ができるにしても大切なのはバランスなのだ。
≪さて、行くか≫ 本当の用事をしに行く。
「わしのミスだ」母親にすべてを明かした。『報告は残さず、余さず』都合の悪いことほど言わずにおくと、誤解のもとなのだ。
たとえ師弟関係があろうと、力を持つ者同士は小さな誤解からでも殺し合うことがある。
「羞恥心をなくさせる練習や、なまじ儀式での裸を経験してるものだから、簡単に脱がされてしまったのかもしれない。もし処女だと知られていたら、生贄にされていたかもしれない。熱が下がったら山の砦跡へつれて行く。そこでしばらく様子を見たい」
「そうですね」 母親はナイフを持たずに抱きしめてくれた。
そう、あれが本当の魔だったら、こんなことではすまない。
二人ともそのことを分かっていた。

パンドーラは熱が下がっても体は元に戻らなかった。骨ばった体は女の子には見えない。胸の脂肪もなくなっていった。
病院の検査ではホルモン異常だと言われたが、パンドーラは女性ホルモンの投与をかたくなに拒否した。
「俺は女じゃない」
それに合わせて狂暴性も増した。すぐに切れ、周りの人に対して暴力的になった。
母親とわしだけがパンドーラのめんどうをみることができた。
山の砦跡で、二人で生活するようになってからも、悪魔への興味は消えなかった。
隠すよりはと、すべてを教えてやる。本当の悪魔と、悪魔と称される神には違いがあるのだ。
黒魔術に堕ちるよりは、古代の神に思いをはせてくれる方がましだ。もっと知識と経験が増えればわかる日も来るだろう。
そうでなければ、このままでは、ここに閉じ込めるしかないのかもしれないが、わしが死んでからのことが心配だった。
しかし、それは杞憂となった。男らしさと悪魔好きは消えなかったのだが、それでも時間と共に明るさを取り戻してきた。
あの経験も少しずつ消化できてきているようだった。
そんなある日、私はバンドーラの下腹部に呪文が刻み付けられているのに気がついた。
「誰がやった」 パンドーラは黙っていたが、本人の了承なくできるわけがない。この呪文のせいでこの子から女らしさが消えているのだ。
私は呪文を彫った者を探した。 こんなことのできる技を持った彫り師はそんなに多くない。
そしてその男を訪ねた。
「三人に負わされた傷があの子を変えてしまった。いやごまかすのはやめよう、老いぼれた私がこんなことを許してしまったのだ」
彫師はじっと話を聞いてから、「依頼された仕事はしなければならない、だけど私もロマンチストなんです。どうしても王子様の物語が忘れられないのです」
「どういうことだね」
「あの呪文のサークルによって、あの子の男っぽさは強調されます。呪文の輪が切れない限りは不可能なのです」
「タトゥーは消すことができない。皮ごとえぐり取れと言うのか」
「魔を使えばできないこともないでしょう。だけど今、あの子はそれを望んでいない。それでは同じことを繰り返すだけですよ。私はロマンチストなんです。あの子にも言っていないのですが、呪文の描かれている位置を覚えていますか」彫師が微笑んだ。
「円の下側は性器にかかっています。もしあの子にそれを望ませることができ、そこが開けば。その間は魔法円が切れるのですよ」

パンドーラは時々買い出しに里へ下りていたが、母親が体調を崩したのをきっかけに、話をして、魔女の修行はしばらく休むことにした。
それからは里で暮らして、母親の用事をするようになった。
山には朝のうちに食材を運んでくれる。そこでこの子の様子を観察した。


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