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ロスト・マイ
【ファンタジー 官能小説】

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ロスト・マイ-9

あれからクロの練習はさらに厳しくなりました。毎週のように貸しスタジオに呼んでくれます。
≪プロを目指すんだから≫と、あたしも気を抜きません。
それでも、練習の後、逃げるように帰って行きました。きっとクロもプロを目指して気を張っているんだと思います。
それとも、「ねえ、彼女さんができたの?」
「どうしてそんなこと? そんなのいないよ」目を丸くして言います。
「じゃあ来週の誕生日、あたしに付き合って。食べに行こ」
「だけどさ」
「これぐらいあたしにお祝いさせて」
「わかった」

その日はいつもよりおめかしします。
勝負下着までつけていきましたが、これはまずかったかもしれません。逆に気になって、しばらくは変な会話になってしまいました。
でも「きれいだよ」と言ってくれたので満足です。
その日は映画を見て、暗くなってからファストフード店の前につきました。
「あっ」そこで初めてこのムードのなさに凍り付きました。
クロは笑って、肩を抱くとそのまま店の前を素通りして、そんなに高級そうではないけど、ふたりで落ち着けるレストランへ入りました。
テーブルは頭の高さまで塀と植草に囲われて、椅子ではなく三方を囲うシート席になっていました。
二人で並んで座ります。まるで恋人同士のようでした。まずはケーキだけをひとつ注文しました。他は後です。
やってきた小さなケーキを二人の間に置くと、ポケットからとっておきの、『手のひらサイズ、ネジネジキャンドル』を出してケーキにさします。
「あっ。怒られないかな」火をつけようとして、急に不安になりました
「やってしまえ」クロが火をつけてくれます。
彼は薄暗い照明の中、じっと炎を見ていました。
「どうしたの」
「ありがとう。俺のために」
「クロの方がいっぱいしてくれるじゃない。誕生日、おめでとう」
「ありがとう」そこで奇跡が起こりました。
クロがキスしてくれました。チョンとではありません。もう一度言います。挨拶みたいな、チョンとしたキスではありません。
店員に見つかる前に火を吹き消しました。
それから、「お祝いなんだから、好きなだけ食べよう」正式にいっぱい注文をしました。
会計はクロがしてくれました。いくらだったか教えてくれません。
でも、財布から出ているものを見ていたら、ひょっとしたらあたしが買ったギター代くらいかもしれませんでした。
血の気が引きました。
それから何度かクロのアパートにも行くようになりました。
そんなある日の練習の後です。
「ちょっとうちに寄ってくれないか」
いっしょにアパートに行きました。


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