恥・密・暴・露-3
そして残るは、紗雪自身の番だ。
「身長159cm、B76W58H78、と。スリムな子ですね」
胸の大きさとか、女性としての身体的な成熟とか、今までそんなに気にしたことはなかった紗雪だが、こんなふうに聞こえるように言われるとさすがに恥ずかしい。
そしていくつかの、聞かれてもさすがに恥ずかしくないような項目に続いて、やはり性徴のことにも立ち入られた。
「初潮は中1の9月……今時の子にしてはかなり遅めですね。早生まれのせいでしょうか。それから、陰毛のところに何も書いてませんが、書き忘れたのですか?」
記入内容を読み上げられると知ったときから、そこに突っ込まれることは予想のついたことだった。彼女はさっきからそれが気になって仕方がなかった。
彼女は書き忘れたのではない。書けなかったのだ。
「空欄は困ります。口頭でいいですから、ここで補ってください」
「あの……」
紗雪は顔を真っ赤にし、口をつぐんだままだ。
「どうしたのですか?」
その真相を面接担当の教師ばかりか、同年代の女の子たちの前で言わされるのは恥ずかしさで気が滅入る。
「このままだと書類不備で、不合格になりますよ」
だが福部にそう詰め寄られて、観念するしかなかった。
「すみません……私……あの、まだ、生えてないんです」
紗雪は震える声で明かした。中学卒業も間近で、この日ちょうど15歳になった今も、彼女の秘裂はまったく毛で覆われていない。いまだに童女のようにツルツルのままなのだ。
女の子も思春期になれば性器の周りに毛が生えてくる。それは小学生の時の性教育の授業でも習っていたことだ。乳房の発達や月経の始まりといった他の第二次性徴とだいたい同時期だというのに、それらは彼女もやや遅めながらちゃんと迎えた。にもかかわらず陰部の発毛だけは兆しも見られないまま、もうすぐ中学を卒業するところまできている。
中2の後半ぐらいから気になりだしたとはいえ、世の常の娘たちほど性的なことや自分のからだへの関心が強くなかった彼女は、そこまで深刻に悩んだことはない。だが事の反面としてその手の話はたいへん苦手だから、こういう場で公然と言わされるのは屈辱的だった。ここには同年代の女の子たちまでいるから、他の2人にどう思われるのかも気になった。
「そうなのですか。それなら最初からそう書いてくださいね」
福部は事務的な調子で念を押した。
奈々美と理真の2人はきょとんとした面持ちで、紗雪の方を見やる。
明らかにその目は、彼女の股間に注がれていた。もちろん無毛の陰部を直接見られているわけではないが、それを何か下着越しに見透かされているような気がして、紗雪は恥ずかしさに両手で覆った。
とはいえ他の2人だって何より自身の恥ずかしさで頭がいっぱいで、紗雪の秘密にそれ以上の好奇心を注ぐ余裕など本当はないだろう。
「当たり前のことでしょうが、あなたもセックスの経験は無いですよね」
あからさまに「セックス」などという言葉を使われ、それだけで純真な紗雪は顔が赤くなるほどだった。
「も、もちろんありません……」
すっかりどぎまぎした調子で、彼女は答えた。
「皆さんについて大事で基本的な情報は、これで把握できると思います。ご協力ありがとうございました」
そう告げられた時には、もう紗雪は息を切らしかけていた。羞恥に耐えるために神経もすっかりすり減らされていたのだ。
ともかく、ようやく恥ずかしくてたまらない時間も終わった。そう彼女も、おそらく他の2人も思いかけた矢先、土屋が告げた。
「それではいよいよ、皆さんが和天高等学校の特待生として入学する資格を最終的に確認する段になりました」