羞・恥・面・接-2
「でも、特待生として全校生徒の範たる者は、見えないところまできちんとしていただく必要があります」
最初、紗雪には言っていることの意味がわからなかった。
「わが校の特待生として相応しくない下着などつけていないか、ここから確認します」
土屋のこの一言で、受験者3人は唖然となった。
入試面接の場で、下着を検査しようというのだ。
それとともに、福部がそれぞれの足元に脱衣籠を置く。本当に制服を脱いでここに入れろと言わんばかりだ。
自由な校風の和天高校に、下着検査などというブラックな校則があるなどとは聞いていない。紗雪が通ってきた城富中だって、そんな無茶苦茶なことはありえなかった。
「いくらなんでも、そんな話聞いてません……」
「ええ、あなたたちが普段からどんなものを身に着けているかを確かめるために、あえて抜き打ちということにしました」
もちろん、紗雪は実際に変に思われるような下着など着けていない。もともとおしゃれに興味は薄い彼女だが、そもそも家の経済事情からして買える服も限られていた。誰かに見せるつもりも無い下着など最もお金をかけられないもので、それに凝るなど考えられもしない話だ。
だからといって、そのまま検査を受け入れる気にはなれなかった。
「そんなの無茶苦茶です! セクハラと変わらないじゃないですか!」
それは他の2人も同じ様子で、奈々美は顔を真っ赤にして抗議した。
「この検査に従えないのであれば、本学園の特待生として迎え入れることはできません」
土屋はきっぱりと宣告する。
紗雪は、迷った。いくらここには同性しかいないといっても、下着を検査されるなど恥ずかしくてたまらない。こんな理不尽でブラックな面接を受けるぐらいなら、すぐにでもこの部屋を飛び出してしまいたい思いに駆られる。
だが、そうすれば名門校に破格の条件で入れる千載一遇のチャンスを棒に振ることになる。研究者になる夢も諦めなければならないかもしれない。先生も母も友達も合格を確信して送り出してくれた。いったいどう顔を合わせればいいというのか。
そうした葛藤は、他の2人もきっと同じはずだ。特に理真は、顔を真っ赤にして、身を震わせている。
だが次の瞬間、紗雪には目を疑わせるようなことが起きた。
もう1人の、奈々美の方があろうことか服に手をかけ、脱ごうとし始めたのだ。
「あ、あの……」
戸惑う紗雪と理真をよそに、奈々美はセーラー服の上衣を取った。
「私は、どうしてもこの学校に入りたいんです」
そしてブラウスを脱いで、ブラジャーだけの上半身を晒した。レモンイエローのリボンがあしらわれた白のブラだ。脱ぐまではそこまで目立たなかったが、胸のふくらみはかなり豊かだ。
「下もよ」
福部に言われるままに、奈々美はプリーツスカートも取った。白のソックスまで脱いで、完全に下着だけの姿になる。やや低めの身長ながら、胸もそうだが、下半身も中学3年生の少女としてはかなり発達していることがわかる。
当然というか、ショーツもブラと同じく白だ。
他の2人は、それを前にして唖然となるばかりだ。そこに福部が促してくる。
「どうするの? このままなら入学できるのは彼女だけよ」
紗雪は、いよいよ追い詰められた。
今逃げ出したら何もかもがぶち壊しになる。ここまで来たら合格するしかない。そのため、この場だけということなら仕方がない。ここにいるのは教師も生徒も女性ばかり。だからそこまで恥ずかしがることもない……。
半ば無理にでも自分を納得させ、覚悟を決めた。