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LOOSE
【その他 官能小説】

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LOOSEV〜FINAL〜-1

悠の家から逃げ出すように帰ってきて、どうやって自分の部屋に帰ってきたのかわからない。

私はひどく混乱しているみたいだ。

暗闇の中で膝を抱えて子供みたいに私はうずくまって泣いていた。

今の感情をどう説明していいかもわからなくて、とにかく悠の事は考えたくないのに頭の中は悠の事ばかりで…それは私をひどく追い詰めた。


ねぇ悠。
私のこの気持ちはどうすればいいんだろう?


悠の首筋にキスマークを見つけたあの時、私は自分の気持ちに気付いてしまった。
気付かぬフリをしていた悠を愛する気持ち。
悠と私の関係にあってはならない気持ち。

悠と知り合って1年ちょっとが過ぎた。色んな事を一緒に感じて一喜一憂して同じ時を過ごしてきた。
必ず一緒にいた週末も、体を交わす時間も、名前を呼び交わすその瞬間でさえも私には大切なものになっていた。いつしか私は悠を必要としていて…悠じゃなきゃだめで…―それは悠も私と同じでいるんだと思い込んで…信じ込んでいた。
…でも違った。
これは私が見た……私が見たかった甘い、甘い幻想…―。

ねぇ。
悠は今何を考えてる?
誰を見てる?
誰といる?
ねぇ…悠の中に私は少しでも映ってる??
誰か教えてよ…―。


ヴー…ヴー…


突然バイブレーションの音がして目をやると、床の上に放り投げられた携帯が液晶を光らせながら震えていた。
携帯に出ることすらけだるくて放っておこうかとも思ったけれど、あまりにもしつこく鳴るので菜々子はのろのろと携帯を引き寄せた。

“崎山悠”

…ドクン!
液晶を見た瞬間、目に飛び込んだ見慣れた名前を見て発信ボタンを押す手が止まった。

…悠…

また心臓が高鐘のように鳴り響く。
私の中で悠の声を聞きたいと素直に思う反面、悠の声を聞いた時の自分の反応に怯えている自分がいた。

…その内に着信は留守電に切り替わり、静まり返った部屋に発信音の音が小さく鳴り響いた。

ピー…
“……明日学校終わったら家にきて”

留守電に吹き込まれた悠の声は受話器を通して私の中にすんなりと自然に滑り込んできた。
それはさっきまで聞いていたのに懐かしくて…何より愛しくて。

…明日悠と…会える?


自分の気持ちに気付いてしまった今、今まで通りに悠と接する自信が菜々子にはなかった。
…でも。
このまま悠と会えなくなるなんて考えられる?
…だったら。
自分の気持ちを隠し通せる?
…じゃあ。
どっちを優先する?
…ドッチニスル??



「…菜々子大丈夫?」
『……もぅわけわかんない。』
ここは大学のカフェテリア。菜々子はうなだれテーブルに突っ伏していた。
煮詰まった菜々子はいつものように雪乃に相談を持ち掛けているところだ。
「ほらね、言ったでしょ。菜々子は悠君が好きなんじゃないかって。」
『…わかってるょ…』
「わかってないって。わかってたら今こんなにうだうだ悩んでないょ。」
雪乃はピシャリと言いのけて、いつものようにカフェオレをおいしそうにすすった。
『何もそんな強く言わなくてもいーじゃん。』
少しむくれながら菜々子もコーヒーをすすった。
「菜々子がイジイジしてるのが見ててたまんないの。で?どうするの?今日、悠君とこ行くの?」
雪乃の口から“悠”の名前が出てきただけで胸が締め付けられるような思いがした。
すすったいつものブラックコーヒーが苦く口の中に広がる。
そういえば、ブラック派になったのは悠の影響だっけ。
昔はブラックなんて苦くて飲めなかったけれど、悠の家にはミルクも砂糖も常備していないから必然的にコーヒーはブラックな訳で、いつの間にかブラックが飲めるようになっていた。

…ささいなところまで悠が私に染み付いている事がこうやって節々でわかる。
そんな悠を失ったら、今の私はなくなるんじゃないのだろうか?

『…悠に会うのが怖いんだ。今まで通り悠と接する自信がないの。』
「…」
『悠があたしの気持ち知ったら絶対悠はひくと思うんだよね。悠はそんな女好きじゃないから…だからそんな悠の反応見るのが怖いんだ…。』

お互いを干渉しない。
必要以上に相手を求めない。
そんなドライな関係を悠は求めているのだ。
私もそんな関係を好んでいたからこそ、悠は私を求めた。
それを“愛”だと勘違いしていたなんて知ったら悠はどう思うだろう?
変わってしまった私なんてきっと悠は必要としない。

そう思うと悲しみを通り越して自嘲する笑みが漏れた。
「…菜々子の言ってる事はよくわかるよ。菜々子の気持ちが今までの関係を崩しちゃうって事も。」
『…うん。』
「でもさ、そんな事全部ひっくるめて関係なしにしちゃってさ…菜々子は今一番何がしたいの??」

私が一番…したい事??
私が一番…今したいのは…

『…悠に会いたい。』

私の傍に必ずいるのは悠。悠の傍にいて私はずっと悠を見てきた。


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