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ノラ猫 
【ファンタジー 官能小説】

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ノラ猫-1

〇おれが覚えている限り、その女の子が連れてこられたのは、夕方だったと思います。
十四、五歳でしょうか。マルほどの年長の子が孤児院に来ることは今までありませんでした。ほとんどが乳児か幼児です。
黒髪をポニーテールにして、きれいな服を着た子でした。
こんな田舎者の集団とはちょっと違う、都会の洗練された雰囲気を持った女の子です。
来たとたん、みんなに囲まれて、質問攻めにあっていました。
特に関心が強かったのは、男子部屋の室長をしていたシュウという、いくつも年上の子でした。
スポーツで鍛えたいい体をしています。やせて小さいおれの体重ほどの筋肉を持っています。
何日かして、めずらしさもひと段落した頃のことです。裏庭の陰で、シュウがマルにキスをしているところに出くわしてしまいました。
見つからないように建物の陰に隠れます。
マルは嫌がっているようでしたが、シュウは離そうとしません。
関わりたくありません。もっと下がろうとしました。
その時、「よう、何をこそこそしてる」 後ろからだれかに突き飛ばされました。
おれは裏庭に飛び出してしまって、シュウと、まともに目が合ってしまいます。マルはその隙にあわてて逃げていきました。
シュウは他の者をちらしたあと、おれの胸ぐらをつかむと、「見たな」

◎ぼくは目を伏せます。「何も‥」
「おまえ、何か言ったらどうなるか、わかるな」
「ぼく、知らないです」
「知らないだと」つかんだ手を振り回します。ボタンが周りに飛び散りました。
「えっ」頭の中が真っ白でなにも言えませんでした。
その間に、壁に押し付けられて、手のひらが飛んできます、前髪をつかんで上を向かせると、喉を殴ります。
「これで生意気も言えねえだろ」
≪『知らない』という言葉は、『逆らわずに、知らないふりをしますよ』という意味なのに≫ 言葉が浮かんできた頃には、もう苦しくて、逃れようとやみくもに手を振り回していました。
手がシュウの頭か肩かに当たりました。
「何やってるの」 他の子が来ます。
「院長先生を呼んで来い、こいつに殴られた」 子どもが走って行くと、その隙にもう一発、ぼくの喉を殴りました。
「どうしました」院長先生が小走りで来ます。
「服の乱れを注意したら、殴りかかってきたんです」シュウがさっきとは違う優等生の声で答えました。

〇おれの服はボタンがなくて、エリがだらしなく垂れさがっています。
院長はおれを部屋に連れていきました。 そしてこっぴどく怒りました。
いつものことなので慣れています。こういうときには、他のことを考えて暇つぶしをするのです。
空想にのめり込みすぎるのか、時々記憶が飛んだようになったりします。まあ、楽しい時間ではないので気にしませんでした。
気をつけなければならないのは、たまに質問されることがある時です。
だけどおれの意見を聞かれることはほとんどありませんでしたし、今日はしゃべろうにも喉が痛くて声が出せませんでした。


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