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ある熟女の日々
【熟女/人妻 官能小説】

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就職活動-3

 その日の夜、珍しく母から電話がかかってきたから、その日の顛末を話した。

 「おお、そうか。『○○』に行ったんか」
 「就職課からつないでもらって、○○ナントカっていう会社に行ってきたよ。担当らしい人に会ったんだけど、あっという間に『また連絡するから』って言い残していなくなってしまって…」
 「すんなりいったってことなんやろ」
 「それならええけど。あ、そうそう、その人にコーヒーごちそうになったわ。お礼の電話でもした方がええんかな」

 一瞬、間があいたような気がする。

 「あれ? お母ちゃん、聞こえてる?」
 「ああ、聞こえてるわ。今日はどなたに会ったんかの?」
 「ええっと…」

 慌てて貰ったはずの名刺を探す。

 「名刺、名刺…あった! 上田さんや。『○○エンタープライズ東京支社』の上田康男さん」
 「ほうほう、上田さん、やな?…ああ、もう大丈夫や。コーヒーもご馳走になっておけばええ。そのままにしとき」
 「えー、なんで?」
 「なんでもや。うまくいってるときは流れに任せるのがええ」
 「うまくいってるのかな?… お母ちゃんが話してた『知り合い』って、まさか上田さんなの?」
 「ん? あっはっは。あたしに○○の知り合いなぁ…。傑作やね」
 「…ああ、そうか。『知り合いの知り合い』って言ってたね。お母ちゃんの『知り合い』が上田さんと『知り合い』で、そこから口添えでもしてくれたってことなの?」
 「なんや、もう、ややこしいわ。あたしがそんなこと言うたかなぁ?」
 「だって、お母ちゃんから話を聞かなかったら、わたし『○○』なんて大それた会社、訪ねもしなかったよ。いったい誰なの? ねえちゃんたちの就職まで面倒見てくれた人って」
 「まあ、なんにせよ首尾よくいったようなら安心や。明日、八幡さまにお礼しとくわ」
 「まだ試験とか面接とかあるんよ。ぬか喜びかもしれんよ」
 「そうかそうか、わかったわかった。上田さんに会ってもつまらんことは言うたらあかんよ。こういうことはお礼なんか言われても迷惑かけるだけなんやからね」
 「そうなの? わ、わかったよ」

 そう言うと母は電話を切ってしまった。せいぜい縫製工場に出ているくらいの母にどういう伝手があるというのか、結局、聞きそびれてしまった。

 その後、周囲も就職活動が盛んになっていき『何社訪ねた』などという話も耳に入ってくるようになった。喫茶店で『掛け持ち』はしないと言った手前、その後は他社を訪ねることもせず、少しじりじりした気持ちでもいたが、そのうち、今度は「○○コーポレーション」から試験と面接の案内が届いた。

 コーヒーをごちそうになったとき以来、久しぶりにスーツを着て指定された場所に行き、まずは筆記試験があった。時事問題が数問と志望動機を改めて書かせるような内容だった。時事問題は、新聞のひとつもとっておけばよかった…と後悔するくらいの出来だった。

 試験が終わり、面接に移る。控室に行くと既に数名の学生が入室している。会社の人も一人部屋にいるが、なんとなく緊張感がない。採用する見込みがないグループなのだろうか…と不安がよぎる。

 時間が来て、ひとり、またひとりと呼ばれていく。5番目に名前を呼ばれて「面接会場」と貼り紙がある部屋に入る。

 「失礼いたします。○○女子大学から参りました○○○○です」

 大学と名前を名乗ると、椅子に座るように促される。面接官は5人。左右に二人ずつと正面に一人。いちばん偉そうな正面の人は、頬杖をついていてあまり雰囲気がよくない。やっぱり、入社できる感じではなさそうだ。お母ちゃんの口利きでここまで来たけれど、最初に会った人も喫茶店でさっさと出ていってしまったし、今にして思えば脈はなかったのだ…。気持ちが落ち込んでいく。

 何か質問をされるはずなのに、誰も口を開かない。ただ、ひたすらこちらを凝視しているようだ。こちらから何かを言わなければいけなかったのだろうか。そのような作法は、就職課からもらっていた面接の心得には書いていなかったけど…。

 背中を冷や汗が流れ始めた頃、ようやく正面の人が口を開いた。

 「△△のご出身なんですね」
 「は、はい。そうです」
 「なかなかいいところだよね。お城もあったりして」

 肯定的な内容で少しだけほっとする。

 「△△から出てきて○○女子大に通っていらっしゃる」
 「はい。いま4回生です」
 「そりゃそうだよね」

 面接官たちがどっと笑う。

 「いやいや、なかなか面白いことを言うね。結構結構。まあ、一応面接ですから、もうちょっと質問させてもらおうか」
 「はい…すみません」
 「とは言え、何を訊こうかなぁ。…あなたが大切にしていることはなんですか?」

 予想だにしていない質問が飛んできた。大切にしていること…。 

 「…そ、それは『一体感』です」
 「ほう、『一体感』ですか。具体的には?」
 「それは、その…いろいろ、た、例えば、一つのプロジェクトをみんなでやり遂げる一体感とか、家族がまとまっている一体感とか…」
 「ふむ。『チームワーク』みたいなことですか?」
 「そ、そうです。チームワークです」
 「あなたのご家族は一体感もあってまとまっているんですね?」
 「は、はい。父も母も非常に仲が良く、二人の姉にもいろいろ教えてもらいながら、かわいがってもらっています」
 「結構ですね。わがグループのモットーは、社会との一体感ですし、当然、社員同志での一体感も重要ですからね。ご両親が仲睦まじいというのは、よい家庭の土台でもあるでしょう。お姉さんが二人とおっしゃいましたが、三人姉妹でいらっしゃるんですか?」
 「はい、そうです」
 「女三人…。お家では、お母さんがお父さんよりも元気がいい?」


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